魔剣少女と契約した低血圧系魔術師、実は  の生まれ変わりでした?魔導学園で学生と講師を両立しながら何とか生きていこうと思います。

精神感応4

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第四章「新しい恋敵?の気配」

第263話 正門の伏兵?

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 五人仲良くミルクと砂糖たっぷりのカフェオレとアッシュが何処かで貰ってきたと言う、見るからに高級なクッキーで休憩を取り、そのあと仕事を再開してからしばらくたった。

 「…………ん?……もうこんな時間か……」

 ふと、窓の外を見ると日は落ちかけ、事務棟と遺物、魔術科棟に囲まれた人の少ない広場は街頭に照らされていた。

 部屋の時計を確認するともうすぐで十七時を回りそうだった。
 「後輩君、そろそろ帰る?」

 目聡く双魔が時計を気にしたことに気がついたロザリンが声を掛けてきた。それを合図に作業に集中していたアッシュたちの視線も双魔に集まる。

 「……ん、そうですね」
 「あ、双魔帰るの?」
 「ああ、鏡華に今日は早く帰ってくるように言われてるんだ」
 「双魔が帰るなら俺たちも今日はこの辺にしとくか……」
 「……私も今日は失礼させてもらいます」
 「そうだねー、じゃあ、今日は終わりにして、また明日にしようか」
 「ロザリンさん、明日も来てくれるんですか!?」
 「うん、明日も来るよ?……」
 「……ん?」

 アッシュと話しながらロザリンの視線が数瞬双魔の方を向いたが、すぐに逸らされた。

 「この後はしばらくすることがないから、アッシュくんとフェルゼンは私と一緒にご飯食べて欲しいな?」
 「いいですね!行きましょう!シャーロットちゃんは……ってもういない……」

 アッシュはシャーロットも誘おうと思ったようだがいつの間にかシャーロットの机の上は綺麗に片づけられ本人の姿も消えていた。

 「…………ロザリンと飯か…………」
 嬉しそうなアッシュと対照的にフェルゼンは顔を蒼くしていたがロザリンのあの大食いを知っていればその反応も無理はないだろう。
 「…………」
 双魔は苦笑しながら机の上を片付けると立ち上がってローブを羽織った。
 「それじゃあ、また明日」
 「双魔、また明日!」
 「後輩君、ばいばーい」
 「…………また明日……」

 アッシュとロザリンは軽く手を振って双魔に応えるがフェルゼンだけは視線で「行かないでくれ……」と悲愴に訴えていた。

 が、鏡華に帰って来て欲しいと言われているのでそちらが優先だ。

 双魔は視線でフェルゼンに詫びつつ、さっさと評議会室を後にするのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「……うー…………寒いな……」

 事務棟を出た双魔は暖房の効いていた評議会室と外の気温差に誰に聞こえるでもなく呟いていた。

 羽織っている魔術科のローブは防寒仕様だが陽が落ちた頃を境に元気を増してくる冷気を完全に遮断は出来ず、寒さが身体まで沁み込んでくる。

 この時間、学園に人がいない一因はそれだろう。

 人のいないなか、照明が等間隔で地面を照らしている光景は気分的に寒さを助長しているように感じる。

 人通りがあればまた変わってくるだろう。例えば、この時間に大通りを通ると人通りが多いのでここまで寒くは感じないはずだ。

 「……さっさと帰るか」

 普段通りふらふらとはっきりしない足取りで歩いていた双魔だったが、寒さに耐えかねてスタスタと足早にアパートを目指すことにする。

 真っ直ぐと歩きはじめると早いもので正門との距離がどんどん縮まっていく。

 「……そう言えば鏡華が何か言ってたな」

 そして、もうすぐで正門を潜り抜けるというところで、双魔はふと、電話越しの鏡華の声を思い出して歩調を緩めた。

 「……特に何もないな」

 正門の辺りを見回してみるが鏡華がいるどころか人っ子一人いない。正門の向こうに続く一本道に通り沿いの建物が額になって一枚の風景画のようになっているだけだ。

 「……潜ると何かあるのか?」

 双魔は首をひねると一瞬止まりそうになった足を再び動かした。鏡華言うことだから危ないこともないだろう。

 「…………何もないな……っ!!?」

 特に警戒もせずに正門を外へと抜け、五歩ほど進んで振り返ろうとした時だった。

 突然、背後から丁度腰のあたりに何かが勢いよくぶつかってきた。

 (まさか襲撃かっ!?)

