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鳥籠から出るために
鳥籠から出るために⑬
しおりを挟む不浄でしかない場所。しかも入浴前だというのに、躊躇なく、舌なめずりした尊が口づけようとしている。
なんとも信じられない光景だ。
ーーえっ!? 嘘。そんなところに!?
驚愕した美桜は、見るに堪えなくなって、思わず瞼をギュッと閉ざしてしまう。
そこへ、内股にチュッというリップ音を響かせた尊が口づけを落とす感触が伝わってくる。
次の瞬間には、肌の表面をきつく吸い上げられ、チクリとした微かな痛みを覚えた。
その感触に驚き、目を見開いた先には、上目遣いに美桜のことを強い眼差しで射貫くようにして見据えている尊の姿が待ち受けており。
あたかも百獣の王が仕留めた獲物を捕らえたことに、歓喜してでもいるかのような、危うさと獰猛さを孕んでいるように見えてしまう。
その様を捉えた刹那、ゾクゾクッと身体に戦慄が駆け巡った。
同時に、沈めただけで微動だにしない、尊の長い指を受け入れたままの蜜洞がキュンと疼く。あたかも自身の体内に指を取り込むかのようにきつく食い締める。
ーー尊さんの指でぐちゃぐちゃにして欲しい。
そういって心が身体に訴えかけてくるかのよう。そしてその先の期待感に身体が反応し打ち震える。
とんでもなくはしたないことを望んでしまっている自分が、酷く厭らしく、淫奔な気がして、どうしようもなく恥ずかしい。
それらを尊は、全てお見通しだとでも言うように、意地の悪い言葉で攻め立ててくる。
「なにを期待してたんだ? それとも、もう指だけじゃ物足りないのか? いや、どっちもか?」
「////ーーッ!? ち、違いますッ!」
図星をつかれてしまった美桜は、ボンと音がしそうなほど全身を紅潮させて、叫ぶように反論を返すのがやっとだった。
けれどそれでは、正解だと答えているも同然だ。
案の定、美桜のあからさまな態度に、やっぱりかと確信したかの如く、ふっと不敵な微笑を零した尊が相好を崩した。
恐ろしく整った相貌に、これ以上にないくらい妖艶な色香を滲ませ、ニヤリと口端を吊り上げて嗤う様は、この世の者とは思えぬほどに美しく、途轍もなく冷淡にも見える。
尊の姿に魅入られたように惹きつけられてしまう。美桜は呆然としたまま身動ぎさえもできずにいる。
鼓動はさっきよりも速い速度でドクドクと高鳴りはじめる。
そんな美桜の内股を味見でもするかのように、紅く熱い舌でペロリと舐めあげる。
その直後、尊からゾクゾクするような艶を孕んだ重低音が放たれた。
「初心なお嬢様は、素直な身体とは違って、意外と反抗的なんだな。泣かせるつもりなどなかったが。メチャクチャに抱いて散々啼かして、どうなるか見てみたくなるな」
それがとても意味深な言葉だったせいか。
どこか危うげな酷薄な微笑を湛えて美桜のことを見据える尊の漆黒の瞳に、妖しい光が宿ったような気がした。
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