魔剣少女と契約した低血圧系魔術師、実は  の生まれ変わりでした?魔導学園で学生と講師を両立しながら何とか生きていこうと思います。

精神感応4

文字の大きさ
266 / 268
第四章「新しい恋敵?の気配」

第264話 つれない貴方

しおりを挟む
 「……っくしゅん!」

 抱き合いながら、時々背を撫でたり、頬を撫でたりと睦合っていた二人だったがイサベルが可愛いくしゃみをした。

 双魔の頬に触れた手もかなり冷えていた。ここでそこそこ長い時間待っていて体が冷えたに違いない。

 「っと、寒いか……本当はこの後、一緒に晩飯でも食いたいんだが……」
 「フフフフ、今日はいいの、だから……はい」

 双魔が申し訳なさそうに頭を掻くとイサベルは双魔の腕の中からするりと抜けた。

 そして、明るい声でそう言うと双魔に手を差し出した。

 「……ん、お送りいたしますよ、お姫様……なんてな」
 「っーー!おっ、お姫様だなんて……」

 双魔の返答にマフラーで顔を隠して照れるイサベルの手を双魔はしっかりと握りしめた。

 「じゃあ、行くか」
 「…………ええ」

 歩き出す瞬間、イサベルは双魔の手を一瞬だけ離して、指と指を絡めて握り直した。

 空からははらはらと雪が舞いはじめる。

 煌々と輝く該当は寄り添って一つとなった二つの影を石畳の上に映し出していた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「あー……寒いな……」

 イサベルを寮に送り届けた後、双魔はアパートへと足を動かしていた。

 先ほどまでイサベルのぬくもりを感じていただけに一人になると身体も心も寒さを強く感じている。

 イサベルの寮からアパートまではそう遠くない、が如何せん雪が強くなってきた。このままでは雪だるまだ。双魔はさらに足を速めた。

 速足のおかげで十分ほどでアパートに辿り着いた。

 玄関前の段差を上がり屋根の下に避難するとローブについた雪を払ってベルを鳴らす。

 ピンポーン!

 『はーい』

 ベルの音が鳴るとすぐにドアの向こうから鏡華の声と二人分の足音がパタパタと聞こえてくる。

 「…………ん」

 鍵が開けられると双魔の口元には自然と笑みが浮かんだ。そして、身体に力を入れて後ろに倒れないように構えるとドアを開いた。

 「ただい……」
 「ソーーーマーー!」
 「……っと!危ないぞ……」
 「ソーマ!おかえりだ!」
 「ん、ただいま。いい子にしてたか?」
 「うむ!」

 ドアを開けた瞬間、ティルフィングが双魔の胸元めがけて飛び込んできたが、双魔も慣れたものでしっかりとティルフィングの小さな身体を受け止めるとそのまま頭をくしゃりと撫でてやる。

 「ムフー!」

 ティルフィングは身体を小さく揺らしてご満悦だ。

 「双魔、お疲れ様。今日はいきなりごめんなぁ」

 ティルフィングを抱いたまま扉の鍵を閉め向き直ると朱色の小袖を着て浅葱の帯を締めた鏡華が申し訳なさそうな顔をしていた。

 「ん、気にするな……俺もそろそろ家で飯が食いたかったからな」
 「そ、それならちょうどよかったわ。ティルフィングはん、それくらいにして左文はんのお手伝いせな」
 「む!そうだった!ソーマまた後で我を撫でるのだぞ!絶対だぞ!」

 ティルフィングはパッと双魔から離れるとリビングの方へと消えていった。

 「ちゃんと、手洗わないとあかんよー」
 「うむ!」

 鏡華が呼び掛けると家の奥から元気な返事が返ってきた。

 (……帰ってきたって感じだな)

 「双魔……双魔」
 「ん、ああ、すまん」

 双魔が少々感慨にふけっていると目の前の鏡華がこちらに手を伸ばしていた。

 「ローブ、掛けるさかい貸して」
 「ん、ありがとさん」
 「ええのええの、早く上がり」
 「ん」

 双魔はローブを脱いで鏡華に渡すと靴を脱いで廊下に上がる。

 鏡華がローブをコート掛けに掛けるのを何となしに横目で見ているとローブを掛け終えた鏡華がくるりとこちらに向き直って両腕を広げて見せた。

 「はい、双魔!」
 「……ん?なんだ?」

 悪戯っぽい笑みを浮かべた鏡華の意図がよく分からず首を傾げると、鏡華の顔は不服そうなものに変わった。

 「ティルフィングはんにはぎゅーってするのに、うちにはしてくれへんの?」
 「…………いや、外から帰って来たばっかりだからな、汗もかいてるし……また後で……」
 「あっ、ちょっと……もう、いけずなんやから!」

 双魔は照れもあって鏡華の要求をやんわりと無視して洗面所に足を向ける。残された鏡華はというと珍しく、頬を膨らませて拗ねるのだった。

 「坊ちゃま、お帰りなさいませ。お出迎えできず申し訳ありません」

 洗面所で手を洗いリビングに顔を出すと、左文と部屋中に漂うだしの香りと暖かい空気が双魔を出迎えた。

 「ん、ただいま……今日は鍋か」

 左文さ菜箸を片手に食卓の上に置かれたカセットコンロで土鍋を火にかけていた。

 「はい、今日は寒いので生姜鍋にしました」
 「ん、いいな……俺も大分冷えたからありがたい」
 「お風邪を召されないようにしっかり温まってください」
 「婿……殿…………お疲れ……の……よう……だな」

 いつも通り目を瞑ったまま立って微動だにしなかった浄玻璃鏡が薄っすらと目を開いて声を掛けてきた。

 「ああ、ちょっとな……」
 「あまり……無理は……するな……婿……殿……だけの……身体で……は……ない……故……」
 「……ん、気をつける」

 ”双魔だけの身体”ではないというのは鏡華やティルフィングたちに心配をかけるなと言いたいのだろう。

 「ソーマ!我も手伝ったのだぞ!」
 「そうそ、ティルフィングはんも鶏団子の種混ぜたり色々と手伝ってくれたんよ」

 浄玻璃鏡と話しているとキッチンから具材を載せた皿を持った鏡華と器を持ったティルフィングが顔を出した。

 「そうか、ティルフィング偉いな」
 「うむ!うむ!」

 ティルフィングは食卓に器を置くと双魔のそばに寄ってきたのでまた頭を撫でてやる。

 「…………」
 「…………」

 仲睦まじい双魔とティルフィングの様子を鏡華がじっと見つめていることに気づいたのは契約遺物である浄玻璃鏡だけだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

霊力ゼロの陰陽師見習い

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...