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#11 淫夢のなかで ✱

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 でもこの日見た夢はいつもとは違っていた。

 勿論、野々宮先輩が途中からレオンに取って代わったのもある。

 けれどもそれだけではなかった。

 途中から野々宮先輩がただ単にレオンに代わったのではなく、視界がチカチカと明滅し、それに合わせて野々宮先輩とレオンの姿とがシンクロするように重なって見えはじめたのだ。

 途中からどちらに翻弄されているのかわからなくなってゆく。

 頭は混乱しているのに、感覚はやけに研ぎ澄まされていた。

 夢であるはずなのに、本当に交じり合っているかのようなリアルさだ。

 夢の中の私は、野々宮先輩に熱い眼差しで見つめられていた。

 それだけで胸はドキドキと忙しなく高鳴って、顔も身体も熱を帯び紅潮してゆく。

 そんな私のことを野々宮先輩は愛おしそうに眇めた瞳で見つめ、ふっと柔らかく微笑んでいた。

 そうしてゆっくりと耳元に顔を埋めてきた野々宮先輩に、これまで一度も耳にしたことのなかった、なんとも優しい甘やかな声音で。

『ノゾミ、好きだよ……なんて言葉では言い尽くせないほどに、僕は君を愛している。初めて会ったときに直感したんだ。君は僕にとって特別な女性だと。ねえ、ノゾミ。僕のこと嫌い?』

 耳元を熱い吐息で擽るようにして囁きを落とされて。

 あれ、こんなに丁寧な口調だったっけ? 

 それに今日は『俺』じゃなくて『僕』なんだ。

 なんだか王子様みたいでちょっと新鮮かも。

 違和感を覚えながらも、野々宮先輩には違いないので、なんの躊躇もなく私は首を左右に振って応える。

 それを見遣った野々宮先輩は、心底嬉しそうに、薄くて形のいい唇で弧を描いていた。

 そうしてそのまま私の唇へとそうっと触れるだけのキスを降らせた。

 徐々に徐々に、優しく啄むだけだったキスが深いものになってゆく。

 やがて唇の微かな隙から野々宮先輩の熱くねっとりとした舌が咥内へと挿し入れられていた。

 咥内を探るようにゆっくりと歯列をなぞられたあと、口蓋をチロチロと擽られているうち、しだいと身体からは力が抜けてゆく。

 くたりとした私の身体に、野々宮先輩のしなやかな腕がふんわりと包み込むようにしてしっかりと巻き付けられる。

 あたかももう何があっても離したりしないというように。

 いつしかベッドに隣りあって座っていた私は、野々宮先輩の広くて厚い胸板に抱き寄せられ、自然に寄りかかるようにしなだれかかっていた。

 野々宮先輩の腕の中、甘やかなキスに酔いしれていると、先輩の大きな掌に胸の膨らみを衣類の上から持ち上げるようにして包み込まれていて、無性に恥ずかしさを覚える。

 思わず、『ヤダ。恥ずかしい』なんて口走っていた。

 夢の中とは言え、ここへ召喚された際に、『貧乳』を理由に追放されたことが脳裏を過ったのだ。

 先輩にも、胸が小さくてガッカリされるんじゃないかと、不安だった。

 するとさっきまで優しい微笑を湛えていたはずの先輩の身体が瞬時に強ばり、顔からサッと笑みが失せ、なぜか悲しげな声音で問い掛けられる。

『……ただ恥ずかしいだけ? それとも本当は、僕に触れられるのが嫌?』

 先輩が思い違いをしているのに気づいた私は、うっかり吐露してしまう。

『ち、違います。小さいからガッカリされるんじゃないかって思っただけで、嫌なわけじゃありません』

 言った直後、そのことに気づいた時には、ホッと安堵した先輩の声が耳に届いて。

『なるほどね。けど、安心して。僕はそんこと気にしない。ノゾミはノゾミでしょう? 僕はノゾミの姿がどう変わろうともノゾミのことが好きだよ。永遠にね。神に誓ってもいい』

 その言葉が胸にジーンと染み渡る。

 胸を包み込んでいる先輩の手からも、あたたかなぬくもりと一緒に、先輩の想いが伝わってくるようだった。

『……なんだか、夢みたい』

 夢見心地でぽーっとしたまま先輩のことを見つめていると、思わず零してしまった私の呟きに。

『夢じゃないってことを今から教えてあげる。だから、ノゾミ、僕にすべてを委ねて』

 そういって甘やかな囁きを落とした先輩は、私が素直に頷くのを見届けてから、再びキスを降らせてくれた。

 そうしてキスを交わしながらベッドに優しく組み敷かれていた私は、身に纏っていたものを素早く剥ぎ取られ、生まれたままの姿を晒していて。

『ノゾミ、とっても綺麗だよ。胸もとっても愛らしくて堪らない』

 そこに先輩の甘やかな声音が降らされたことで、羞恥に襲われた私が両腕で身体を抱えて隠そうとするのを、やんわりと片手で制され、頭上で腕を一纏めにされて。

『ノゾミ、隠さないで。僕に全部見せて。お願い』

 言いようのない羞恥に襲われて慄いているところに、再び先輩の甘やかな声音で強請られてしまえば、途端に胸をときめかせ、夢心地で瞳を閉じ先輩に何もかもを委ねていた。

 そうして優しくも甘やかで丁寧な愛撫がなされるのだった。

    
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