魔剣少女と契約した低血圧系魔術師、実は  の生まれ変わりでした?魔導学園で学生と講師を両立しながら何とか生きていこうと思います。

精神感応4

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第六章「大樹の騒めき」

第191話 巨樹の声

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 頭上に広がった枝葉のおかげで雨は地面には届いていなかったが少しぬかるんでいた。

 「…………とりあえず、触ってみるしかないな」

 根の傍にやってくるとひたひたと両手で触る。ひんやりと冷たく、感触は硬くごつごつとしていた。

 続いて両の眼を閉じて根に抱き着き、じんわりと染み込ませるように魔力を流し込み巨樹との同調を図る。

 (うまくいけばこのまま原因に辿り着けるかもしれないしな…………)

 「っ!!?」

 そう思った矢先だった。突然、頭にズキリと強い痛みを感じた。

 (何だっ!?……これは!?)
 (…………パ……い……パ…………わい……)

 そして、痛みが一瞬で治まったかと思うと、どこからか声が聞こえてきた。否、何者かが頭の中に直接語りかけてきたようだ。

 途切れ途切れの声は段々と鮮明になっていき、やがて完全なる言葉として双魔に届いた。

 (パパ……こわい……パパ…………)

 その声が誰の声なのか、迷った双魔だったが思い当たるのは唯一つだった。

 (…………お前……もしかして……なのか?)

 巨大かつ荘厳な体躯に見合わない、か細く、幼い女の子の如き声だ。

 (パパ……パパ……)

 頭に響く声は一心にそう呼び掛けるだけで双魔の呼びかけには応えない。

 (魔力が足りないか…………)

 こちらの存在に気づかれていない。そう考えた双魔は流し込んでいた魔力を強めた。

 すると、すぐに反応が返ってきた。

 (…………パパ?パパなの?)

 明らかにこちらを認識した上での呼び掛けが返ってきた。が、困惑の域から抜けきらない双魔は先ほどから気になっていたことを訊ねてみた。

 (……”パパ”ってのは俺のことか?)
 (パパ!!)

 双魔の問いへの返答はなかったが安堵と喜びが混じった感情が頭に激しく流れ込んでくる。

 巨樹の声と思われるこの声の指す”パパ”とは双魔のことで間違いないのだろう。

 声の様子からして精神的にも幼子と変わりないようだ。

 (ああ……もう怖くない。俺がいるからな)

 心持ち、優しく根を抱きしめるようにして。優しく語りかける。

 (うん……うん…………パパ……)

 それに応えるように半泣きの声が返ってくる。

 (大丈夫だ……どうした?何が怖いんだ?)
 (……あのね……ちかくに”火”がいるの……こわいこわい”火”が……)

 何やら巨樹は”火”と言う存在に怯えているらしい。双魔にはそれが何なのか分からないが、ともかく安心させることが大切だろう。

 (大丈夫……大丈夫だ……俺がその”火”をやっつけてやるからな…………)
 (…………ほんとう?)
 (ああ……本当だ)
 (……だったら……あんしんだね…………)
 (そうだな……)
 (……ねむく……なってきちゃっ……た…………)
 (そうか……それなら、ゆっくり寝るといい……おやすみ)

 声が段々とはじめと同じように途切れ途切れになっていく。自分で言った通り、また眠りにつこうとしているらしい。

 (う……ん…………じゃあ…………ま……た…………)

 そのまま、声は聞こえなくなった。それでも、すぐには離れずに抱きしめ続けていた。

 双魔はしばらくすると閉じていた目を開いた。そのまま、上を見上げると発光していた枝は元通りになり、枝葉のざわめきも収まっていた。

 「……こんなもんか」

 双魔は根から身体を離すと数度優しく撫でてから背を向け、ヴォジャノーイの元に向かった。

 「終わったよ、これで元に戻ったはずだ」
 「そ、そうか……まあ、こっちからも確認してたけど何をしたんだ?坊主?」
 「……そうだな……実は…………」

 不思議そうに大きな口をポカンと開けていたボジャノーイに双魔は今さっき起きたことをありのままに伝えた。

 「ゲロロロロロ!おい、そりゃあ、本当か!?」

 話を聞き終えたボジャノーイは盛大に笑い声を上げた。

 「ああ、俺も初めて聞いたが……この樹には”精霊”が宿ってたらしい」
 「ゲロロ…………こんなに若くてしけた面で”パパ”か!ゲロゲロゲロロロ!まあ、こんだけデカけりゃおかしくない話だ……それにしてもパパか!ゲロロロ!いいじゃねえか!まあ、いいや!とりあえずさっきのところを見に行こうや」

 そう言っヴォボジャノーイは背を向けて屈んだ。

「……ん、そうだな」

 ”パパ”と呼ばれたことを笑われて渋い顔をした双魔が背中に乗るとヴォジャノーイは再び大きく跳躍するのだった。

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