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執着系俺様ワンコの愛は深くて重い
④
白衣を着た男性と不機嫌そうな顔をした綺麗な顔立ちの少年と、傍らには幼い自分の姿がある。
おそらく秀の父親と秀だろう。父親が恋に話しかけると秀は面白くなさそうだ。
そこに男性が駆け寄ってきて、手には刃物のようなものを持っている。それを見た恋が秀の元に駆け寄った瞬間、その男に気づいた秀が恋に覆い被さる場面が映し出され、恋は両手で頭を抱え叫び声を放っていた。
「いやぁあああッ!」
気づけば足元は崩れたように陥没していて、そのまま底なしの暗闇の中に落ちていく錯覚に囚われる。
このままどこまでも落ちていくのだろうかと頭の片隅で思考していると、ぎゅうっと強い力で包み込まれた。
遠い意識の片隅で秀が恋の名を必死に何度も呼んでいる声が聞こえてくる。
その声が段々大きくなって、恋の意識を繋ぎとめる。その声に導かれるようにして目を見開いた先には、この世の終わりみたいな顔をして必死に恋の身体を揺すっている秀の姿があった。
「恋、ごめん。俺のせいで嫌な記憶思いださせて、本当にごめん」
「す、秀、苦しいよ。もう大丈夫だから」
正気を取り戻した恋の様子に気づかず、泣きそうな声で謝り続ける秀に、恋が声をかけると、秀が驚いたようにガバッと顔を上げて恋の顔を覗き込んでくる。
「……ほ、本当に、大丈夫なのか?」
まだ信じ切れないでいるようだ。
「うん、秀がいてくれたら大丈夫みたい」
恋がニッコリと微笑んでみせると、秀は今度こそ心底安堵したように息を吐き、「よかった」と声を震わせる。
おそらく自衛本能だろうと思うが、長年心の奥底に封印していた記憶と一緒にあの頃の淡い恋心を思い出した恋は、そのことを秀に伝えるために声を紡ぎ出した。
「私こそ、ごめんね。今の今まで忘れてて。あのとき、秀がお母さんみたいにいなくなっちゃうって思ったの。だって大人になったらお医者さんになった秀のお嫁さんになりたいって夢見てたから。だから秀のお嫁さんになるのすっごく嬉しい。あっ、でも予定の時間過ぎちゃってるね。ごめんね」
「貸し切りなんだし、そんなのどうとでもなる。それより、こんなときに、そんな可愛いこと言うなんて、反則だろ。俺がどれほど我慢してきたと思ってるんだ。今の俺があるのは恋のおかげだ。恋と出会ってなかったら医者になんてなってなかった。それくらい俺は、恋のことを愛してるんだぞ。もう一生離さないからな。一生俺だけのものだ」
恋が秀に贈った愛の言葉は、何百倍、何万倍にもなって秀から贈りかえされる。
そんなやり取りを幾度も繰り広げ最後には、どちらからともなく甘やかな口づけを交わしていて。夢心地で甘やかなキスに酔い痴れながら、恋は初恋相手である秀と心から結ばれた喜びを噛みしめた。
秀の言葉通り、式場は貸し切り状態だったので、涙で崩れてしまっていたメイクも元より綺麗に直してもらって、心の底から晴れやかな気持ちで挙式に臨むことができ、親族に見守られる中、秀と恋は神様の前で永遠の愛を誓い合うことができたのだった。
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