魔剣少女と契約した低血圧系魔術師、実は  の生まれ変わりでした?魔導学園で学生と講師を両立しながら何とか生きていこうと思います。

精神感応4

文字の大きさ
240 / 268
第二章「時計塔の眠り姫」

第238話 時計塔の謎の部屋

しおりを挟む
 「…………おい、逃げないからそろそろ放せよ」

 ゲイボルグにローブの裾を咥えられて引かれる双魔は事務棟の廊下を進みながら不満げな声を上げた。

 それを聞いたゲイボルグは毛に覆われた三角の耳をピクリと動かすと立ち止まり、くるりと身体ごと振り返ってローブの裾を口から放した。

 「ヒッヒッヒ!悪いな、もう少し抵抗すると思ったんだ。ここまで無抵抗ならいいか!」
 「話は聞くって言っただろ…………」
 「ワン!確かにそうだったな!」
 「で?どこに向かってるんだ?用件は何だ?」
 「ヒッヒッ!そう慌てるなよ……待てない男は嫌われるぜ?」
 「…………」

 ゲイボルグはニヒルな笑みを見せるとまたスタスタと歩きはじめた。

 (…………こっちは……学園長室にでも行くのか?)

 今歩いている場所は別段これまで通ったことのないというわけでもなく最上階に学園長室のある時計塔を昇る魔力動のエレベーターの方向だ。

 そんなことを考えているうちにエレベーターが視界に入り、裾を放し双魔の少し先を歩くゲイボルグはエレベーターの前で足を止めた。

 「よっと」
 そして、器用に後ろ足で立ち上がり両の前足を浮かせると肉球でテシッと軽くボタンを押してエレベーターの扉を開くと乗り込んでいった。

 「双魔、早く来いよ」
 「……ん、ああ…………」

 (…………やっぱり学園長室に……いや、サロンか?)

 このエレベーターに乗るということは双魔が考えた二択しかない。

 時計塔は基本的に学生は立ち入り禁止の区域だ。最上階の学園長室。その一つ下の階はティルフィングやアイギスなどの学園関係者の契約遺物が集まるサロンがある。

 その他の階は何があるか一応臨時講師を務めていて通常の学生より多少学園の事情に詳しい双魔も聞かされてはいなかった。

 「…………」
 「よしよし、乗ったな!」
 「学園長に用か?それともサロンで何かあったのか?」

 思い当たる学園長室とサロンについて口にして見る。すると、ゲイボルグの反応は予想とは少しずれたものだった。

 「……あー、どっちでもないとだけ言っておくぜ……っと!」

 そう言うとゲイボルグは再び後ろ足で立って行先階のボタンを押した。

 押されたボタンはサロンの一つ下の階。双魔が一度も訪れたことのない階だ。当然何があるのかも分からない。

 「…………その階には行ったことはないんだが…………」
 「ワン!慌てるなよ!着いてからのお楽しみだ!ヒッヒッヒ!」

 (…………あー、ダメだ…………面倒事の予感しかしない……)

 双魔の問いに被せるようにゲイボルグが答える。

 カタカタカタと僅かに揺れながらエレベーターは上へ上へと昇っていく。

 時計塔の高さは百メートル近くある上にエレベーターはゆっくりと上昇するので目的の階までは少し時間が掛かる。

 「…………」
 「……………………」

 少し楽しそうなゲイボルグと目が半分死んでいる双魔という対照的な表情と沈黙が妙な雰囲気を生み出す。それが少し続き。

 チーン!

 やがて、目的の階に到着したことを告げる甲高いベルの音が響き扉がゆっくりと開いた。

 「よし、降りるぞ」
 「…………ん」

 ゲイボルグはスタスタと言ってしまうので双魔も少し警戒しながら後に続く。

 学園長室やサロンはエレベーターを降りるとすぐ目の前に大きな扉があるのだがこの階は違うらしい。

 エレベーターを降りると細い廊下があり、ゲイボルグはそれを右に進んでいく。

 「ここだ」

 仄暗い廊下はそこまで長くはなく突き当りにあったドアの前でゲイボルグは足を止めた。

 木製の簡素な造りの扉だ。時計塔の構造から考えてこの先にはそこそこの広さの部屋があると推測できた。

 「…………この部屋は?」
 「ああ、ここは俺の契約者ロザリンの部屋だ」
 「…………は?」

 ゲイボルグの答えに双魔は唖然とした。

 何せ、学園内に学生が住んでいるという話は聞いたことがなかったからだ。ハシーシュのようにしょっちゅう学園に泊っている職員はいるが、同じような学生がいるとは俄かには信じがたい。

 加えて、その住人が数時間前に話題に上がった遺物科評議会議長ロザリン=デヒティネ=キュクレイン、その人だと言う。

 正直、ゲイボルグが顔を出した辺りから何となく顔を合わせるような予感はしていたがまさか部屋に直接連れてこられるとは思いもしなかった。

 「何してるんだ?さっさと入ろうぜ?」

 黙ったままの双魔を見てゲイボルグは不満げな声を出した。

 「いや……部屋に入れってそもそも部屋の主……キュクレイン先輩に許可を得てないんだが…………それに女性の部屋に入るのもまずいだろ……」

 双魔はげんなりとした表情を浮かべてゲイボルグを見下ろした。

 「ヒッヒッヒ!何だ、女を二人をモノにしてるのに意外と初心だな!お前!」
 「…………人聞きが悪い言い方はやめろ。それに俺は常識を言ってるだけだ……」

 何故か楽しそうなゲイボルグだったが、双魔は帰りたくて仕方がなくなってきた。

 しかし、それを見抜いたのかゲイボルグは前足でテシテシと双魔の腿の辺りを強めに叩いてきた。

 「……痛いからやめてくれ…………」
 「ヒッヒッヒ!やめて欲しいならさっさと部屋に入るんだな!」
 「だから許可を…………」
 「ロザリンが赤ん坊の頃から一緒の俺がいいって言ってるんだからいいんだよ!もう起きてるはずだから大丈夫だ!」

 (…………”もう起きて”?どういうことだ?)

 何かが双魔の脳裏に引っかかった。ロザリンが普段、姿を現さない理由がゲイボルグの何気ない一言に詰まっている気がする。

 が、今はその追及も後回しだ兎に角、目の前の部屋に入ることは避けたい。双魔の面倒事センサーが振り切っている。

 「……いや、せめてどうして部屋に入る必要があるかをだな…………」
 「バウッ!あー!もう!ごちゃごちゃと!お前には入る以外の選択肢はないんだ、ぜっ!」
 「あっ!おい!」

 ガチャッ…………キーッ…………

 煮え切らない双魔の態度に業を煮やしたのかゲイボルグは突然後ろ足で立ち上がるとドアノブを前足で下してその身体でドアを押して開いた。

 「…………」

 双魔は驚きの声を上げたが、部屋の主の反応が気になり咄嗟に口を紡ぎ、顔を動かさずにそのまま部屋の中を視界に映した。

 部屋の位置的に丁度この時間は沈む夕陽が差し込むのか大きなガラス窓は斜陽の光を取り込み室内は真紅と黄金の織物のように美しい色に染められていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

霊力ゼロの陰陽師見習い

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...