21 / 161
第20話 そんなに見られると、ちょっと恥ずかしいわ……
しおりを挟む三人は足早に予約していた店へと向かっていた。通りを進むにつれて、行き交う人々の衣服が次第に豪華なものへと変わっていく。
「ふぅ、間に合ったわね」
アウリンが息を整えながら呟いた。
目的の店は、冒険者たちが集う賑やかな酒場とは一線を画していた。高級感あふれる内装、大理石の床に磨き上げられた木製のテーブル、深紅のベルベットが張られた椅子——まさに格式高いレストランといった雰囲気だった。
「お客様、武器のほうをお預かりいたします」
恭しく頭を下げる店員に、ユークはちらりとアウリンを見る。
「大丈夫よ」
アウリンはこくりと頷き、迷いなく自分の杖を店員に渡した。それに倣ってユークとセリスも、それぞれの武器を預ける。
「こちらへどうぞ」
店員の案内に従ってテーブルへ向かうと、そこにはすでに一人の少女が座っていた。背が高く、洗練された雰囲気を纏う美しい少女だった。
その少女は、こちらに気づくと表情を輝かせた。
「アウリン! こっちよ!」
「ごめん! ちょっと遅れちゃったわね」
アウリンは少し申し訳なさそうに両手を合わせる。
「気にしなくていいわ。それより……そちらのお二人が、ユークくんとセリスちゃんね?」
彼女は頬に手を添え、好奇心を湛えた瞳でユークたちを覗き込んだ。
「う、うん。俺がユークで、この子がセリスだ…です。」
ユークが少し緊張しながら自己紹介し、隣に立つセリスを軽く手で示す。セリスはぺこりと小さく頭を下げた。
「まずは座りましょうか」
アウリンが促し、全員が席についた。配置は、アウリンとヴィヴィアンが並び、ユークとセリスが向かいに座る形になった。
「はじめまして。私はヴィヴィアンって言うの。よろしくね~」
ヴィヴィアンはおっとりとした表情で微笑んだ。
ピンク色の上品な巻き髪に、華やかな黄色いワンピース。すらりとした長身に、穏やかで優しげな表情——まるで絵本から抜け出したお姫様のような佇まいだった。
「わぁ……」
思わずセリスが感嘆の声を漏らす。
「すごい……お姫様みたい」
ぽつりと呟いたセリスに、ヴィヴィアンは一瞬目を丸くした後——
「ブフッ……っ! 失礼!」
思わず噴き出し、口元を押さえながら謝罪した。視線が自然とアウリンへ向かう。
「……なによ?」
その様子に気づいたアウリンが、不機嫌そうにヴィヴィアンを睨む。
「ふふっ、ごめんなさい。そんなに睨まないで?」
ヴィヴィアンは微笑みながら、手を口元に添えた。
「それより、まずはお礼を言わせてね。アウリンちゃんから聞いているわ。私の治療費を出してくれたこと、本当に感謝してるの」
ヴィヴィアンは深々と頭を下げた。
「や、やめてくれよ! これから仲間になるんだし、そんなの当然じゃないか!」
ユークが慌てて頭を上げるよう促し、セリスも大きく頷く。
「ふふっ、アウリンちゃんの話どおりね。本当にいい人たち」
ヴィヴィアンは柔らかく微笑んだ。
「でも、本当にいいのか? こんな高そうな店……」
周囲を見回しながら、ユークが遠慮がちに尋ねる。
「気にしなくていいわ。あなたたちのおかげでお金の心配はないし、これは私からの感謝の気持ちよ」
アウリンが落ち着いた様子で答える。
「じゃあ、始めましょうか」
アウリンがテーブルのベルを鳴らすと、程なくして豪華な料理が次々と運ばれてきた。
「うわあああ……!」
セリスが目を輝かせ、感嘆の声を上げた。
テーブルの上には、見たこともないほど豪華な料理がずらりと並んでいる。
香ばしく焼かれた肉に、濃厚なソースがかけられた一皿。
湯気の立つスープは、食欲をそそる香りを放ち、ふわふわのパンが籠に山盛りにされている。
ユークも思わず息を飲んだ。こんなに手の込んだ料理を目の前にするのは初めてだった。
四人は賑やかに談笑しながら食事を楽しんだ。料理の美味しさに舌鼓を打ち、尽きることのない会話に笑い合う。楽しい時間はあっという間に過ぎていった——。
食事を終え、店を後にした四人は、それぞれの宿へと戻っていった。
ユークとセリスは、馴染みの宿「黄金の葡萄亭」に戻ってきたが、興奮はまだ冷めやらなかった。
「さっきの料理、本当に美味しかったな」
ユークが満足げに呟く。
「うん! 特にあの肉のソース、絶妙だったよね!」
セリスも興奮気味に語る。思い出すだけで、あの味の余韻が蘇る気がした。話し始めると止まらず、二人はしばらく感想を語り合っていた。
しかし、夕食の時間になり、目の前のテーブルに並べられた料理を見たとき、その熱がすっと引いていくのを感じた。
