魔剣少女と契約した低血圧系魔術師、実は  の生まれ変わりでした?魔導学園で学生と講師を両立しながら何とか生きていこうと思います。

精神感応4

文字の大きさ
77 / 268
第二章「捜査開始」

第76話 我、起す君何者ぞ

しおりを挟む
 朝、時刻は八時、昨晩までは空を雲が覆っていたが、それも風に流されていったようで快晴だ。東側の窓からは陽の光が柔らかく差し込んでいる。

 「…………」

 六道家の小さい方の客間の前に黒髪の少女が一人立っていた。この家の主である鏡華だ。

 起きてからあまり時が経っていないのか、寝間着の襦袢姿のままで頭にはトレードマークの曼殊沙華はまだ着けていない。

 「…………」

 鏡華は静かに襖を開ける。

 「すー……す……ー……すー……」

 するとそこには規則正しい寝息を立てる布団にくるまった双魔の姿があった。

 鏡華はそろりと部屋の中に入ると静かに障子を閉じる。

 そして、音も立てずに双魔のそばに近づくと頭の横に正座した。表情が一気に柔らかくなる。

 「フフフ、よお、寝とるねぇ……可愛い」

 つんつん、と寝ている双魔の頬を指で突いてみる。

 「……ん……んー…………」

 くすぐったそうに眉を曲げるが双魔はまだ起きない。

 「起きへんねぇ……双魔、左文はんが朝ごはん、作ってくれたよ?起きて」
 もう一度、双魔の頬を突いてみる。

 「ん……ティルフィング…………いたずらは……よせ……」

 どうやら双魔はティルフィングが悪戯をしていると思っているようだ。意識は浮き上がり始めているが目覚めるとまではいかない状態をフワフワしているらしい。

 「あらぁ……ティルフィングはんやと思ってるん?……うち、すこーし妬いてしまうよ?」

 むーっと鏡華は頬を膨らませた。ティルフィングに嫉妬するとは、見た目も中身も大人っぽくとも誰も見ていない時は子供らしさがまだまだ抜けきらない鏡華である。

 それでも、少し背伸びをして大人の色香も使いこなそうとする気持ちが鏡華の中に湧いてきた。

 「旦那はん……起きひんと…………ほんまに、悪戯……してまうよ?」

 鏡華は髪を耳に掛ける。片手を優しく双魔の頬に当てる。数秒間、双魔の顔をじっと見つめた後、目を閉じてゆっくりと顔を寄せてゆく。

 (…………ん……ん……ん?)

 朝の微睡から段々と意識が浮き上がってきた双魔はすぐそばに何者かの気配があることに気付いた。
 (……ティルフィングか?)

 すっかり、ティルフィングに起こされることに慣れた双魔であったがティルフィングは大体飛びついてくる。こんなに静かにそばにいることはまずない。

 (…………誰だ?)

 そう思っても瞼がなかなか開いてくれない。そうしているうちに、頬を優しく、絹のように肌触りの良い何かで触れられる。
 
鼻腔を何処かで嗅いだ覚えのある甘い香りを感じたかと思うとそれがゆっくりと近づいてくる。

 そこで、双魔の瞼はパッチリと開かれた。

 「……………………」

 目の前には目を閉じた鏡華の顔があった。既にかなり近いのに尚も近づいてくる。

 「……おはよう」

 耐え切れなくなった双魔は声を上げてしまった。

 「え?」
 「…………おはよう」

 閉じていた目を開いてポカンと呆ける鏡華にもう一度朝の挨拶をする双魔。

 「あ、あ、あ、あ……」

 普段は余裕たっぷりで澄ましている鏡華が口をパクパクとさせながら奇妙な声を出している。その顔は徐々に紅に染まり、やがて首元まで真っ赤になってしまった。

 「…………お、おはよう」

 何とか絞り出した言葉は微妙に震えていた。耐えられなくなってフイっと視線を外した双魔の頬も赤く染まっている。

 「……っ!」

 我に返った鏡華は素早く双魔から顔を遠ざけた。その速さと言ったら剣兎も拍手をするに違いないものだった。

 「ち、ち、ちちちちち違うんよ!?今のは違うの!」
 「…………ん……そうか、分かった」

 盛大にテンパっている鏡華を見て双魔は逆に冷静さを取り戻した。と言っても顔は熱いままだ。

 「……起こしに来てくれたんだよな?ありがとさん」
 「そ、そそそう!うち、双魔を起こしに来たんよ!左文はんがご飯出来たから起こしてきていうから」
 「ん、そうか…………じゃあ、起きるよ」
 「…………うん」

 何とも言えない甘酸っぱいような、否、ただただ甘い空気の中、双魔はもぞもぞと鈍い動きで布団から出て起き上がった。

 「…………行くか」
 「………………うん」

 二人は気まずい雰囲気が消え切らないまま左文とティルフィング、浄玻璃鏡の待つ居間へと向かうのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

霊力ゼロの陰陽師見習い

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

最弱弓術士、全距離支配で最強へ

Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」 剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。 若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。 リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。 風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。 弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。 そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。 「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」 孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。 しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。 最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!

処理中です...