35 / 161
第33話 燃える獣
しおりを挟む
縛られ、地面に座らされていたチンピラの男が、突如として体を震わせ始めた。
まるで発作のような痙攣する男。
次の瞬間――男の体から、生々しい実感を伴って鋭利な爪が突き出す。
それは人の爪ではない。猛獣のものとしか形容しようのない、異様な凶器。
「なっ……!?」
驚愕に目を見開いたのは、すぐ近くにいたジェットだった。
だが彼が次の動きを取るよりも先に、その爪が彼の腹部を容易く貫いていた。
「ジェットさん!!」
ユークの悲鳴が住宅街に響き渡る。
だが、事態はそれで終わらなかった。
男の肉体が、急速に――いや、不気味なほど滑らかに変異していく。
筋肉は膨れ上がり、骨格が軋みながら変形し、毛皮が肌を覆い尽くす。
地面が震えるほどの質量を得たその姿は、もはや人とは呼べなかった。
全長は優に七メートルを超え、赤黒い毛並みが風に揺れる。
腕ほどもある前脚、鋭く輝く牙、そして――空気さえも振動させるような咆哮が、夜の住宅街を引き裂いた。
「な、なに……あれ……?」
セリスが槍を構えたまま、身体を硬直させる。
金色の髪が風に揺れ、その瞳が怪物を見据える。
「モンスター……? でも、こんなのあり得ないわ……!」
アウリンが声を震わせながら呟いた。いつも快活な彼女の瞳が、驚愕に染まっていた。
そのとき、鋭い声が割って入る。
「全員、下がれ! あれは……“ブレイズベア”だッ!!」
叫んだのは、アズリアだった。
「ブレ……何だって……?」
ユークが思わず聞き返す。
「ブレイズベア! 別のダンジョンの、二十階層に出るクラスのモンスターだ! 今のお前たちじゃ相手にならない! 逃げろ!!」
アズリアはそう叫ぶと、すかさず剣を抜き放ち、怪物に向かって駆け出す。
その動きに呼応するように、部下の槍使い――トルマも横から走り出した。
二人の熟練の戦士が、左右から同時に急所を狙う――だが。
「ッ……!? 止まった……!?」
アズリアの剣が、ブレイズベアの毛皮の表面でまるで岩のように弾かれた。
トルマの槍も、寸分違わず同じ結果に終わる。
「なっ、効いてない……!?」
怪物が腕を大きく振るう。
その一撃で、アズリアの身体が宙に舞い、回避もできぬまま地面へと叩きつけられた。
「アズリアさん!」
ユークが駆け寄る。アズリアは頭を打ったのか、ふらつく体でなんとか立ち上がろうとするも、膝が力を失い、再び崩れ落ちた。
「立たな……ければ……っ……うぐっ……!」
その隙に、トルマがブレイズベアに追い詰められていた。
こちらの攻撃がまともに通じない相手に、防御する事すらままならず、一方的に痛めつけられていく。
「や、やめろ! 来るな……来るなあああああ!!」
追い詰められ、恐怖に叫ぶトルマ。
次の瞬間、彼の体が吹き飛ばされた。
血飛沫が舞い上がり、地面に槍が突き刺さる。
「トルマ!!」
アズリアの顔に、絶望の色が広がった。
倒れたトルマから流れ出た血が、地面に赤く染みを広げていく。
満身創痍のアズリアは、それでも必死に立ち上がろうとするが――ブレイズベアは周囲にいる縛られたチンピラで食事をし始める。
ここは住宅街。このまま放置すれば、一般市民の被害は避けられないだろう。
ユークは、ぽつりと呟いた。
「……このモンスター、≪賢者の塔≫と同じ……?」
「ありえない! このモンスターは、≪塔≫にはいないの!! 間違いないわ!」
アウリンが声を張り上げる。
だが、ユークは前を向いて叫んだ。
「やってみなきゃわからないだろ! ≪リーンフォース≫!」
彼の足元から淡く青白い魔法陣が広がっていく。光の波紋が地面を這い、仲間たちに力を与える。
「セリス!」
「うんっ!」
名を呼ぶだけで、意図が伝わる。セリスはすぐさま駆け出し、地面に突き刺さったトルマの槍を引き抜いた。
「はあああああっ!!」
全力の投擲――鋭く放たれた槍が、ブレイズベアの肩口に深く突き刺さる。
「ゴアアアアア!?」
怪物が苦悶の声を上げた。
「なっ……!? 効いてる……!」
アウリンが思わず息を呑む。
彼女の中の常識では、あり得ない出来事だった。
「ヴィヴィアン!」
「任せて~♪」
ユークの一声に応じて、ヴィヴィアンがセリスのもとへと駆け寄る。
セリスに傷を負わされたブレイズベアが、明確に敵意を向けて突進してきた。
だが――
「くっ……重っ……!」
