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第六章「大樹の騒めき」
第187話 三人娘の午後
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日曜日の昼下がり、休日とあってロンドンの街は多くの人が行き交っている。
老若男女がショッピングや恋人との逢引き、散歩などを楽しむ中に、魔術科の三人組の姿があった。
「んー……今ごろお嬢はどうしてるっスかね?……ズズズッ」
通り沿いのカフェの窓際の席で暢気な声を出してストローを吸うアメリア。真冬にもかかわらず「店の中は暑いっスから!」と言って手にしている長いグラスに入っているのはアイスココアとバニラアイスだ。
「どうかしらね?多分大丈夫だと思うけど……」
「むぐむぐ……ごくんっ、ふう……梓織殿、言ってることと顔が一致していませんぞー」
アメリアの前には温かいコーヒーが入ったカップ両手で包むように持ち、心配げで落ち着かない様子の梓織とホクホク顔でバターとメープルシロップをたっぷりかけたパンケーキを頬張る愛元が座っている。
「し、仕方ないじゃない!……昨日は突然、お父様と食事をするからホテルに泊まることになったって言って帰ってこないし…………」
「まあまあ、お嬢が何かやっちゃっても伏見くんがどうにかしてくれるっスよ」
親友が心配でカップを弄びながら、少し興奮気味の梓織をアメリアが明るい声で宥める。
「アメリア殿の言う通り―……ですがー、その伏見殿も何やら大変だったみたいですなー」
「ああ、私も聞いたわ……フランスから来たって言う新しい講師が授業に乗り込んで来て、一触即発になりかけたんですって?」
「あ、アタシもその話聞いたっス!それにしてもあの伏見くんが怒るなんて何があったんスかね?」
「さあー?詳しい話は中々流れてきませんからなー」
三人の知る双魔はのらりくらりとしていて温厚な人柄なので怒っているところなど想像も出来なかった。
「名前だけは聞いたけど……オーギュスト=ル=シャトリエと言うらしいわ」
「ル=シャトリエと言えばフランスの名門じゃないっスか!」
「偏見は良くないですけど名門の方々は……モグモグ……ごくんっ……すこーし空気が読めないところがありますからなー……っとあれは……」
「どうしたっスか?」
「何?誰かいたの?」
愛元がパンケーキを切る手を止めて窓の外を見たのですが二人も愛元の視線の先を辿った。
そこには如何にも只者ではない雰囲気の男性が二人、並んで歩いていた。
一人は金髪を伸ばし、筋骨隆々と言った体格に筋肉で押し上げられてパツパツになったネイビーブルーのスーツを纏った年の頃は三十代くらいの長身の美丈夫。
もう片方も輝かんばかりの金髪で、古風な外套を纏った線が細いながらもその身に宿した強烈な力を封じ込めているような美少女だった。
「……あれ、円卓のガウェイン卿よね?」
「ということは……隣にいるのは”ガラティーン”さんっスか?」
「かなりの大物ですなー…………」
詳しい説明は省くがこのブリタニアには二つの王家が存在する。
一つはこの国の象徴であり、政治権力を担うブリタニア王家。
そして、もう一つはキャメロットに白亜の城を構え、赤き竜の化身、伝説の王、聖剣エクスカリバーの初代契約者であったアーサー=ペンドラゴンの系譜を継ぎ、この国、ひいては世界の守護を担うペンドラゴン王家だ。
三人の視線の先、通りの向こうを歩いているのはキャメロットの円卓の一席に列せられた遺物使い、当代のガウェインとその契約遺物である聖剣ガラティーンだった。
円卓には現ペンドラゴン王家当主であり世界一の遺物使い、ジョージ=ペンドラゴンの他に十三名のメンバーがおり、基本的に彼らの部下たちがロンドンに居を構えるブリタニア王家とのやり取りを行っているので本人がこの街に来るのは非常に珍しいことだ。
それに、契約遺物であるガラティーンも連れている。さらにその上で一般人に交じって天下の往来を歩いているのだ。
「……何かあるのかしら?」
「…………うーん、どうでしょうなー?」
梓織と愛元が警戒するのも当たり前だ。聞くところによるとガウェインのその性格は豪放磊落であのように人の流れに潜むように歩いているのはどう考えてもおかしい。
「まあ、そんなに深く考えることはないっスよ!ただ買い物しに来てるだけかもしれないじゃないっスか!そんなことよりお嬢は大丈夫っスかね?やっぱり心配になってきたっス…………」
アメリアがへにゃっと眉を八の字にして二人を見る。
「「…………」」
二人は一瞬顔を見合わせたがすぐに笑みがこぼれる。確かにガウェインがいたのは気になることだが、そう難しい事ばかり考えていてはせっかくの休日なのに疲れてしまう。
意識してか、無意識か。どちらかは分からないがアメリアはそう感じたのだろう。
少し考えればそれは正しいことだ。今はアメリアの言う通りイサベルの心配をしているくらいがちょうどいいだろう。
「そうね……そもそも、あの子は奥手すぎるのよ!こう言うのもなんだけど伏見くんって押しに弱そうじゃない?もっとガンガン押せばいいのよ!」
梓織がはっちゃけて少し大きな声を出す。
「おおー。流石、梓織殿、伏見殿にはすでにお相手がいるというのに強気ですな―」
それに愛元がパンケーキにナイフを入れながら茶々を入れる。
「でも、六道さんは伏見くんに相手が何人いてもいいって言うスタンスらしいっスよ?お嬢がぽろっと言ってたっス」
「何それ!?予想はしてたけど……私、聞いてないんだけど!!」
