【完結】執着系幼馴染みが、大好きな彼を手に入れるために叶えたい6つの願い事。

髙槻 壬黎

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クラス

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 教室内では席について皆会話をしていた。彼らはミカイルに気付くと口々に挨拶をする。
 僕に声をかけてくる者は誰一人としておらず、そもそも視界にすら入っていないようだ。
 
 ミカイルが挨拶を返しながら教壇の前に立つと、騒がしかった室内が恐ろしいほど急に静まり返る。
 まるで統率されているかのようなその光景に、僅かばかりの違和感。なんだか少し恐ろしい。
 しかし、ミカイルは何も気にする様子はなく、僕を手招いて呼び寄せた。

「皆、今日は紹介したい子がいるんだ。ユハン、こっちにおいで」

 名前を呼ばれた瞬間、皆の目が一斉に僕の方へと向いた。今まで一度もこちらを見なかったのに、ミカイルの一言で多くの視線に晒される。
 教室の異様な空気に若干戦きながらも、僕はできるだけ冷静にミカイルの横へと並んだ。

「彼の名前は、ユハン・イーグラント。僕の幼馴染みだよ。今日からこのクラスに編入することになったから、皆よろしくね」

 幼馴染み、という言葉に好奇の視線が一瞬にして冷たいものに変わるのが分かった。含まれているのは、嫌悪や憎悪と言った強い悪意を孕んだもの。
 意味の分からない、理不尽な侮辱が僕を襲っていた。
 ミカイルは何も気付かない様子で、ただただ嬉しそうに唇を緩めている。
 何をしたわけでもないのに、何故急にそのような視線を浴びなければならないのか。むしろおかしいのは僕の方なのではないか?
 そうした錯覚さえ起こしそうだった。それくらい、強い強い悪意が僕を突き刺す。


「────おい……どういう状況だァ?これは」

 そんな状況の中。
 ガラッと扉が開き、入ってきたのは面倒そうに頭をかいたタルテ先生だ。彼はクラスの異様な雰囲気に気が付くと、顔をしかめてミカイルを睨み付けた。

「僕がユハンのことを紹介していました」

 先生の姿に僕は思いがけずほっとした。彼が現れてくれたことで、クラスの視線が分散されたのだ。
 それでも依然として厳しい視線を投げかけてくる者もいるが、さっきよりは幾分かマシだ。いつの間にか握りしめていた拳の中は、手汗でびっしょり濡れていた。

「とりあえず、とっとと席につけ。イーグラント、お前はあの空いてる席だ」

 先生が顎で示した場所は、窓側の一番後ろの席。
 返事をして向かうと隣には女子生徒が座っていて、何故か僕をきつく睨み付けている。彼女とももちろん面識はないはずだが、先程の視線の内の一人なんだろうということは容易に窺い知れた。
 けれども生まれてこの方、母さんのような優しい女性しか僕は知らなかったので、隣の席の彼女に嫌われているというのは思いの外傷つくものだった。


「はぁ……、お前ら、よく聞け」

 タルテ先生は僕が座るのを見届けると、鋭い目つきで教室全体を見渡す。

「俺のクラスで絶対に問題は起こすな。────いいか?これは絶対だ。もし何かあれば俺は即刻そいつを退学させる。……そうなりたくなければ、大人しくしてろよ」

 周囲の空気が張り詰めたものに変わる。
 僕の背も心なしかピンと伸びていた。
 もしかして先生は、先程の変な雰囲気を察してこのようなことを言ってくれるのだろうか。
 正直言ってそんなタイプには見えなかったが、人は見かけによらないのかもしれない。ミカイルのわがままにも抵抗していたことを考えると、タルテ先生への信頼度が僕の中でグンと上がるのを感じた。



 その後、先生はダルそうに教壇へ背を預けながらバインダー片手に話をし出す。
 今日は主に説明がメインで、本格的に授業が始まるのは明日からのようだ。
 
 
 一通り話が終わったところで、クラスの学級委員長を決める時間が訪れた。

「誰かやりたい奴は手ェ挙げろ」

 僕はそもそもそんな役職があることを知らなかったので、他人事のようにキョロキョロと教室を見る。
 すると、手を挙げる生徒が一人。僕の目の前に座っている男子生徒だ。

「先生!ボクがやりたいです!」

 威勢の良い声が響く。他に誰かが手を挙げる様子はない。

「他にやりたい奴がいねェなら、こいつでいいなァ?」

 反対意見も特に上がることはなかった。
 どうやら決定らしい。先生は持っていたバインダーを開くと、何かを書き込んでいた。


 
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