魔剣少女と契約した低血圧系魔術師、実は  の生まれ変わりでした?魔導学園で学生と講師を両立しながら何とか生きていこうと思います。

精神感応4

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第一章「叡智集会」

第225話 賢翁への疑惑

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 「………………」

 どう答えたものか迷っているのか、そもそも答えるつもりがないのかヴォーダンは黙り込んで髭を撫でている。

 マーリンの言葉に呂尚は片眉を上げて興味深そうな反応を見せる。ヴィヴィアンヌも細く美しい足を組みなおして同じような反応を示す。

 ジルニトラと晴久は特に反応を示さない。

 マーリンはさらに畳みかける。

 『その反応、ジルニトラも知ってるでしょ?晴久は……まあ、事情は把握してそうかな?』
 「………………」
 「………………」

 矛先が自分たちに向いた一頭と一人はチラリとヴォーダンに視線を送るだけで何も言おうともしない。

 『もう、じれったいなあ!じゃあ、具体的に言うよ!少し前に感じた”神の波動”!それと”枢機卿”の上の方で不自然に名前が伏せられた魔術師がいること!この二つについて三人は何か知ってるでしょ?』

 ズバリと切り込んだマーリンに反応を示したのは事情をあまり飲み込んでいない呂尚とヴィヴィアンヌだった。

 『ひょっ?確かに少―し前にそんなものを感じたのう……何じゃ、お主ら何か知っているのか?』
 「確かに……”枢機卿”に正体不明の魔術師がいるのは私も気になってたわ…………表面上は同じような奴は何人かいるけど、裏では情報公開されてるし……クソ爺が言った魔術師だけは私たちは何一つ把握してない…………貴方たち、何か企んでいるの?」

 呂尚は単に面白い話題を思い出した程度だったが、苛烈なヴィヴィアンヌの視線は鋭くなり、瞳の奥には僅かに敵意の色が滲んだ。

 「…………賢翁殿」
 「……………………」

 晴久の呼びかけにヴォーダンは答えない。眼帯で覆われていない方の眼を閉じて髭を撫でている。

 「ジルニトラ!貴方も何か知ってるんでしょ!?教えなさい…………」
 「ヴィヴィアン殿、落ち着きなさい」

 晴久が宥めたことでヴィヴィアンヌの鋭利な視線が晴久にも刺さる。

 「一応、この集まりは懇親の場よ!?この場で妙な隠し事をしない方がいいのは晴久も分かってるはずよ!そうよね!?」
 「…………」

 ヴィヴィアンヌの言葉を受けて晴久も口を結ぶ他ない。何故なら、ヴィヴィアンヌの言っていることに間違いはないのだ。

 此処にいるのは何れも世界を動かすほどの力を持つ者たちだ。無用な隠し事でその仲に波風を立てることはあってはならない。

 『…………ヴィヴィアンヌ、まあ、落ち着け、そして、聞け』

 ヴォーダンがだんまりを決め込んでいるので見かねたジルニトラが口を開いた。

 「何?話す気になったの!?」
 『それは一旦置いて、だ。我ら三人にも簡単に話せぬ事情があることを察しろ……それと、晴久は立場と交友関係上知っているだけで我とヴォーダンとは事情が異なる。そう睨んでやってくれるな』

 「……分かった。百歩譲って晴久は問い詰めないわ!でも、その言い様じゃ結局私たちに話す気はないってことでしょう!?」
 『う……む……それは…………』
 『いいぞー!ヴィヴィちゃん!もっと言ってやれー!吐かせろー!』
 「クソ爺は黙っていなさい!」
 『ひょっひょ!ヴィヴィ、少し落ち着け。それとそこのろくでなしも少し黙っておれ』

 ジルニトラをさらに問い詰めようとするヴィヴィアンヌとそれに乗っかるマーリンを呂尚がやんわりと止めに入った。

 「太公様……」
 『ブーブー!僕はろくでなしじゃないぞー!』
 『五月蠅い!ろくでなしじゃろうが!どうせ事の形は知っておるのじゃろうが!引っ掻き回す出ない!』
 『…………チェー』

 呂尚に一喝されたマーリンはその内容が当たっていたのか渋々と言った様子で黙った。

 『ヴォーダンとジルニトラが軽々に口を開かんということはジルニトラの言う通り事情があるのじゃろうて。その事情とやらが儂らに悪意を持ってのものなのか、それを考えると”否”じゃろう』
 「…………太公様はどうしてそう考えるの?」
 『ひょっひょっひょ!何、簡単なことよ……いくらヴォーダンやジルニトラとて、儂ら他の”叡智”を敵に回してはただでは済まんからのう!ひょっひょひょっ!』
 「……………………」
 『おー、怖い!流石、中華で最上位の武官だった人の言うことは違うね!』

 ヴィヴィアンヌの真剣かつ困惑混じりの問いに呂尚は一瞬、その眼をギラリと獰猛に光らせ、楽しげに答えた。

 呂尚の壮絶な雰囲気にヴィヴィアンヌは背筋を凍らせ、マーリンは茶化しを入れた。

 晴久とジルニトラは澄まして再び口を真一文字に結んでいる。

 他の魔術師と一線を画す実力を持つ”叡智”と言ってもその中で明確な力の差はある。

 この部屋に直接、間接問わず顔を出している中でヴィヴィアンヌは確実に最も格下だ。

 遥かに格上の呂尚の迫力にヴィヴィアンヌが戦慄するのは当然のことであった。

 『ひょっ?おっと、驚かせてしまったかの?すまんなヴィヴィ』
 「え、ええ、少し驚いただけよ」
 『そうかそうか、それならよかった……それで?ヴォーダンよ。そろそろ何か話す気になったかの?』
 「ふむ…………」

 呂尚から言葉の矢が飛んできたことにヴォーダンは瞼を開いて反応した。

 『ヴォーダン……』
 「まあ、説明できない事情くらいは話しておいた方良いと思ってな」
 『断らずにそんなことをしては奴を怒らせることになるのではないか?』
 「……ジルニトラ、お主の意見は最もじゃが……」

 ヴォーダンは一度言葉を切ると画面の向こうで悪戯っぽい笑みを浮かべている呂尚とマーリン、そして、ソファーに腰掛けて少し緊張した面持ちのヴィヴィアンヌを見回した。

 「この場で沈黙を貫けば後々にしこりを残すことになろう。それは避けるべきじゃ。責任は儂が取る。彼奴にもよく謝っておく」
 『そうか……ヴォーダンがそう言うなら我はもう何も言わん』
 「フォッフォッフォ…………すまんな」
 『話は終わったかい?決まったなら早く話して欲しいな!』

 マーリンが身体を左右に揺らして如何にもウキウキとした風の明るい声で急かす。

 「…………先に断っておくが……儂が話すのは事情のみじゃ」
 『…………』
 「…………」

ジ ルニトラと晴久は完全にヴォーダンへと委ねるつもりのようで瞼を閉じて、沈黙の姿勢に入るのだった。
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