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第一章「叡智集会」
第224話 叡智たちの近況報告3
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呂尚はかぶった黒頭巾を外して頭の天辺辺りをポリポリと掻き、頭巾を被り直すと話をはじめた。
『まあ、仙界のことについては知らん。下手に首を突っ込んで、また、お師様に面倒なことを命じられるのも嫌じゃからな……何も言ってこんし問題はないんじゃろうて』
「それは重畳ですね。お国の方はいかがですか?」
晴久の問いに呂尚は何度か首を傾げ、それから口を開いた。
『うむ、そちらも相変わらずじゃ。魏、蜀、呉の三国に分かれて上手―くやっておる。司隷の玉璽が中々皇帝を決めんでのう……まあ、決められても騒乱が起きそう故、それはそれで面倒じゃが……』
大中華帝国は直轄の国土と数多くの属国で成り立ちアジア大陸のほぼ半分という広大な領土を誇っている。
しかし、これは神々の帰還による各国の再編の後にそうなったのであって、世界大戦勃発の危機に瀕していた際の中華は中華の王朝史上最弱の状態であった。
急激に増えた国土と領民を収めきれるはずがない。そこで、古に習い皇帝の下に魏、蜀、呉の三国を設置し、皇帝と三国の王を中心に国家を運営することとなったのだ。
されど、今現在、中華に皇帝は存在しない。呂尚の言う通り、皇帝を決めるべき”玉璽”がこれといった人物を決めないからである。
”玉璽”とは彼の始皇帝が作った皇帝であることを示す”璽”つまり判子である。
長き時を経て”玉璽”は遺物へと昇華し、天帝の意思を以って皇帝を選ぶ存在となったのだが、中々決めかねているらしいのだ。
ちなみに”司隷”とは皇帝が直接治める都、長安一帯を指すものだ。現在、主のいない司隷は玉璽が住んでいる他、三国の会談の場となっている。
『そう言えば何か所からか伝言を預かってきておる。まず、ヴォーダンにじゃが、春に蜀から一人留学生を送る故よろしく頼むと言っておったの』
「蜀からか……うむ、承ろう。ちなみに誰じゃ?」
『関羽の末じゃったかのう……そっちにいる趙雲の末と入れ替わりらしい』
「そうかそうか……分かったしっかりと準備をしておこう」
『よしなにな。次に晴久によ、魏と呉の道士を何人か送りたい故、各所との折衝を頼みたいとのことじゃ』
「承りました。剣兎に話を通しておきます」
『うむ。それと最後にヴィヴィ』
「私にも?」
『ひょっひょ!これは儂の個人的な用件じゃて。宮廷魔術団長就任の祝いを送ってやる故、楽しみにしておくといい』
「本当!?楽しみにしてるわ!」
『じゃあ、僕からも……』
「アンタからのなんていらないわよ!送ってきたらどうなっても知らないわよ?」
『……………………』
すげなく断られた上で脅されたマーリンは笑みを浮かべたまま何とも言えない哀愁を漂わせたが、九割九分九厘、自分自身の行動が原因なので誰一人憐れむことはなかった。
「フォッフォッフォ!最後になったがそろそろ儂が話す番じゃのう」
『ああいや、待て待て、お主には聞きたいことがある』
「ふむ、何じゃ?」
話をはじめようとしたヴォーダンを止めて呂尚が聞きたいことがあると言うのでヴォーダンはそちらを優先させることにした。
『いや、何、お主のところに面白いのが集まっていると思ってのう……今年の評議会は”神器”持ちばかり集まっているようじゃが、何か企んでいるのか?』
「…………儂が意図したわけではない、偶然じゃ」
『…………そうか、お主がそう言うのならそうなのじゃろうて』
ヴォーダンと呂尚は一瞬、お互いの腹を探り合うような空気になったが信用ゆえかその空気はすぐに散った。
『”神器”持ちと言えばさー』
そこで今日何度目か分からない不貞腐れ状態からの復活果たしたマーリンが首を突っ込んできた。
『僕もヴォーダンに言っておきたいことと聞きたいことがあるんだよねー!どっちから聞きたい?』
「……チッ、いちいち癇に障る物言いをするわね」
「まあ、まあ、夢魔殿は言うことは正しいですから」
自分に向けての発言ではないにもかかわらず機嫌を悪くするヴィヴィアンヌを晴久がやんわりと宥める。
「それでは言っておきたいこととやらから聞こう」
『りょうかーい!遺物科にゲイボルクと契約したクーフーリンの末裔の娘がいるよね?名前はロザリン=デヒティネ=キュクレインって言ったけ?あの娘、悪い運勢が出てるから直近一ヶ月は気をつけておいた方がいいよ』
了承の返事は普段のお気楽な感じだったが、その後は極めて理知的な史に名を刻む大魔術師としての発言だった。
マーリンは残念な性格故、扱いはひどいが腕は本物だ。
魔術に加え、王を導いた予言者としての側面もある。その言葉は未来を示すと言っても過言でもない。
「………………ふむ、分かった気に留めておこう」
何か思い当たることがあったのかヴォーダンは眼帯で覆われていない方の瞳を閉じ、数度髭を撫でてから頷いた。
「して、聞きたいこととは何じゃ?」