ヴィヴィアンが盾を構え、正面から受け止めた。
そのまま後ろへ吹き飛ばされるが、セリスを守り抜く。
「アウリン! 一番強い魔法を準備して!」
走りながらユークは指示を出し、自身も魔法を放つ。
「≪アイスボルト≫!」
氷の矢がブレイズベアに炸裂し、わずかながらその動きを止める。ユークはヴィヴィアンの背後へと回り込んだ。
完全にユークたちを敵と認識したブレイズベアの巨体が、咆哮を上げて突進する。
土煙を巻き上げながら走るその姿は、まるで災厄そのものだった。
「来るぞッ!」
ユークが叫ぶと同時に、セリスが再び槍を構える。
その目には確かに覚悟が宿っていた。
「ユークのスキルがある。だから……行ける!」
セリスは跳躍した。鍛え抜かれた脚力で空を裂くように飛び、槍を突き出す。
「ええいっ!!」
だが、ブレイズベアは腕を振り上げ、槍を叩き落とすように迎撃した。
激しい金属音とともに、セリスの体が空中で回転し、地面に叩きつけられる。
「ぐっ……!」
セリスの体が痛みに軋む。それでも、彼女は槍を手放さなかった。
「セリス、大丈夫か!?」
ユークがセリスを心配し、声を掛けた瞬間、ブレイズベアの巨腕が振るわれた。
「させないわよっ!」
ヴィヴィアンが割り込むように前に出た。盾を構え、その全身で攻撃を受け止める。
衝撃が走る。ヴィヴィアンの足元が割れ、地面にひびが入った。
「っく……! 力が、桁違いだわ!」
盾越しに感じる殺意と質量。だが、それでも彼女は後退しなかった。
「≪アイスボルト≫!」
ユークの魔法がブレイズベアの目に直撃しまぶたを凍り付かせる。
「ゴアアアアアアアア!!」
咆哮を上げ、苦悶に暴れまわるブレイズベア。その隙に、仲間たちがユークの元へ集まる。
ユークはちらりと横目で詠唱を続けるアウリンを見る。
「魔法は……まだダメみたいだな」
チラリと詠唱を行っているアウリンを見るとユークが呟く。
「二人とも、まだやれる?」
状況を冷静に見極めながらも、彼は仲間たちに声をかける。
「大丈夫!」
「まっかせて~!」
二人とも傷つき、息を荒げながらも笑顔で返事を返す。
怒り狂ったブレイズベアの攻撃を何とか対処し続けるユークたち。
ブレイズベアの嵐のような連撃を避け、避けられない一撃は盾で受けて、わずかな隙をついて反撃を放つ。
だが——
「きゃあああああっ!」
初めに脱落したのはヴィヴィアンだった。全身を覆う鎧が動きを鈍らせ、回避が遅れた彼女は、ブレイズベアの一撃をまともに受けてしまう。
「ヴィヴィアンっ!」
ユークが叫ぶが、一人減ったことで攻撃の密度は上昇しさらに苛烈になる。
「ユーク! 危ない!」
セリスが彼を庇うように飛び込んだ。だが、彼女もまた一撃を受け、遠くへ吹き飛ばされる。
「っ!」
叫ぶ余裕すらなくなる。それでもユークは、ひとりブレイズベアの攻撃をかわし続けた。
だが、足元が壁に当たる——これ以上は逃げ場がなかった。
追い詰められた、かに見えたその瞬間。
「《フラッシュボルト》」
閃光が、ブレイズベアの顔を襲った。ユークの改良した魔法が炸裂し、獣の視界を焼く。
「ッッッ!?」
混乱する咆哮が響く。ブレイズベアが目を押さえ、暴れまわる。
ユークは攻撃を避けながらも詠唱を続けていた。
あらかじめ壁際に『フラッシュボルト』の魔法陣を仕込んでおいたのだ。
そう——ユークは追い詰められていたのではなく、壁際に誘導されていたのはブレイズベアの方だった。
「《ストーンウォール》!」
詠唱を終えて石の壁が突如として出現し、ユークとブレイズベアの間を分かつ。息を整える暇もなく、彼は叫んだ。
「今だ、アウリン!!」
「——《プロミネンス・ジャベリン》!!」
灼熱の槍が空を裂く。詠唱を終えたアウリンの魔法が放たれ、直撃したそれはブレイズベアの体を灼熱に包み込んだ。
「ガアアアアアアアアッ!!」
苦悶の咆哮が天を突く。その体を炎が喰らい尽くさんと燃え広がっていく。
やがて、ブレイズベアは炎の中に沈み、その姿が見えなくなった。
◆◆◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ユーク(LV.18)
性別:男
ジョブ:強化術士
スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)
