PictureScroll 昼下がりのガンマン

薔薇美

文字の大きさ
54 / 297
第2弾 いつか王子様が

18Memory⑪(エイティーン・メモリー)

しおりを挟む

 そうこうして、

 2人の練習が始まった。

「――あ?何だ、その格好?」

 ジョーは練習場に入ってきたメラリーの格好を見るなり不服そうに片眉を吊り上げた。

 メラリーはフルフェイスのヘルメットに防弾チョッキ、手には頑丈な革製の手袋を着けた格好だ。

「俺だってこんな格好、重たいし、暑いし、イヤなんすけど」

 後ろを見返るメラリー。

「わたしがこの重装備でって言ったのよ。ジョーちゃんの腕を疑う訳じゃないけど念のためよ」

 ゴードンがメラリーの後から入ってきた。

「あ、それとキャスト同士の金銭のやり取りを容認する訳にはいかないからね。報酬としてジョーちゃんがメラリーちゃんに1万円分のステーキをご馳走するってことでいいわよね?」

 ゴードンは代替え案を出す。

「俺、どっちみち1万円貰ったらタウンのステーキハウスでステーキ食べるつもりだったから、それでオッケーっす」

 メラリーはジュウジュウと香ばしく焼けたステーキを思ってニコニコ顔だ。

「ま、どっちでも俺はいいけどよ」

 ジョーはともかく生身の人間の、それもショウのステージで見映えするパートナーで念願のパフォーマンスが出来るなら満足なのだ。


「――んじゃ、いくぜ」

 チャッ。

 ジョーがライフルを構える。

「――っ」

 メラリーはギュッと目をつむった。


 ガン!

「――てっ」

 1発目から弾はピンポン玉ではなくメラリーの指に当たった。

 思わず「――てっ」と口から出ただけで硬い革製の手袋のおかげで痛くはない。

「今のはお前の手が動いたんだぜ」

 ジョーは動かないマネキンでの練習に慣れていたせいで狙いを定め過ぎた。

「だって、反射的に動いちゃうんっすよ」

 メラリーはブスッと口を尖らせる。


「う~ん、目を閉じてたのに反射的に手が動くとは、メラリーの奴、勘が鋭いな」

 ロバートは腕組みして唸った。

「このパフォーマンスってさ、ジョーさんよりも的のメラリーがじっとしてるほうが難しいんじゃね?」

「だな。どうしたって動いちまうよな」

 トムとフレディは自分達の練習そっちのけで2人の練習を眺めている。

「――あ、そっか。動体射撃と思って狙えばいいのか」

 ジョーはピンと閃いた。

 普段のショウでは飛んでいるクレー、風船、トランプ等を撃っているのだからメラリーの指に挟んだピンポン玉も動くものという前提で狙えばいいのだ。

 ちなみにトランプは舞い落ちる4種類のカードの中からハートのエースだけを撃つ。

 ワイルド・ウェスト・ショウでは女ガンマン、アニー・オークリーが得意としたパフォーマンスだ。

 メラリーが少しばかり手を動かす範囲でピンポン玉を撃つなど簡単ではないか。

「おしっ」

 ガン!

 2発目はメラリーの手が動いても外さなかった。


 休憩になると、

「あ~、緊張して喉がカラカラ~。肩もガチガチに凝っちゃったな~」

 メラリーはドカッと椅子にふんぞり返った。

「はいはい、ミネラルウォーター?肩、揉もうか~?」

 ジョーはチヤホヤチヤホヤとメラリーのご機嫌を取って、へいこらと下僕のごとく尽くした。

 メラリーが「やっぱりヤダ」などと言って逃げ出さないように必死だったのだ。

 この練習の時からジョーに対して後輩のくせにエラソーなメラリーという2人の関係性が出来上がったのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...