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第四章「新しい恋敵?の気配」
第264話 つれない貴方
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「……っくしゅん!」
抱き合いながら、時々背を撫でたり、頬を撫でたりと睦合っていた二人だったがイサベルが可愛いくしゃみをした。
双魔の頬に触れた手もかなり冷えていた。ここでそこそこ長い時間待っていて体が冷えたに違いない。
「っと、寒いか……本当はこの後、一緒に晩飯でも食いたいんだが……」
「フフフフ、今日はいいの、だから……はい」
双魔が申し訳なさそうに頭を掻くとイサベルは双魔の腕の中からするりと抜けた。
そして、明るい声でそう言うと双魔に手を差し出した。
「……ん、お送りいたしますよ、お姫様……なんてな」
「っーー!おっ、お姫様だなんて……」
双魔の返答にマフラーで顔を隠して照れるイサベルの手を双魔はしっかりと握りしめた。
「じゃあ、行くか」
「…………ええ」
歩き出す瞬間、イサベルは双魔の手を一瞬だけ離して、指と指を絡めて握り直した。
空からははらはらと雪が舞いはじめる。
煌々と輝く該当は寄り添って一つとなった二つの影を石畳の上に映し出していた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「あー……寒いな……」
イサベルを寮に送り届けた後、双魔はアパートへと足を動かしていた。
先ほどまでイサベルのぬくもりを感じていただけに一人になると身体も心も寒さを強く感じている。
イサベルの寮からアパートまではそう遠くない、が如何せん雪が強くなってきた。このままでは雪だるまだ。双魔はさらに足を速めた。
速足のおかげで十分ほどでアパートに辿り着いた。
玄関前の段差を上がり屋根の下に避難するとローブについた雪を払ってベルを鳴らす。
ピンポーン!
『はーい』
ベルの音が鳴るとすぐにドアの向こうから鏡華の声と二人分の足音がパタパタと聞こえてくる。
「…………ん」
鍵が開けられると双魔の口元には自然と笑みが浮かんだ。そして、身体に力を入れて後ろに倒れないように構えるとドアを開いた。
「ただい……」
「ソーーーマーー!」
「……っと!危ないぞ……」
「ソーマ!おかえりだ!」
「ん、ただいま。いい子にしてたか?」
「うむ!」
ドアを開けた瞬間、ティルフィングが双魔の胸元めがけて飛び込んできたが、双魔も慣れたものでしっかりとティルフィングの小さな身体を受け止めるとそのまま頭をくしゃりと撫でてやる。
「ムフー!」
ティルフィングは身体を小さく揺らしてご満悦だ。
「双魔、お疲れ様。今日はいきなりごめんなぁ」
ティルフィングを抱いたまま扉の鍵を閉め向き直ると朱色の小袖を着て浅葱の帯を締めた鏡華が申し訳なさそうな顔をしていた。
「ん、気にするな……俺もそろそろ家で飯が食いたかったからな」
「そ、それならちょうどよかったわ。ティルフィングはん、それくらいにして左文はんのお手伝いせな」
「む!そうだった!ソーマまた後で我を撫でるのだぞ!絶対だぞ!」
ティルフィングはパッと双魔から離れるとリビングの方へと消えていった。
「ちゃんと、手洗わないとあかんよー」
「うむ!」
鏡華が呼び掛けると家の奥から元気な返事が返ってきた。
(……帰ってきたって感じだな)
「双魔……双魔」
「ん、ああ、すまん」
双魔が少々感慨にふけっていると目の前の鏡華がこちらに手を伸ばしていた。
「ローブ、掛けるさかい貸して」
「ん、ありがとさん」
「ええのええの、早く上がり」
「ん」
双魔はローブを脱いで鏡華に渡すと靴を脱いで廊下に上がる。
