魔剣少女と契約した低血圧系魔術師、実は  の生まれ変わりでした?魔導学園で学生と講師を両立しながら何とか生きていこうと思います。

精神感応4

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第一章「各々の悩み」

第131話 悩みの種、襲来 

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 ブリタニア王立魔導学園では冬季休暇が明けたその日に魔術科の選挙が行われた。

 年末に行った遺物科の先例と休暇中の生徒たちの中で、抽選により候補者に選ばれた者たちに事前に通達をしておいたこともあり、選挙はスムーズに進行され、翌日には新たな評議会が発足した。

 学園内でも屈指の実力を持つ、若き魔術師たちが評議会役員に選出されたわけだが、その中でも群を抜いた実力を見せつけた者が二人いた。

 一人は新しく議長に就任した序列一位の三年の生徒なのだが、戦いがはじまり、瞬きをする間の一瞬ですべてのライバルを倒したことにより話題になったのだが、少しの不気味さと呆気なさから、そちらはすぐに収まった。

 一方、しばらくが経っても未だに話題の中心にいるのがもう一人の生徒だ。

 前期の魔術科評議会において、会計の役職を務め、学科内序列五位であったイサベル=イブン=ガビロールだ。

 イサベルは今回の選挙で魔術科の副議長の座に着くことになり、序列も順当に二位まで上昇させた。

 選挙におけるイサベルの魔術はまさに壮観と称賛するべき素晴らしいもので、総勢二十にも及ぶゴーレムたちを即座に生み出し、同ブロックの五十余名のライバルたちをものの数分で圧倒して見せたのだ。

 元々の人気と魔術の腕、ゴーレムを指揮する凛々しい姿から闘技場は沸きに沸いた。

 翌日、評議会の副議長になったことが知らされると、性別、学年問わず多くのものが更に沸き立った。

 今回の事の発端はこの日の夜に起きたとするのが最も明快だろう。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 魔術科の役員が公表された日の夜。学園の近くの比較的新しい寮の一室で、スマートフォンによる単調な着信音が鳴り響いた。

 「…………あら、ベルのスマホに電話が掛かってくるなんて珍しいわね」

 部屋の主の片割れ、ウェーブの掛かった長い黒髪とグラマラスな体つきの大人っぽい雰囲気の少女、幸徳井かでい梓織しおりが読んでいた本から顔を上げた。

 スマホの持ち主であるルームメイトのイサベルは今、入浴中のはずだ。

 「ベルー!スマホ、鳴ってるわよー!」

 浴室に向けて呼び掛ける。すると、すぐにバタバタとした慌ただしい音が鳴り、数瞬で着信音を歌い続けるスマートフォンの主が脱衣所から飛び出してきた。

 「はい!今出るわ!」

 流石に身体を拭いて着替える時間はなかったのか、イサベルはしなやかな身体にバスタオルを巻いた状態だ。髪はしっとりと濡れ、肌には水滴が着いたままだ。

 置いてあったスマートフォンを手に取ると画面も見ずに通話ボタンを押す。

 「はい、もしもし!……お父様?何かあったの?……ええ、私は大丈夫、お風呂に入っていたから…………ええ」

 どうやら電話の相手はイサベルの父、現ガビロール家当主らしい。

 「…………」

 イサベルに声を掛けた後、再び本に目を落としていた梓織だったが、何となく興味が湧いて顔を上げた。

 「え?この間伝え忘れたこと?何かしら?」

 会話から察するに年末から年始にかけての帰省の時に何かをイサベルに伝え忘れたので、今、電話を掛けてきたと言ったところだろうか。

 「うん…………え!?私そんなこと聞いてないわ!?…………忘れてたって……どういうこと!?」
 「…………?」

 イサベルが突然声を荒げた。風呂にから出てすぐなせいか火照っている顔が興奮でさらに赤くなる。

 「私、そんなの嫌よ!……え……その、それはお父様には関係ないでしょ!…………それならいいじゃないかって……………………わかった…………それで、いつなの?…………来週末!?どうして前もって教えてくれなかったの!?」

 イサベルの顔は赤くなったり、青くなったりで大変なことになっている。

 「…………わかったわ……うん、お父様も来るのね…………わかった…………うん…………じゃあ、週末に…………」

 イサベルはスマートフォンを耳から離すと、両手をだらりと垂らして天井を仰ぐ。

 ころころと変わっていた顔色は結局、青で会話が終わったようだ。

 「…………」

 数瞬、そのままマネキンのように立ち尽くしていたが、やがて、ギギギと錆びついた機械のような動きで首を梓織の方に回した。

 「……………………」

 絶望の淵に立ったような瞳が梓織を捉える。ツーっと両目から頬に涙が伝う。

 「な、何?どうしたの?」

 余りの変わりように梓織は少し引いてしまった。こんな状態のイサベルはなど、そこそこ付き合いの長い筈だが見たことはなかった。

 「梓織……タスケテ…………助けて!」

 そう言うや否や、イサベルは梓織に駆け寄って膝に泣きついた。

 「あらら…………」

 膝に置いていた本は泣きつかれる前に持ち上げていたので無事だったが寝間着は少し湿ってしまった。

 「うっ…………うっう…………」
 「もう…………ほら、泣かないの!」

 涙を流すイサベルの背中を優しく撫でて宥める。数分そうしていたが、やがて、ゆっくりとイサベルが顔を上げた。

 泣いたせいか綺麗な瞳は真っ赤に腫れてしまっている。

 「梓織……私…………どうしたら…………」
 「話は聞いてあげるからまずは着替えなさい……………風邪ひくわよ?」

 イサベルは数度瞬きをすると自分の身体を見た。伝えられた内容への衝撃でバスタオル一枚で髪が濡れていたことも忘れていたようだ。

 「……………ええ、ごめんなさい。着替えてくるわ」

 イサベルは目をこすって涙を拭うとスッと立ち上がり脱衣所に向かった。

 梓織はその背中を見送る。

 「……ベルがあんな風になるなんて、一体何があったのかしら?気になるわね…………」

 着替えているうちにイサベルも少しは落ち着くだろうが、話を始めたらどうなるか分からない。

 梓織は立ち上がって部屋のミニキッチンへと向かいハーブティーを二人分淹れる準備をするのだった。
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