魔剣少女と契約した低血圧系魔術師、実は  の生まれ変わりでした?魔導学園で学生と講師を両立しながら何とか生きていこうと思います。

精神感応4

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第四章「物狂の刀鍛冶」

第92話 幕間の一休憩

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 「すいません、遅くなりました」

 三十分もしないうちに檀がやって来た。後ろには紗枝が控えている。

 「ああ、幸徳井殿。首尾はどうだい?」
 「はい、鵺は一門の式神を動員して一旦、晴久様のお屋敷の庭で預かってもらうことになりました。犠牲者たちの遺体は陰陽寮の慰安室に」
 「鈴鹿先輩は?……大丈夫なん?」
 「ええ、多少の出血と骨を数本やられてしまっているそうですが、信田家一門当主の治療で数日のうちには回復するだろうとのことです」
 「そう、それなら安心やね」

 双魔の髪を撫でながら鏡華は安堵の息をついた。

 「双魔さんは…………乗り物酔いとのことですが大丈夫ですか?」

 鏡華の顔に向いていた視線を下げて檀が何とも言えない表情で心配の言葉を掛けてくる。

 部屋に入ってすぐ目の前で女性に膝枕をされている男がいたらそうもなるというものだ。

 「くくくくっ…………」

 剣兎は檀の困惑する様をみてまたもや笑いを堪えている。

 「…………大丈夫だ。だいぶ楽になった。檀さんも戻ってきたし、そろそろ話をしよう」

 頭に載せられたままの鏡華の手を優しく握ってどけると、双魔はゆっくりと起き上り、体勢を変えてソファに座りなおす。

 「…………」

 ふと、そわそわと落ち着かなそうにソファの周りをうろうろしているティルフィングと目が合う。

 「……ティルフィング」

 手招きをして膝をぽんぽんと叩いて見せるとティルフィングは満面の笑みを浮かべて寄ってくきて、ふわりと双魔の膝の上に腰掛けた。

 「むふー!」

 何とも満足げだ。

 ティルフィングが座るのを見て檀も双魔の前の位置に腰を掛ける。

 紗枝は剣兎の車椅子を話しやすい位置に動かすと「お茶の用意をしてきますね」と言って部屋を出ていった。

 「何というか……あの人、最初に会った時と雰囲気が違うな」

 つい、思ったことが口に出た。自分を捕縛した時の紗枝はもっと刺々しい雰囲気を纏っていたのに、誤解が解けてからというもの、穏やかな女性に様変わりしている。

 「ああ、紗枝さんは真面目ですからね。警邏中は気を張ってるんですよ」
 「……そういうことか」

 確かに言われればそんな感じがする。ふと、紫黒の髪をサイドテールにした生真面目な生徒の顔が浮かんだ。

 (ああ、ガビロールと同じ感じか……っと今はそんなこと考えてる場合じゃないな)

 横に逸れた思考を元に戻して、こめかみをグリグリと刺激して集中力を高めて、切り替えを図る。

 「ん、じゃあ、まずは状況の整理からはじめよう」

 双魔の言葉に剣兎も頷いた。

 「そうだね、話は聞いてるけど僕は直接この目で見たわけじゃない。そうしてもらえると助かるかな」
 「分かりました。それでは状況の整理から。まず、地図に示してある黒い印が表す怪異」

 檀は昼間から広げたままにしてあった地図を指差した。

 「こちらの正体はどのような方法で復活したのかは今のところ判明してはいませんが正体は鵺でした。こちらの討伐は双魔さんが宣言通り果たしてくれました。改めてお礼を言わせてください……ありがとうございました」

 檀は再び双魔に向けて深々と下げる。

 「だから、気にしないでくれって……」
 「いえ、何度お礼を言っても足りないほどですので……」

 その様子を見て剣兎が細い目をさらに細めて笑みを浮かべた。

 「ハハハ、幸徳井家は十二分家の中でも特に義理堅い性分だからね。双魔こそあんまり気にする必要はないと思うよ?」
 「そうは言ってもだな……」
 「それより、鵺と闘ってみた感じどうだった?その力は?」

 直接訊ねるわけではないが剣兎の質問の意図はよく分かる。双魔はそれを踏まえた上で返答する。

 「ん、身体はほぼ本物だろ……偽物だったとしてもかなり精巧だった……ただ、力は半分より少し上くらいじゃないか?俺は後出しの弱点を攻めたから割と楽に済んだけど……あの程度の結界を破らないようじゃ伝承よりは…………だいぶ弱いだろ」
 「そっか……ということは完全な復活ではなかったということだね」
 「ああ、これは後から出てきた行方不明だった者たちにも共通すると思う」
 「せやね……あの人たち魄だけで動いとったから」

 犠牲者たちの哀れな姿を思い浮かべたのか、その場にいる全員の表情が暗くなる。

 コンッ、コンッ、コンッ!

 その時、タイミングよく部屋のドアが小気味よくノックされる。

 開いたドアから人数分の湯呑と茶筒、急須を載せたお盆を持った紗枝が姿を現す。その後ろには魔法瓶と丸い大きめの菓子受けと何かの紙束を持った男性職員が控えている。

 「お茶の準備ができました!あ、それはテーブルの上に置いてください。手伝ってくれてありがとうございます!」

 男性職員は紗枝に言われた通りにし、檀に紙束を手渡すと一礼して去っていった。

 紗枝が手早くお茶を入れてそれぞれの前に置く。が、鏡華の後ろで目を瞑ったまま立っている浄玻璃鏡の分が余ってしまう。

 「六道さん……どうしますか?」
 「ああ、玻璃の分はここに置いといてくれればいいよ。おおきに」
 「そうですか、分かりました」

 お茶を配り終えた紗枝は剣兎の後ろへと戻った。

 「ああ、花房殿。僕はいいから座ってくれて構わないよ」
 「いえ、そういうわけにはいきません!ご当主をこのままにして座るなど滅相もありません!」
 「じゃあ、風歌一門の当主としての命令だ。いいから座りなさい」
 「は、はい!それでは……その座らせていただきます」

 紗枝は慌てて返事をすると渋々といった感じで檀の隣に座った。

 お茶と紗枝たちの会話のお陰で部屋に漂っていた悲観的な空気が何処かへと消え去っていった。

 陰鬱な雰囲気の中では思考は曇り、良案などは浮かばない。紗枝はこの場に置いて非常にいい働きをしたと言えるだろう。

 「ソーマ、ソーマ。あれは食べても良いのか?」

 一方、ティルフィングは菓子受けの中身に興味津々のようだ。

 「ん、いいぞ」
 「本当か?それではいただくぞ!」

 紙に包まれた菓子を手に取って、包み紙をはがすと美味しそうに食べ始める。

 ティルフィングの様子を見て他の面々も湯呑を手にする。

 張りつめていた部屋の中にしばし、穏やかな空気が流れるのだった。

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