備考:割と動ける方の後衛職。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
セリス(LV.18)
性別:女
ジョブ:槍術士
スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)
備考:まだ槍を手放してはいない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
アウリン(LV.18)
性別:女
ジョブ:炎術士
スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)
備考:今使える最強の魔法。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ヴィヴィアン(LV.18)
性別:女
ジョブ:騎士
スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)
備考:鎧が大きくへこんでしまった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
アズリア(LV.30)
性別:女
ジョブ:剣士
スキル:剣の才(剣の才能をわずかに向上させる)
備考:重症。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ジェット(LV.28)
性別:男
ジョブ:双剣士
スキル:双剣の才(双剣の基本技術を習得し、双剣の才能をわずかに向上させる)
備考:生死不明。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
トルマ(LV.26)
性別:男
ジョブ:剣士
スキル:剣の才(剣の基本技術を習得し、剣の才能を向上させる)
備考:生死不明。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
まるで発作のような痙攣する男。
次の瞬間――男の体から、生々しい実感を伴って鋭利な爪が突き出す。
それは人の爪ではない。猛獣のものとしか形容しようのない、異様な凶器。
「なっ……!?」
驚愕に目を見開いたのは、すぐ近くにいたジェットだった。
だが彼が次の動きを取るよりも先に、その爪が彼の腹部を容易く貫いていた。
「ジェットさん!!」
ユークの悲鳴が住宅街に響き渡る。
だが、事態はそれで終わらなかった。
男の肉体が、急速に――いや、不気味なほど滑らかに変異していく。
筋肉は膨れ上がり、骨格が軋みながら変形し、毛皮が肌を覆い尽くす。
地面が震えるほどの質量を得たその姿は、もはや人とは呼べなかった。
全長は優に七メートルを超え、赤黒い毛並みが風に揺れる。
腕ほどもある前脚、鋭く輝く牙、そして――空気さえも振動させるような咆哮が、夜の住宅街を引き裂いた。
「な、なに……あれ……?」
セリスが槍を構えたまま、身体を硬直させる。
金色の髪が風に揺れ、その瞳が怪物を見据える。
「モンスター……? でも、こんなのあり得ないわ……!」
アウリンが声を震わせながら呟いた。いつも快活な彼女の瞳が、驚愕に染まっていた。
そのとき、鋭い声が割って入る。
「全員、下がれ! あれは……“ブレイズベア”だッ!!」
叫んだのは、アズリアだった。
「ブレ……何だって……?」
ユークが思わず聞き返す。
「ブレイズベア! 別のダンジョンの、二十階層に出るクラスのモンスターだ! 今のお前たちじゃ相手にならない! 逃げろ!!」
アズリアはそう叫ぶと、すかさず剣を抜き放ち、怪物に向かって駆け出す。
その動きに呼応するように、部下の槍使い――トルマも横から走り出した。
二人の熟練の戦士が、左右から同時に急所を狙う――だが。
「ッ……!? 止まった……!?」
アズリアの剣が、ブレイズベアの毛皮の表面でまるで岩のように弾かれた。
トルマの槍も、寸分違わず同じ結果に終わる。
「なっ、効いてない……!?」
怪物が腕を大きく振るう。
その一撃で、アズリアの身体が宙に舞い、回避もできぬまま地面へと叩きつけられた。
「アズリアさん!」
ユークが駆け寄る。アズリアは頭を打ったのか、ふらつく体でなんとか立ち上がろうとするも、膝が力を失い、再び崩れ落ちた。
「立たな……ければ……っ……うぐっ……!」
