【完結】執着系幼馴染みが、大好きな彼を手に入れるために叶えたい6つの願い事。

髙槻 壬黎

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長期休暇②

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 今日はミカイルが一日、僕の家で寝泊まりすることが決まっている。彼曰く、半日じゃ足りない、ということで、僕もせっかく会えるなら色々話が聞きたいと思っていたし、快く了承したのはつい先日の事だ。
 玄関では、待機していた母さんが出迎えてくれた。

「ミカイル様、お久しぶりです」
「アディーラ様…今日はお世話になります」
「遠慮しないで、ゆっくりしていってくださいね。……それにしてもなんだか、暫く見ないうちにすごく大人びた感じがしますわ」
「ふふ……そうですか?ユハンにもさっき言われましたよ」
「うちのユハンは全然変わらないでしょう?」
「……そうですね。でも、僕はユハンが変わっていなくて安心しました」

 ミカイルがそっと微笑む。それを横目に、僕はたった一年でそんなに変わらないだろ、と口を尖らせていた。
 母さんは久しぶりにミカイルと会えて嬉しそうだ。幼い頃はよく彼に、母さんが取られるのではないかと不安だったのを思い出す。
 今にして思えば、ミカイルは母さん達の前では猫を被っていたため、当時の愛らしい彼の言うことに拒否など出来るはずがなかったのだ。だからいつも僕が反抗すると、叱られる嵌めになったのではないかと思う。
 あの頃はその理不尽さのせいで、やりきれない想いを胸に抱え込んでしまったが、成長した今ではそれも大分薄れていた。
 

 夕食まではまだ時間があるから、ゆっくり二人で過ごすといいわ────母さんにそう言われ、僕は自分の部屋へミカイルを招待した。ここに彼が訪れるのも、随分と久しぶりだ。

「ミカ。学校での話、もっといろいろ聞かせてくれよ」
「うーん、そうは言ってもほとんど手紙に書いた通りだよ?毎日授業を受けて、部屋へ帰ったら課題をする。その繰り返しで特に言うこともないんだけど……」
「僕が聞きたいのは、クラスメイトのこととか先生の話とか、どんな人達がいるのかってことだ。さっきは友達なんていない、なんて言ってたけどさ。クラスメイトとは話くらいするだろ?」

 ミカイルは少し黙った後、表情を僅かに強ばらせて僕に問いかけた。

「………なんで、ユハはクラスメイトの話が聞きたいの?」
「なんで、って……。そりゃあ、どんな人達がいるかは気になるよ」
「それって、僕以外の人に興味があるってこと?」
「え?まあ、そうなるのか……?」

 そういう意図で聞いたつもりは全くなかった。
 しかしながら────どうやらそれはミカイルの地雷だったらしい。彼は今まで浮かべていた穏やかな笑顔を完全に失くすと、僕を冷ややかな瞳で見つめてきた。
 辺りを険悪な雰囲気が漂い始める。
 沈黙を破ったのは、ミカイルの声ではなく、誰かが扉をノックする音だった。

「ユハン、ミカイル様が来てるって聞いたんだけど……」

 入ってきたのは父さんだ。
 ミカイルは父さんを見ると先ほどまでの冷たい表情を一転させ、いつもの微笑を浮かべた。

「お邪魔しています、イーグラント卿」
「ああ!ご挨拶するのが遅くなって申し訳ないです」
「いえ、僕ももう少し遅く到着する予定だったんですが、気が競ってしまい……、当初の約束した時間より大幅に早く着いてしまいました。むしろ謝るのはこちらの方です」
「そんなそんな!ミカイル様が謝るなど滅相もない!!」

 父さんは大袈裟に手を顔の前で振る。険悪な雰囲気も一緒に霧散したようで、僕はほっと一息ついた。

「父さん、なんだかんだミカイルとちゃんと話すのは初めてだよな?」
「ああ、そうだね」

 父さんは仕事柄家を外すことが多かったから、ミカイルが家へ遊びに来ても滅多に会うことはなかった。
 僕の言葉に頷いて、父さんがミカイルを見る。

「改めて、いつもユハンと仲良くしてくださり、ありがとうございます」
「そんなにかしこまらないでください。むしろ、ユハンが僕に仲良くしてくれているんです。お礼を言いたいのは僕の方ですよ」
「そうなんですか……?でも、ユハンもミカイル様のことを大切な友達だと思っているはずです。現に、今年の誕生日はミカイル様へ手紙を書きたいからと言ってペンをプレゼントに……」
「うわあっ!父さん!それは言うなよ!!」
「ええ!?だめだった!?」

 まさか父さんにそれをバラされるとは思わず、僕は立ち上がり大きな声で遮った。
 しかし、残念ながらそれは全く意味をなさなかったようだ。ミカイルは訝しげな表情で、こちらを見上げていた。

「ユハン、どういうこと?」
「あ、あ~、……そ、そういえば僕、母さんに用があるんだった!また後で!」

 母さんに用などあるわけもなく、僕はその場から逃げ出した。どうしても、ミカイルにプレゼントでもらったペンのことを言うのは気恥ずかしかったのだ。

 
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