「……あれ? ここの料理って、こんな味だったっけ?」
ユークがスプーンを止め、不思議そうに呟く。
「……なんか、味が薄い」
セリスもまた、パンを口に運びながら首を傾げた。決して不味いわけではない。むしろ、これまでは普通に美味しいと感じていたはずだ。
「うーん、味覚が戻るまで時間がかかりそう……」
二人は、ほんの数時間前の贅沢な食事を思い出しながら、静かに夕食を続けるのだった。
翌日——
ユークとセリスは、《賢者の塔》近くの広場で待ち合わせをしていた。
周囲がざわめき始める。
「……なんだ?」
ユークは違和感を覚え、騒ぎの方向へと視線を向けた。すると——思わず息を呑んだ。
やけに美しく装飾された盾を持つ全身鎧をまとった騎士が、まっすぐこちらへ歩いてくるではないか。
全身を覆う甲冑に、威厳すら感じさせる佇まい。周囲の探索者たちも次々と道を開け、その姿を驚きの目で見つめている。
(やばい……何かやらかしたか?)
ユークは反射的に身構える。騎士は足を止め、ユークたちの目の前に立った。
緊張が走る。
すると——
「ごめんっ! 待たせたわね!」
鎧の後ろからひょっこりとアウリンが姿を現した。
「アウリン!?」
ユークとセリスが驚いた声を上げる。
「え? じゃあこっちは……?」
ユークは鎧の騎士を見上げた。
その瞬間——バイザーがゆっくりと上げられる。現れたのは、昨日見たばかりの顔だった。
「私よ~」
「ヴィヴィアン!?」
ユークとセリスの声が重なる。
「だから言ったでしょ? 前衛に覚えがあるって」
アウリンがいたずらっぽくウインクする。
(ジョブが騎士だっていうのは聞いてたけどさ……)
ユークは心の中で呟いた。たしかに彼女が剣と盾を扱えるとは聞いていたが、まさかここまで本格的な装備を整えているとは思わなかった。
「これじゃ本物の騎士じゃないか……」
半ば冗談のつもりで口にしたが、目の前のヴィヴィアンはまさに"騎士そのもの"だった。重厚な鎧に包まれた彼女の姿は、いつもの柔らかな雰囲気とは違い、堂々とした風格を漂わせている。
そして、その圧倒的な存在感に気づいたのはユークたちだけではなかった。鎧姿のヴィヴィアンの登場に、周囲の視線が一気に集中する。探索者たちで賑わう《賢者の塔》前の広場で、ユークたちは否応なしに目立っていた。
人々のざわめきが広場を包む中、ヴィヴィアンは変わらぬ穏やかな口調で微笑んだ。
「えっと……そんなに見られると、ちょっと恥ずかしいわ……」
◆◆◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ユーク(LV.14)
性別:男
ジョブ:強化術士
スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)
備考:騎士に憧れない男はいない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
セリス(LV.14)
性別:女
ジョブ:槍術士
スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)
備考:動きにくそうとしか思っていない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
アウリン(LV.15)
性別:女
ジョブ:炎術士
スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)
備考:嘘は言ってない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ヴィヴィアン(LV.15)
性別:女
ジョブ:騎士
スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)
備考:さすがに伝えてると思ってた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
83
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい
黒城白爵
ファンタジー
ーーある日、平穏な世界は終わった。
そうとしか表現できないほどに世界にモンスターという異物が溢れ返り、平穏かつ醜い世界は崩壊した。
そんな世界を自称凡人な男がマイペースに生きる、これはそんな話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる