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第三章「たくさん食べる女の子は嫌い?」
第247話 よろしくね?後輩君
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「あー……寒かった…………」
「もぐもぐ……ごくんっ……あ、後輩君、おかえり……はぐっ……むぐむぐ……」
「あ、どうも……」
暖房の効いた店内に入り、座っていたカウンターの奥に戻ってくると食事を続けていたロザリンがひらひらと手を振って出迎えてくれた。
ロザリンの目の前には空になった皿が何枚も積み重ねられ、既に並の成人男性でも根を上げるような量を食べているはずなのだが、ロザリンは平然と双魔に向けていない方の手に持ったラムチョップの香草焼きらしきものに齧りついている。
「空いたお皿お下げしますねー」
偶々店の奥に用があったらしい双魔の顔見知りのパートのお姉さんがロザリンの前に積まれた食器を持って厨房の方へ去っていった。
「…………ぐー」
足元ではエールを飲み過ぎたのかゲイボルグが神話級遺物は思えぬ間の抜けたいびきを上げて伏せていた。
「お嬢さん、追加の料理だよ。双魔もちょうどよかった。いつもの、もうすぐ出来るから座るといいよ」
「ん、ああ……」
パートのお姉さんと入れ替わりでカウンターに顔を出したセオドアは両手のトレーに載せられた出来立ての料理を次々とロザリンの前に並べていく。
今度は豚肉らしき串焼きに魚を香草で焼いたもの、パイやグラタンなどが並べられていく。
最早、見ているだけで空腹が紛れるレベルだ。そして、ロザリンは少なくともこの量を三周している。恐るべき胃袋の持ち主だ。
(…………こんだけ食っててこの体型…………この人どうなってるんだか……)
「…………後輩君」
「あ、はい!なんですか?」
双魔が驚きの余り不躾な視線を送っていると片手にスプーンを持ったロザリンの顔がこちらを向いた。
「電話、誰からだったの?」
「え?……ああ、家に連絡をするのを忘れていたので……」
「ふーん……噂の婚約者さんから?」
「……そうですけど……知ってたんですか?」
「うん……ゲイボルグが何か言ってた……ふー……ふー……はむっ……はふはふっ……」
予想外の返しに不意を突かれて少々恥ずかしさが漏れた双魔を横目にロザリンはアツアツのグラタンを冷まして口に運んでいる。
(…………少しやりにくいな……)
ロザリンは感情の起伏が平坦なようで、表情もほとんど無表情だ。彼女のような人間を知らないわけではないがあまり付き合ったことはないので、双魔は会話をするだけでも慎重にならざるをえなかった。
「むぐむぐむぐ……ごくんっ……はむっ……」
「…………」
「お待たせ、いつもの出来たよ。召し上がれ」
咀嚼音だけが響く双魔とロザリンの空気を破るかのようにセオドアが片手に持った湯気の上がる皿を双魔の前に置いた。
「ん、ありがとさん」
置かれた皿の上にはパスタとそれに絡まるように緑の葉野菜と白い肉のようなもの、それに小さなナッツが散りばめられていた。
双魔がいつも食べているほうれん草と蒸し鶏のペペロンチーノだ。
程よい塩気と辛み、ニンニクと上に乗った松の実の香ばしさとほのかな甘味がアクセントになったお気に入りの逸品だ。
「ふー……ふー……あむっ……むぐむぐむぐ……んぐっ!うん、美味い」
「ハハハ、よかったよ。ゆっくり食べてくれ」
双魔の一言を聞いたセオドアは満足気に頷くと入り口近くの客に酒を提供するために双魔たちの前からいなくなった。
「…………それで、どうするの?後輩君」
「え?」
二口目を飲み込み、三口目を口に運ぼうとフォークでスパゲッティを巻いていたところで食事に集中していたはずのロザリンから声が掛かった。
そちらを向くと既に出された料理は皿の上から跡形も無くなり、ロザリンは両手でグラスを持ってコクコクと烏龍茶を飲んでいた。
「……ぷはっ!ゲイボルグが言ってたみたいに、私と暫く一緒にいる?それとも……いや?」
「…………いや…………」
コテンと首を傾げ、真っ直ぐにこちらを見つめるロザリンの透き通った右の瞳に双魔の意識は吸い込まれそうになる。
そして、閉じられた左眼に気のせいかもしれないが微かに妙な魔力を感じた。それが決定打だったかもしれない。
ロザリンに問われるまでもなく、引き受けようとしていた双魔だったが、この時、明確に意思を固まった。
「わかりました。しばらく……まあ、どれくらいになるか分からないですけど。ご一緒させてもらいますよ」
「そっか……うん、じゃあ……よろしくね?……あ、握手とかした方が良いかな?はい」
相変わらずの無表情のままロザリンは双魔に手を差し伸べる。
「…………ええ、よろしくお願いします」
「うん、握手握手」
双魔は差し出された白い手を取り、優しく握った。双魔の手をほんのり温かく、細い指が確かに包んだ。