鏡華がローブをコート掛けに掛けるのを何となしに横目で見ているとローブを掛け終えた鏡華がくるりとこちらに向き直って両腕を広げて見せた。
「はい、双魔!」
「……ん?なんだ?」
悪戯っぽい笑みを浮かべた鏡華の意図がよく分からず首を傾げると、鏡華の顔は不服そうなものに変わった。
「ティルフィングはんにはぎゅーってするのに、うちにはしてくれへんの?」
「…………いや、外から帰って来たばっかりだからな、汗もかいてるし……また後で……」
「あっ、ちょっと……もう、いけずなんやから!」
双魔は照れもあって鏡華の要求をやんわりと無視して洗面所に足を向ける。残された鏡華はというと珍しく、頬を膨らませて拗ねるのだった。
「坊ちゃま、お帰りなさいませ。お出迎えできず申し訳ありません」
洗面所で手を洗いリビングに顔を出すと、左文と部屋中に漂うだしの香りと暖かい空気が双魔を出迎えた。
「ん、ただいま……今日は鍋か」
左文さ菜箸を片手に食卓の上に置かれたカセットコンロで土鍋を火にかけていた。
「はい、今日は寒いので生姜鍋にしました」
「ん、いいな……俺も大分冷えたからありがたい」
「お風邪を召されないようにしっかり温まってください」
「婿……殿…………お疲れ……の……よう……だな」
いつも通り目を瞑ったまま立って微動だにしなかった浄玻璃鏡が薄っすらと目を開いて声を掛けてきた。
「ああ、ちょっとな……」
「あまり……無理は……するな……婿……殿……だけの……身体で……は……ない……故……」
「……ん、気をつける」
”双魔だけの身体”ではないというのは鏡華やティルフィングたちに心配をかけるなと言いたいのだろう。
「ソーマ!我も手伝ったのだぞ!」
「そうそ、ティルフィングはんも鶏団子の種混ぜたり色々と手伝ってくれたんよ」
浄玻璃鏡と話しているとキッチンから具材を載せた皿を持った鏡華と器を持ったティルフィングが顔を出した。
「そうか、ティルフィング偉いな」
「うむ!うむ!」
ティルフィングは食卓に器を置くと双魔のそばに寄ってきたのでまた頭を撫でてやる。
「…………」
「…………」
仲睦まじい双魔とティルフィングの様子を鏡華がじっと見つめていることに気づいたのは契約遺物である浄玻璃鏡だけだった。
抱き合いながら、時々背を撫でたり、頬を撫でたりと睦合っていた二人だったがイサベルが可愛いくしゃみをした。
双魔の頬に触れた手もかなり冷えていた。ここでそこそこ長い時間待っていて体が冷えたに違いない。
「っと、寒いか……本当はこの後、一緒に晩飯でも食いたいんだが……」
「フフフフ、今日はいいの、だから……はい」
双魔が申し訳なさそうに頭を掻くとイサベルは双魔の腕の中からするりと抜けた。
そして、明るい声でそう言うと双魔に手を差し出した。
「……ん、お送りいたしますよ、お姫様……なんてな」
「っーー!おっ、お姫様だなんて……」
双魔の返答にマフラーで顔を隠して照れるイサベルの手を双魔はしっかりと握りしめた。
「じゃあ、行くか」
「…………ええ」
歩き出す瞬間、イサベルは双魔の手を一瞬だけ離して、指と指を絡めて握り直した。
空からははらはらと雪が舞いはじめる。
煌々と輝く該当は寄り添って一つとなった二つの影を石畳の上に映し出していた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「あー……寒いな……」
イサベルを寮に送り届けた後、双魔はアパートへと足を動かしていた。
先ほどまでイサベルのぬくもりを感じていただけに一人になると身体も心も寒さを強く感じている。
イサベルの寮からアパートまではそう遠くない、が如何せん雪が強くなってきた。このままでは雪だるまだ。双魔はさらに足を速めた。
速足のおかげで十分ほどでアパートに辿り着いた。
玄関前の段差を上がり屋根の下に避難するとローブについた雪を払ってベルを鳴らす。
ピンポーン!