 心当たりはないが状況的にその線は十分あり得た。身体が硬さを帯び、反射的に胸元に隠した銃を掴もうと手を動かした。

 「う、動かないでっ!!」
 「っ!?」

 が、完全に背後を取られた状態で正体不明の襲撃者は静止を求めてきた。要求に反しては何をされるか分からない。双魔は動揺を押し殺すように努めながら胸元に入れかけた腕をそっと下した。

 「…………何者だ……俺に何か用か?」

 低く、鋭い声で淡々と背中にぴったりと張り付いたの何者かに問うた。

 「えっ!?あっ……ええと……その…………」
 「…………ん?」

 襲撃者の様子がどうもおかしい。襲ってきた側のくせして動揺しているようだ。

 「そ、その……ゆ、ゆっくり……こっちへ振り向いて…………ください……」

 その言葉に違和感は確かなものに変わった。冷静になれば殺気もなく、声も何処かで、否、聴き慣れた声だ。

 言われた通りに身体をゆっくりと回す。すると、長く伸ばしたサイドテールの髪が目に映る。

 「…………イサベル……こんなところで何してるんだ?」
 「そっ……その……双魔君を待っていたんだけど……」
 「…………はー……驚かせるな……普通に声を掛けてくれればいいだろ……というかどうして影に隠れてたんだか……」

 双魔は強張っていた全身から力が抜けるのをはっきりと感じた。

 「……隠れてるつもりはなかったのだけど……」
 「ん、まあ、気づかなかった俺も悪い。それで、何か用か?」
 「…………」
 「イサベル?……っとと!」

 双魔がマフラーで半分覆われたイサベルの顔を覗きこもうとするとイサベルはそれを待たずに胸に飛び込んできた。

 「…………ぎゅうーー!」

 そして、双魔の背に細い両腕を回すと何やら珍妙な声を出しながら腕に力を込めてきた。

 「……はは……どうしたんだ?」

 双魔も手持ち無沙汰になった両手をイサベルの腰に回して軽く抱きしめ返す。

 「そ、双魔君、最近疲れているみたいだったから……何かしてあげたいって言ったら梓織しおりがこうすれば双魔君は喜んでくれるって……」
 「……なんだそりゃ……」

 梓織の考えはよく分からないが久々にゼロ距離でイサベルの熱や柔らかさ、声、匂いを感じて癒されているのも確かだった。

 ロザリンとの付き合いにも慣れてきたが、付き合いが短い分、無意識に緊張していたところもあったのだろう。

 イサベルと触れ合っている今、張り詰めていた見えない糸が緩められたような心地よさを感じていた。

 「……それと……わ、私も……双魔君と会えなくて寂しかったから……その……その…………」
 「ん?何か言ったか?」
 「っ!?な、何でもないわ!」
 「ん?……そうか……」

 イサベルが小声で何か言ったように聞こえたのだが最後の方はもにょもにょと口を動かすだけだったのか聞き取れなかった。

 「……フフフフ……」
 「ん?」
 「双魔君とこうするの、あの時以来ね。嬉しかったわ、私」
 「……いや、あの時のことは……まあ、いいだろ……」

 イサベルの穏やかな声で双魔の脳内にはイサベルの気持ちを受け入れた時の記憶がフラッシュバックする。

 「…………そ、そうね……あ、あの時は私も興奮していたから……」

 二人揃って、口づけを交わしたことを思い出したらしく。双魔は顔を逸らし、イサベルは双魔の胸に顔を押しつけて恥じらいを誤魔化し合っている。

 「…………悪いな……言い訳にしか聞こえないと思うが……忙しくてな」
 「……キュクレインさんといるところ……お昼に見たわ……」
 「…………」

 イサベルは自分の声が少し刺々しさを帯びるのと、双魔の身体が硬くなるのを感じた。別に双魔を責めるつもりはないのだが自然とそうなってしまったのだ。

 「双魔君には双魔君の事情があるのは分かってるわ。だけど……私のことも忘れないでくれると嬉しい……」
 「……ん……」

 双魔は短く返事をするとイサベルの腰に回していた腕に力を込めた。

 「……んっ……双魔君……少し苦しい……」
 「っ!すまん!」
 「待って、もう少しこのままで……私、幸せだから……」
 「…………」

 双魔が腕を緩めようとするのをイサベルはやんわりと制した。

 そのまま、二人はしばらく人通りのない正門の前で抱き合っていた。
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