かくして、不思議な遺物科議長ロザリン=デヒティネ=キュクレインと覇気の欠如した遺物科副議長の日常が開始される運びとなったのだった。
「もぐもぐ……ごくんっ……あ、後輩君、おかえり……はぐっ……むぐむぐ……」
「あ、どうも……」
暖房の効いた店内に入り、座っていたカウンターの奥に戻ってくると食事を続けていたロザリンがひらひらと手を振って出迎えてくれた。
ロザリンの目の前には空になった皿が何枚も積み重ねられ、既に並の成人男性でも根を上げるような量を食べているはずなのだが、ロザリンは平然と双魔に向けていない方の手に持ったラムチョップの香草焼きらしきものに齧りついている。
「空いたお皿お下げしますねー」
偶々店の奥に用があったらしい双魔の顔見知りのパートのお姉さんがロザリンの前に積まれた食器を持って厨房の方へ去っていった。
「…………ぐー」
足元ではエールを飲み過ぎたのかゲイボルグが神話級遺物は思えぬ間の抜けたいびきを上げて伏せていた。
「お嬢さん、追加の料理だよ。双魔もちょうどよかった。いつもの、もうすぐ出来るから座るといいよ」
「ん、ああ……」
パートのお姉さんと入れ替わりでカウンターに顔を出したセオドアは両手のトレーに載せられた出来立ての料理を次々とロザリンの前に並べていく。
今度は豚肉らしき串焼きに魚を香草で焼いたもの、パイやグラタンなどが並べられていく。
最早、見ているだけで空腹が紛れるレベルだ。そして、ロザリンは少なくともこの量を三周している。恐るべき胃袋の持ち主だ。
(…………こんだけ食っててこの体型…………この人どうなってるんだか……)
「…………後輩君」
「あ、はい!なんですか?」
双魔が驚きの余り不躾な視線を送っていると片手にスプーンを持ったロザリンの顔がこちらを向いた。
「電話、誰からだったの?」
「え?……ああ、家に連絡をするのを忘れていたので……」
「ふーん……噂の婚約者さんから?」
「……そうですけど……知ってたんですか?」
「うん……ゲイボルグが何か言ってた……ふー……ふー……はむっ……はふはふっ……」
予想外の返しに不意を突かれて少々恥ずかしさが漏れた双魔を横目にロザリンはアツアツのグラタンを冷まして口に運んでいる。
(…………少しやりにくいな……)
ロザリンは感情の起伏が平坦なようで、表情もほとんど無表情だ。彼女のような人間を知らないわけではないがあまり付き合ったことはないので、双魔は会話をするだけでも慎重にならざるをえなかった。
「むぐむぐむぐ……ごくんっ……はむっ……」
「…………」
「お待たせ、いつもの出来たよ。召し上がれ」
咀嚼音だけが響く双魔とロザリンの空気を破るかのようにセオドアが片手に持った湯気の上がる皿を双魔の前に置いた。
「ん、ありがとさん」
置かれた皿の上にはパスタとそれに絡まるように緑の葉野菜と白い肉のようなもの、それに小さなナッツが散りばめられていた。
双魔がいつも食べているほうれん草と蒸し鶏のペペロンチーノだ。
程よい塩気と辛み、ニンニクと上に乗った松の実の香ばしさとほのかな甘味がアクセントになったお気に入りの逸品だ。
「ふー……ふー……あむっ……むぐむぐむぐ……んぐっ!うん、美味い」
「ハハハ、よかったよ。ゆっくり食べてくれ」
双魔の一言を聞いたセオドアは満足気に頷くと入り口近くの客に酒を提供するために双魔たちの前からいなくなった。
「…………それで、どうするの?後輩君」
「え?」
二口目を飲み込み、三口目を口に運ぼうとフォークでスパゲッティを巻いていたところで食事に集中していたはずのロザリンから声が掛かった。
そちらを向くと既に出された料理は皿の上から跡形も無くなり、ロザリンは両手でグラスを持ってコクコクと烏龍茶を飲んでいた。
「……ぷはっ!ゲイボルグが言ってたみたいに、私と暫く一緒にいる?それとも……いや?」
「…………いや…………」
コテンと首を傾げ、真っ直ぐにこちらを見つめるロザリンの透き通った右の瞳に双魔の意識は吸い込まれそうになる。
そして、閉じられた左眼に気のせいかもしれないが微かに妙な魔力を感じた。それが決定打だったかもしれない。
ロザリンに問われるまでもなく、引き受けようとしていた双魔だったが、この時、明確に意思を固まった。
「わかりました。しばらく……まあ、どれくらいになるか分からないですけど。ご一緒させてもらいますよ」
「そっか……うん、じゃあ……よろしくね?……あ、握手とかした方が良いかな?はい」
相変わらずの無表情のままロザリンは双魔に手を差し伸べる。
「…………ええ、よろしくお願いします」
「うん、握手握手」
双魔は差し出された白い手を取り、優しく握った。双魔の手をほんのり温かく、細い指が確かに包んだ。
かくして、不思議な遺物科議長ロザリン=デヒティネ=キュクレインと覇気の欠如した遺物科副議長の日常が開始される運びとなったのだった。
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