『はーい』
ベルの音が鳴るとすぐにドアの向こうから鏡華の声と二人分の足音がパタパタと聞こえてくる。
「…………ん」
鍵が開けられると双魔の口元には自然と笑みが浮かんだ。そして、身体に力を入れて後ろに倒れないように構えるとドアを開いた。
「ただい……」
「ソーーーマーー!」
「……っと!危ないぞ……」
「ソーマ!おかえりだ!」
「ん、ただいま。いい子にしてたか?」
「うむ!」
ドアを開けた瞬間、ティルフィングが双魔の胸元めがけて飛び込んできたが、双魔も慣れたものでしっかりとティルフィングの小さな身体を受け止めるとそのまま頭をくしゃりと撫でてやる。
「ムフー!」
ティルフィングは身体を小さく揺らしてご満悦だ。
「双魔、お疲れ様。今日はいきなりごめんなぁ」
ティルフィングを抱いたまま扉の鍵を閉め向き直ると朱色の小袖を着て浅葱の帯を締めた鏡華が申し訳なさそうな顔をしていた。
「ん、気にするな……俺もそろそろ家で飯が食いたかったからな」
「そ、それならちょうどよかったわ。ティルフィングはん、それくらいにして左文はんのお手伝いせな」
「む!そうだった!ソーマまた後で我を撫でるのだぞ!絶対だぞ!」
ティルフィングはパッと双魔から離れるとリビングの方へと消えていった。
「ちゃんと、手洗わないとあかんよー」
「うむ!」
鏡華が呼び掛けると家の奥から元気な返事が返ってきた。
(……帰ってきたって感じだな)
「双魔……双魔」
「ん、ああ、すまん」
双魔が少々感慨にふけっていると目の前の鏡華がこちらに手を伸ばしていた。
「ローブ、掛けるさかい貸して」
「ん、ありがとさん」
「ええのええの、早く上がり」
「ん」
双魔はローブを脱いで鏡華に渡すと靴を脱いで廊下に上がる。
鏡華がローブをコート掛けに掛けるのを何となしに横目で見ているとローブを掛け終えた鏡華がくるりとこちらに向き直って両腕を広げて見せた。
「はい、双魔!」
「……ん?なんだ?」
悪戯っぽい笑みを浮かべた鏡華の意図がよく分からず首を傾げると、鏡華の顔は不服そうなものに変わった。
「ティルフィングはんにはぎゅーってするのに、うちにはしてくれへんの?」
「…………いや、外から帰って来たばっかりだからな、汗もかいてるし……また後で……」
「あっ、ちょっと……もう、いけずなんやから!」
双魔は照れもあって鏡華の要求をやんわりと無視して洗面所に足を向ける。残された鏡華はというと珍しく、頬を膨らませて拗ねるのだった。
「坊ちゃま、お帰りなさいませ。お出迎えできず申し訳ありません」
洗面所で手を洗いリビングに顔を出すと、左文と部屋中に漂うだしの香りと暖かい空気が双魔を出迎えた。
「ん、ただいま……今日は鍋か」
左文さ菜箸を片手に食卓の上に置かれたカセットコンロで土鍋を火にかけていた。
「はい、今日は寒いので生姜鍋にしました」
「ん、いいな……俺も大分冷えたからありがたい」
「お風邪を召されないようにしっかり温まってください」
「婿……殿…………お疲れ……の……よう……だな」
いつも通り目を瞑ったまま立って微動だにしなかった浄玻璃鏡が薄っすらと目を開いて声を掛けてきた。
「ああ、ちょっとな……」
「あまり……無理は……するな……婿……殿……だけの……身体で……は……ない……故……」
「……ん、気をつける」
”双魔だけの身体”ではないというのは鏡華やティルフィングたちに心配をかけるなと言いたいのだろう。
「ソーマ!我も手伝ったのだぞ!」
「そうそ、ティルフィングはんも鶏団子の種混ぜたり色々と手伝ってくれたんよ」
浄玻璃鏡と話しているとキッチンから具材を載せた皿を持った鏡華と器を持ったティルフィングが顔を出した。
「そうか、ティルフィング偉いな」
「うむ!うむ!」
ティルフィングは食卓に器を置くと双魔のそばに寄ってきたのでまた頭を撫でてやる。
「…………」
「…………」
仲睦まじい双魔とティルフィングの様子を鏡華がじっと見つめていることに気づいたのは契約遺物である浄玻璃鏡だけだった。
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