偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました

羽村 美海

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まさかのハピエン!?


「……す、秀、苦しい」
「あっ、悪い。ずっと好きだった恋に、念願叶ってやっと気持ち伝えられて、好きだって言ってもらえて。感極まって、つい」

 ーー『念願叶って』って、そんな大袈裟な。

 そう思いながらも、心底嬉しそうに、瞳をキラキラさせて少年のような無邪気な笑顔を綻ばせる秀の姿に、恋の身も心も惹きつけられる。

 さっきから頬は緩んだままだし、胸はキュンキュン鳴りっぱなしだ。

 今この瞬間を目に焼き付けておきたくて、秀を見つめたままでいた。

 不意に会話が途切れて、何だかくすぐったいような、照れくさいような気持ちになってくる。

 そんなタイミングで、秀が何かを思い出したようにハッとした表情になった。

 かと思えば、すぐ近くに置いてあったブーケを手にした秀がふたりの間にそれを掲げてくる。

 そうしてその中から小さなベルベット地のジュエリーケースを取り出し開くと、煌めくダイアモンドの粒がいくつも鏤められた上品なシルバーリングが姿を現す。

 目にした瞬間、恋の胸はドクンと脈打った。

 ーーうわー凄い。なんだか夢みたい。

 感動しきりの恋の思考に、秀のやけに不安そうな声が割り込んでくる。

「恋、受け取ってほしい」

 たった今、想いを伝えたばかりだというのに、どこかまだ信じ切れていないような、自信なさげな素振りを見せる秀への愛おしさが込み上げる。

 普段の秀は俺様口調で強引だし、自信たっぷりで、世界は自分のために回ってるなんて思ってそうなのに。そんな秀が、捨てられたワンコのように漆黒の双眸をうるうるさせて、縋るような眼差しで恋の様子を窺ってくる。

 ーーこんなにも私のことを想ってくれてるんだ。ど、どうしよう。メチャクチャ嬉しい。

 秀への愛おしさと嬉しさで、もう、胸がいっぱいだ。

 胸に納まりきらない想いが涙と一緒に溢れ出す。一度決壊してしまったらタガが外れてしまったかのように止まらない。

 すっかり感情が昂ってしまった恋は、涙が邪魔をして声を紡ぎ出すことができそうもない。ポロポロと涙を零しながらコクコクと何度も頷くことで応えるのが精一杯だ。

「ありがとう、恋」

 秀は、今度こそ心底安堵したように表情を緩ませると、恋の身体を愛おしそうに抱き寄せ、喜びを噛みしめるようにしばらくの間しっかりと包み込んだままでいてくれた。

 あたかも大切な宝物でも扱うようにーー。

 やがて涙が落ち着いた頃、恋の左手の薬指にそっと口づけた秀に指輪を嵌めてもらってからも、どうにも離れがたくて、ふたりは寄り添い合ったままでいた。

 夢のような幸せなひとときだったものだから、指輪の感触と重みとを感じながらも、これは夢なんじゃないかと心配になるほどだったが。

 これは夢じゃなく現実なんだと恋に言い聞かせるかのように、頭頂部やこめかみ、額に頬にというように、秀は絶えず甘やかなキスを降らせ続けてくれていた。

 そんな夢のようなひとときを経て、遊園地を後にした恋は、秀が事前に予約してくれていた、高級ホテルの高層階にあるスイートルームへと赴いている。

 仮住まいのホテルもそうだが、秀とこういう関係にでもならなければ、一般庶民の恋には一生無縁の場所だっただろう。

 夢のようなプロポーズからの非現実な空間に、なんだか夢の世界にでも迷い込んでしまったかのよう。

 ベージュを基調とした壁には、美術館にでもありそうな絵画まである。

 迎賓館のような豪奢な部屋に一歩脚を踏み入れるなり、恋は圧倒されてポカンと立ち尽くしていた。

 棒立ちの恋は秀に背後から抱きしめられると同時。口端をゆるりと吊り上げた秀から、一緒にお風呂に行くかと意地悪な提案をされ真っ赤にされたが、結局は冗談だと言った秀に促されるままに入浴を先に済ませた。

 恋は肌触りのいい上質なバスローブに身を包み、ラグジュアリー感満載なリビングルームで、アンティーク調のソファの隅にちょこんと座り、緊張の面持ちで、入浴中の秀のことを待っているところだ。

 秀は無理しなくてもいいと言ってくれてはいたが、恋自身、秀と想いが通じ合ったのだから、もっと深い絆で結ばれたいという想いがある。

 秀とならきっと大丈夫。恋は心の中で、呪文のように繰り返しそう唱えていた。

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