その隙に、トルマがブレイズベアに追い詰められていた。
こちらの攻撃がまともに通じない相手に、防御する事すらままならず、一方的に痛めつけられていく。
「や、やめろ! 来るな……来るなあああああ!!」
追い詰められ、恐怖に叫ぶトルマ。
次の瞬間、彼の体が吹き飛ばされた。
血飛沫が舞い上がり、地面に槍が突き刺さる。
「トルマ!!」
アズリアの顔に、絶望の色が広がった。
倒れたトルマから流れ出た血が、地面に赤く染みを広げていく。
満身創痍のアズリアは、それでも必死に立ち上がろうとするが――ブレイズベアは周囲にいる縛られたチンピラで食事をし始める。
ここは住宅街。このまま放置すれば、一般市民の被害は避けられないだろう。
ユークは、ぽつりと呟いた。
「……このモンスター、≪賢者の塔≫と同じ……?」
「ありえない! このモンスターは、≪塔≫にはいないの!! 間違いないわ!」
アウリンが声を張り上げる。
だが、ユークは前を向いて叫んだ。
「やってみなきゃわからないだろ! ≪リーンフォース≫!」
彼の足元から淡く青白い魔法陣が広がっていく。光の波紋が地面を這い、仲間たちに力を与える。
「セリス!」
「うんっ!」
名を呼ぶだけで、意図が伝わる。セリスはすぐさま駆け出し、地面に突き刺さったトルマの槍を引き抜いた。
「はあああああっ!!」
全力の投擲――鋭く放たれた槍が、ブレイズベアの肩口に深く突き刺さる。
「ゴアアアアア!?」
怪物が苦悶の声を上げた。
「なっ……!? 効いてる……!」
アウリンが思わず息を呑む。
彼女の中の常識では、あり得ない出来事だった。
「ヴィヴィアン!」
「任せて~♪」
ユークの一声に応じて、ヴィヴィアンがセリスのもとへと駆け寄る。
セリスに傷を負わされたブレイズベアが、明確に敵意を向けて突進してきた。
だが――
「くっ……重っ……!」
ヴィヴィアンが盾を構え、正面から受け止めた。
そのまま後ろへ吹き飛ばされるが、セリスを守り抜く。
「アウリン! 一番強い魔法を準備して!」
走りながらユークは指示を出し、自身も魔法を放つ。
「≪アイスボルト≫!」
氷の矢がブレイズベアに炸裂し、わずかながらその動きを止める。ユークはヴィヴィアンの背後へと回り込んだ。
完全にユークたちを敵と認識したブレイズベアの巨体が、咆哮を上げて突進する。
土煙を巻き上げながら走るその姿は、まるで災厄そのものだった。
「来るぞッ!」
ユークが叫ぶと同時に、セリスが再び槍を構える。
その目には確かに覚悟が宿っていた。
「ユークのスキルがある。だから……行ける!」
セリスは跳躍した。鍛え抜かれた脚力で空を裂くように飛び、槍を突き出す。
「ええいっ!!」
だが、ブレイズベアは腕を振り上げ、槍を叩き落とすように迎撃した。
激しい金属音とともに、セリスの体が空中で回転し、地面に叩きつけられる。
「ぐっ……!」
セリスの体が痛みに軋む。それでも、彼女は槍を手放さなかった。
「セリス、大丈夫か!?」
ユークがセリスを心配し、声を掛けた瞬間、ブレイズベアの巨腕が振るわれた。
「させないわよっ!」
ヴィヴィアンが割り込むように前に出た。盾を構え、その全身で攻撃を受け止める。
衝撃が走る。ヴィヴィアンの足元が割れ、地面にひびが入った。
「っく……! 力が、桁違いだわ!」
盾越しに感じる殺意と質量。だが、それでも彼女は後退しなかった。
「≪アイスボルト≫!」
ユークの魔法がブレイズベアの目に直撃しまぶたを凍り付かせる。
「ゴアアアアアアアア!!」
咆哮を上げ、苦悶に暴れまわるブレイズベア。その隙に、仲間たちがユークの元へ集まる。
ユークはちらりと横目で詠唱を続けるアウリンを見る。
「魔法は……まだダメみたいだな」
チラリと詠唱を行っているアウリンを見るとユークが呟く。
「二人とも、まだやれる?」
状況を冷静に見極めながらも、彼は仲間たちに声をかける。
「大丈夫!」
「まっかせて~!」
二人とも傷つき、息を荒げながらも笑顔で返事を返す。
怒り狂ったブレイズベアの攻撃を何とか対処し続けるユークたち。
ブレイズベアの嵐のような連撃を避け、避けられない一撃は盾で受けて、わずかな隙をついて反撃を放つ。
だが——
「きゃあああああっ!」
初めに脱落したのはヴィヴィアンだった。全身を覆う鎧が動きを鈍らせ、回避が遅れた彼女は、ブレイズベアの一撃をまともに受けてしまう。
「ヴィヴィアンっ!」
