偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました

羽村 美海

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執着系俺様ワンコの愛は深くて重い


 紆余曲折を経て挙式を終えた恋は秀にお姫様のようにエスコートされて、海辺のリゾートホテルのスイートルームへと脚を踏み入れたところだ。

 その間に、ホテルの最上階にある異国情緒たっぷりの素敵なレストランで早めのディナーを堪能したが、この後のことを考えると緊張して、悠長に味わっている余裕などなかったけれど。

 これから秀のものになれるのだと思うと嬉しくて、胸がいっぱいだったというのもある。

 それは秀も同じだったようで、部屋に入るなり胸にふわりと抱き寄せられた。

「恋と結婚したなんて夢みたいだ」

 嬉しそうに声を震わせる秀の言葉と、シトラスの爽やかな香りとが恋の鼻腔と心を擽ってくる。

 秀に顔を覗き込むように熱い眼差しで見つめられただけでとろんと蕩けてしまいそうだ。

「秀に夢じゃないって証明してほしい」

 そのせいか恥ずかしげもなく、とろんとした眼差しで秀を見上げつつ恋はそんなことを口にしていた。

 秀は恋の願いを受け止めるように、ふっと微笑んでくれる。

 恋は嬉しくて知らず笑みを浮かべ秀を見つめ返した。

 ふたりの視線が絡まり磁石が引き合うように互いの柔らかな唇がゆっくりと重なり合う。

 恋の唇の感触を味わうようにして、そうっと優しく触れあうだけだった口づけがしだいに深まってゆく。

 息継ぎで微かに揺るんだ恋の唇のあわいから秀のねっとりとした熱い舌が差し入れられる。

「っ……んぅ、あっ……ふ、ぅ」

 熱くざらついた舌で探るように歯列をなぞり、口蓋をチロチロと擽られているうち、咥内はすっかり蹂躙され、いつしか恋の身体からはくたりと力が抜けていた。

 今にも膝からふにゃふにゃと頽れてしまいそうだ。

 甘美なキスに酔い痴れながらそんなことを案じていた恋の腰は、秀の逞しい腕により、掬うように抱き寄せられた。

 もう秀の支えなしでは立っていることもままならない。

 秀にすべてを委ねしなだれかかると、秀のもう片方の手が恋のなだらかな身体の曲線をなぞるようにして彷徨いはじめる。

 それだけで奥底に眠っていた雌の本能が呼び起こされ官能を高められてゆく。 
 キスの合間に、恋の甘ったるい吐息と媚びるような艶めかしい声音とが重なり合ったふたりの唇のあわいからまろび出る。

「あっ、ふぅ……んっ、んぅ」

 それらに呼応するように身体は熱せられ下腹部の奥がキュンと切ない音を奏でる。

 恋の背中が壁に到達すると同時、余裕なさげな秀に、「ベッドに行くぞ」と耳元で囁かれコクンと頷くと、お姫様のように横抱きにされて寝室のキングサイズのベッドまで運ばれた。

 そうしていよいよというとき、いつものようにゴロンと横向きにされ背後から抱き枕の如くぎゅうっと抱き竦められ、耳元に顔を埋めると、甘やかな声音で囁いてくる。

「恋、俺はこうして恋と一緒にいられたらそれだけで充分だから、無理はしないでほしい」

 密着したところから秀の優しさがじんわりと伝わってくる。秀の滾るように熱くなった昂りも一緒に。

 もう抑えることなんてできそうもないと思うのに、それだけ自分のことを大事にしたいと思ってくれていることに、なんとも堪らない気持ちになってくる。

 そのせいか、緊張のせいで強張っていた恋の身体がやんわりと解れていく。

 あの夜は、酔ったせいだと思っていたけれど、そうではなかったのだと今ならわかる。

 秀だから平気だったのだ。

 翌朝のキスのときは、慣れないキスで呼吸の仕方もわからず苦しかったせいで、このまま死んでしまうのかという不安から、子供のころに体験した恐怖心が呼び起こされただけで、秀のことが怖かった訳じゃない。

 その証拠に、蕁麻疹は出なかったし、秀の治療と称したスキンシップのおかげもあって、男性恐怖症の症状も一度も発症していない。

 それだって、いつも恋のことを傍でさりげなく気遣ってくれていた秀のおかげだ。

 そうとは気づきながらも、偽りの関係でしかないのだからと、秀への想いを封印し気づかないフリを決め込んできた。

 近頃ではそれが自分では抑えきれないほどに膨れ上がっていたのだ。

 それもこれも、遠い記憶に蓋をしていてもなお、秀のことを好きだという想いがずっとあったからに違いない。

 恋の本能が無意識に秀のことを求めていたのだ。絶対に大丈夫なはずだーー。

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