『うーん……そのことなんだけどねー、ヴォーダン、僕らに隠してること、あるんじゃない?いや、あるね!しかも面白そうなこと!』
新しい玩具を与えられた子供のような表情でマーリンは断言した。
『まあ、仙界のことについては知らん。下手に首を突っ込んで、また、お師様に面倒なことを命じられるのも嫌じゃからな……何も言ってこんし問題はないんじゃろうて』
「それは重畳ですね。お国の方はいかがですか?」
晴久の問いに呂尚は何度か首を傾げ、それから口を開いた。
『うむ、そちらも相変わらずじゃ。魏、蜀、呉の三国に分かれて上手―くやっておる。司隷の玉璽が中々皇帝を決めんでのう……まあ、決められても騒乱が起きそう故、それはそれで面倒じゃが……』
大中華帝国は直轄の国土と数多くの属国で成り立ちアジア大陸のほぼ半分という広大な領土を誇っている。
しかし、これは神々の帰還による各国の再編の後にそうなったのであって、世界大戦勃発の危機に瀕していた際の中華は中華の王朝史上最弱の状態であった。
急激に増えた国土と領民を収めきれるはずがない。そこで、古に習い皇帝の下に魏、蜀、呉の三国を設置し、皇帝と三国の王を中心に国家を運営することとなったのだ。
されど、今現在、中華に皇帝は存在しない。呂尚の言う通り、皇帝を決めるべき”玉璽”がこれといった人物を決めないからである。
”玉璽”とは彼の始皇帝が作った皇帝であることを示す”璽”つまり判子である。
長き時を経て”玉璽”は遺物へと昇華し、天帝の意思を以って皇帝を選ぶ存在となったのだが、中々決めかねているらしいのだ。
ちなみに”司隷”とは皇帝が直接治める都、長安一帯を指すものだ。現在、主のいない司隷は玉璽が住んでいる他、三国の会談の場となっている。
『そう言えば何か所からか伝言を預かってきておる。まず、ヴォーダンにじゃが、春に蜀から一人留学生を送る故よろしく頼むと言っておったの』
「蜀からか……うむ、承ろう。ちなみに誰じゃ?」
『関羽の末じゃったかのう……そっちにいる趙雲の末と入れ替わりらしい』
「そうかそうか……分かったしっかりと準備をしておこう」
『よしなにな。次に晴久によ、魏と呉の道士を何人か送りたい故、各所との折衝を頼みたいとのことじゃ』
「承りました。剣兎に話を通しておきます」
『うむ。それと最後にヴィヴィ』
「私にも?」
『ひょっひょ!これは儂の個人的な用件じゃて。宮廷魔術団長就任の祝いを送ってやる故、楽しみにしておくといい』
「本当!?楽しみにしてるわ!」
『じゃあ、僕からも……』
「アンタからのなんていらないわよ!送ってきたらどうなっても知らないわよ?」
『……………………』
すげなく断られた上で脅されたマーリンは笑みを浮かべたまま何とも言えない哀愁を漂わせたが、九割九分九厘、自分自身の行動が原因なので誰一人憐れむことはなかった。
「フォッフォッフォ!最後になったがそろそろ儂が話す番じゃのう」
『ああいや、待て待て、お主には聞きたいことがある』
「ふむ、何じゃ?」
話をはじめようとしたヴォーダンを止めて呂尚が聞きたいことがあると言うのでヴォーダンはそちらを優先させることにした。
『いや、何、お主のところに面白いのが集まっていると思ってのう……今年の評議会は”神器”持ちばかり集まっているようじゃが、何か企んでいるのか?』
「…………儂が意図したわけではない、偶然じゃ」
『…………そうか、お主がそう言うのならそうなのじゃろうて』
ヴォーダンと呂尚は一瞬、お互いの腹を探り合うような空気になったが信用ゆえかその空気はすぐに散った。
『”神器”持ちと言えばさー』
そこで今日何度目か分からない不貞腐れ状態からの復活果たしたマーリンが首を突っ込んできた。
『僕もヴォーダンに言っておきたいことと聞きたいことがあるんだよねー!どっちから聞きたい?』
「……チッ、いちいち癇に障る物言いをするわね」
「まあ、まあ、夢魔殿は言うことは正しいですから」
自分に向けての発言ではないにもかかわらず機嫌を悪くするヴィヴィアンヌを晴久がやんわりと宥める。
「それでは言っておきたいこととやらから聞こう」
『りょうかーい!遺物科にゲイボルクと契約したクーフーリンの末裔の娘がいるよね?名前はロザリン=デヒティネ=キュクレインって言ったけ?あの娘、悪い運勢が出てるから直近一ヶ月は気をつけておいた方がいいよ』
了承の返事は普段のお気楽な感じだったが、その後は極めて理知的な史に名を刻む大魔術師としての発言だった。
マーリンは残念な性格故、扱いはひどいが腕は本物だ。
魔術に加え、王を導いた予言者としての側面もある。その言葉は未来を示すと言っても過言でもない。
「………………ふむ、分かった気に留めておこう」
何か思い当たることがあったのかヴォーダンは眼帯で覆われていない方の瞳を閉じ、数度髭を撫でてから頷いた。
「して、聞きたいこととは何じゃ?」
『うーん……そのことなんだけどねー、ヴォーダン、僕らに隠してること、あるんじゃない?いや、あるね!しかも面白そうなこと!』
新しい玩具を与えられた子供のような表情でマーリンは断言した。
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