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第2弾 いつか王子様が
18Memory⑧(エイティーン・メモリー)
しおりを挟むあくる日。
「……」
「……」
巡回バスを待つベンチに並んで座り、気まずい雰囲気のジョーとメラリー。
「メラリ~」
ジョーが話し掛けると、メラリーは遮るように口を開いた。
「あ、ジーンズの代金、今月のギャラ貰ったら返しますから」
「――え?何、言ってんだよ?俺はジーンズで恩着せて的に立たせようなんてつもりで買ってやった訳じゃ」
「でも、借りがあると断りづらいっすから」
キッパリと言うメラリー。
「コイツ、ぜってー気弱じゃねえ」
苦虫を噛み潰したかのような顔のジョー。
その夕方。
練習場。
ガンマン修行中のトム、フレディ、メラリーは毎日2時間の練習を終えた。
「お疲れっした~」
トムとフレディがさっさと練習場を出ていく。
新入りのメラリーはせっせと後片付けだ。
「ロバートさん。この際、フィラデルフィア、ショウに出したら駄目っすかね?」
ジョーがマネキンを指して言った。
「有り得ねーだろ?」
ロバートはクールに一笑する。
「そうっすよね」
やはり、マネキンにショウのパートナーは有り得ないかとジョーはガックリとうなだれた。
「あ~あ、バッファロー・ビルの時代からあるパフォーマンスでよ。その頃は実弾でやってたんだよ。今のショウ仕様のライフルなんか、もし、当たったところで輪ゴムでペチッと弾いた程度の『いてっ』くらいで済むのによ~」
ジョーは聞こえよがしの独り言をブツブツと言って、横目でチラッとメラリーの顔を窺う。
「ヒトの指だと思って――」
メラリーは『いてっ』くらいでも痛いのはイヤなのだ。
「だから、当てないって言ってんじゃん」
諦め切れずにメラリーに迫るジョー。
「だって、マネキンはビビらないから微動だにしないけど、俺はビビって手が動いちゃうもん。無理っすよ」
「……」
そう言われたら、そのとおりなのでジョーはガックリとまたうなだれた。
いくら自分の狙いが正確でも的がビビってしまったらどうにもならないパフォーマンスなのだ。
「メラリー、もう、今日はいいぜ」
ロバートがジョーに構わず早く帰るようにメラリーを促す。
「はい。お先に失礼します~」
メラリーはペコリとして練習場を出ていった。
「あ~あ、『ジョーさんのためなら、たとえ火の中、水の中、指の10本や20本、惜しくありませんっ。命だって捧げちゃいますっ』というような可愛~い後輩が現れてくれねえかな~」
ジョーはブツクサとぼやきながらマネキンを的の前に立たせて練習の準備をした。
「自分でそーいうこと言う奴にはまず現れねえだろうな。それより、ちょい、それ、俺にも撃たせてくれよ」
ロバートがマネキンを指差し、ライフルを手に取る。
チャッ。
「えっ?イヤっすよ。俺のフィラデルフィア」
ジョーはマネキンの前に立ち塞がる。
「お前、俺の腕、信用してねえのかよ?――そーいや、それ、マネキンのくせに、やけに重装備だな」
マネキンは練習のために顔にゴーグルを着け、ドレスの上に防弾チョッキまで着ている。
「あっ、『マネキンのくせに』って何すか?俺はマネキンだから、べつに弾が当たってもいいとか、そーいう了見で撃ったこといっぺんもねえっすから」
「一緒に練習してる間にマネキンに情が移っちまったか?――いいから、どけよ。俺が外す訳ねえだろ?」
「『マネキンのくせに』って言ったヒトには撃たせらんねえっすよ」
ジョーはマネキンの前から離れない。
「――は~ぁ」
ロバートは呆れ顔で吐息してライフルを下ろすと、練習場から出ていった。
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