「それはそれはー、やはり剛毅なお人でしたかー」
話題から円卓の騎士の名は流れ去り、三人娘の姦しい午後はもう暫く続きそうだった。
老若男女がショッピングや恋人との逢引き、散歩などを楽しむ中に、魔術科の三人組の姿があった。
「んー……今ごろお嬢はどうしてるっスかね?……ズズズッ」
通り沿いのカフェの窓際の席で暢気な声を出してストローを吸うアメリア。真冬にもかかわらず「店の中は暑いっスから!」と言って手にしている長いグラスに入っているのはアイスココアとバニラアイスだ。
「どうかしらね?多分大丈夫だと思うけど……」
「むぐむぐ……ごくんっ、ふう……梓織殿、言ってることと顔が一致していませんぞー」
アメリアの前には温かいコーヒーが入ったカップ両手で包むように持ち、心配げで落ち着かない様子の梓織とホクホク顔でバターとメープルシロップをたっぷりかけたパンケーキを頬張る愛元が座っている。
「し、仕方ないじゃない!……昨日は突然、お父様と食事をするからホテルに泊まることになったって言って帰ってこないし…………」
「まあまあ、お嬢が何かやっちゃっても伏見くんがどうにかしてくれるっスよ」
親友が心配でカップを弄びながら、少し興奮気味の梓織をアメリアが明るい声で宥める。
「アメリア殿の言う通り―……ですがー、その伏見殿も何やら大変だったみたいですなー」
「ああ、私も聞いたわ……フランスから来たって言う新しい講師が授業に乗り込んで来て、一触即発になりかけたんですって?」
「あ、アタシもその話聞いたっス!それにしてもあの伏見くんが怒るなんて何があったんスかね?」
「さあー?詳しい話は中々流れてきませんからなー」
三人の知る双魔はのらりくらりとしていて温厚な人柄なので怒っているところなど想像も出来なかった。
「名前だけは聞いたけど……オーギュスト=ル=シャトリエと言うらしいわ」
「ル=シャトリエと言えばフランスの名門じゃないっスか!」
「偏見は良くないですけど名門の方々は……モグモグ……ごくんっ……すこーし空気が読めないところがありますからなー……っとあれは……」
「どうしたっスか?」
「何?誰かいたの?」
愛元がパンケーキを切る手を止めて窓の外を見たのですが二人も愛元の視線の先を辿った。
そこには如何にも只者ではない雰囲気の男性が二人、並んで歩いていた。
一人は金髪を伸ばし、筋骨隆々と言った体格に筋肉で押し上げられてパツパツになったネイビーブルーのスーツを纏った年の頃は三十代くらいの長身の美丈夫。
もう片方も輝かんばかりの金髪で、古風な外套を纏った線が細いながらもその身に宿した強烈な力を封じ込めているような美少女だった。
「……あれ、円卓のガウェイン卿よね?」
「ということは……隣にいるのは”ガラティーン”さんっスか?」
「かなりの大物ですなー…………」
詳しい説明は省くがこのブリタニアには二つの王家が存在する。
一つはこの国の象徴であり、政治権力を担うブリタニア王家。
そして、もう一つはキャメロットに白亜の城を構え、赤き竜の化身、伝説の王、聖剣エクスカリバーの初代契約者であったアーサー=ペンドラゴンの系譜を継ぎ、この国、ひいては世界の守護を担うペンドラゴン王家だ。
三人の視線の先、通りの向こうを歩いているのはキャメロットの円卓の一席に列せられた遺物使い、当代のガウェインとその契約遺物である聖剣ガラティーンだった。
円卓には現ペンドラゴン王家当主であり世界一の遺物使い、ジョージ=ペンドラゴンの他に十三名のメンバーがおり、基本的に彼らの部下たちがロンドンに居を構えるブリタニア王家とのやり取りを行っているので本人がこの街に来るのは非常に珍しいことだ。
それに、契約遺物であるガラティーンも連れている。さらにその上で一般人に交じって天下の往来を歩いているのだ。
「……何かあるのかしら?」
「…………うーん、どうでしょうなー?」
梓織と愛元が警戒するのも当たり前だ。聞くところによるとガウェインのその性格は豪放磊落であのように人の流れに潜むように歩いているのはどう考えてもおかしい。
「まあ、そんなに深く考えることはないっスよ!ただ買い物しに来てるだけかもしれないじゃないっスか!そんなことよりお嬢は大丈夫っスかね?やっぱり心配になってきたっス…………」
アメリアがへにゃっと眉を八の字にして二人を見る。
「「…………」」
二人は一瞬顔を見合わせたがすぐに笑みがこぼれる。確かにガウェインがいたのは気になることだが、そう難しい事ばかり考えていてはせっかくの休日なのに疲れてしまう。
意識してか、無意識か。どちらかは分からないがアメリアはそう感じたのだろう。
少し考えればそれは正しいことだ。今はアメリアの言う通りイサベルの心配をしているくらいがちょうどいいだろう。
「そうね……そもそも、あの子は奥手すぎるのよ!こう言うのもなんだけど伏見くんって押しに弱そうじゃない?もっとガンガン押せばいいのよ!」
梓織がはっちゃけて少し大きな声を出す。
「おおー。流石、梓織殿、伏見殿にはすでにお相手がいるというのに強気ですな―」
それに愛元がパンケーキにナイフを入れながら茶々を入れる。
「でも、六道さんは伏見くんに相手が何人いてもいいって言うスタンスらしいっスよ?お嬢がぽろっと言ってたっス」
「何それ!?予想はしてたけど……私、聞いてないんだけど!!」
「それはそれはー、やはり剛毅なお人でしたかー」
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