ユークが叫ぶが、一人減ったことで攻撃の密度は上昇しさらに苛烈になる。
「ユーク! 危ない!」
セリスが彼を庇うように飛び込んだ。だが、彼女もまた一撃を受け、遠くへ吹き飛ばされる。
「っ!」
叫ぶ余裕すらなくなる。それでもユークは、ひとりブレイズベアの攻撃をかわし続けた。
だが、足元が壁に当たる——これ以上は逃げ場がなかった。
追い詰められた、かに見えたその瞬間。
「《フラッシュボルト》」
閃光が、ブレイズベアの顔を襲った。ユークの改良した魔法が炸裂し、獣の視界を焼く。
「ッッッ!?」
混乱する咆哮が響く。ブレイズベアが目を押さえ、暴れまわる。
ユークは攻撃を避けながらも詠唱を続けていた。
あらかじめ壁際に『フラッシュボルト』の魔法陣を仕込んでおいたのだ。
そう——ユークは追い詰められていたのではなく、壁際に誘導されていたのはブレイズベアの方だった。
「《ストーンウォール》!」
詠唱を終えて石の壁が突如として出現し、ユークとブレイズベアの間を分かつ。息を整える暇もなく、彼は叫んだ。
「今だ、アウリン!!」
「——《プロミネンス・ジャベリン》!!」
灼熱の槍が空を裂く。詠唱を終えたアウリンの魔法が放たれ、直撃したそれはブレイズベアの体を灼熱に包み込んだ。
「ガアアアアアアアアッ!!」
苦悶の咆哮が天を突く。その体を炎が喰らい尽くさんと燃え広がっていく。
やがて、ブレイズベアは炎の中に沈み、その姿が見えなくなった。
◆◆◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ユーク(LV.18)
性別:男
ジョブ:強化術士
スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)
備考:割と動ける方の後衛職。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
セリス(LV.18)
性別:女
ジョブ:槍術士
スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)
備考:まだ槍を手放してはいない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
アウリン(LV.18)
性別:女
ジョブ:炎術士
スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)
備考:今使える最強の魔法。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ヴィヴィアン(LV.18)
性別:女
ジョブ:騎士
スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)
備考:鎧が大きくへこんでしまった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
アズリア(LV.30)
性別:女
ジョブ:剣士
スキル:剣の才(剣の才能をわずかに向上させる)
備考:重症。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ジェット(LV.28)
性別:男
ジョブ:双剣士
スキル:双剣の才(双剣の基本技術を習得し、双剣の才能をわずかに向上させる)
備考:生死不明。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
トルマ(LV.26)
性別:男
ジョブ:剣士
スキル:剣の才(剣の基本技術を習得し、剣の才能を向上させる)
備考:生死不明。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
63
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい
黒城白爵
ファンタジー
ーーある日、平穏な世界は終わった。
そうとしか表現できないほどに世界にモンスターという異物が溢れ返り、平穏かつ醜い世界は崩壊した。
そんな世界を自称凡人な男がマイペースに生きる、これはそんな話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる