PictureScroll 昼下がりのガンマン

薔薇美

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第4弾 聖なる夜に

Good job!(よくやった!)

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「――あ、メラリーちゃん、途中でルルちゃんに逢いました?」

 廊下の向こうから太田が走ってきた。

 最初にルルはキャスト食堂へ来たので太田がメラリーはキャスト控え室に戻っていると教えたらしい。

「うん、逢った、逢った♪」

 メラリーはニンマリとしてお弁当包みを見せる。

「――?」

 太田はメラリーがルルの呪いの弁当を嬉しげに持っているのが不可解そうな顔だ。

「バッキー、ちょっと協力して」

「――え?」

「ゴニョゴニョ――」

 メラリーは太田に何やら耳打ちする。

「――ええ――っ?」

 太田は手段を選ばないメラリーの企みに唖然とした。


 キャスト食堂。

「マーサさん、ミックスフライ定食、ご飯大盛りで~」

 メラリーはいつものようにニコニコ顔で配膳係のマーサに注文した。

 お誂え向きに本日の日替わり定食はミックスフライ定食だった。

 いつもより時間も遅かったので11時までの朝定食は終了している。

 ジョーもミックスフライ定食を頼んでテーブルに着いていた。

「はい、メラリーちゃん、オ・マ・ケ♪」

 マーサはいつものようにメラリーにオカズをオマケしてくれた。

 これでルルのコロッケを混ぜても数の多さを不自然に思われることはない。

 メラリーが冷水機の水をコップに汲んでいる間に太田はルルのお弁当からハート型のコロッケを取り出し、メラリーの皿に移した。

 箸でグニグニと押してハート型を壊し、キャスト食堂のコロッケのような俵型に形成する。

「……」

 メラリーと太田はしめしめと顔を見合わせた。


「――お待たせ~」

 メラリーと太田は何食わぬ顔してガンマンキャストのテーブルのジョーの隣と向かいの席に座った。

「いただきま~す」

 ジョーはこう見えてジェントルマンなガンマンなのでメラリーと太田が席に着くまで食べずに待っていた。

「ジョーさん?今日の空模様はどうですかね?」

 太田が唐突な天気の話題で窓のほうへジョーの注意を引く。

「――ん~?天気予報じゃ雨は夕方過ぎって言ってたから大丈夫じゃね?」

 ジョーは窓の外を見ながら味噌汁をズズと啜る。

 その隙にメラリーはジョーのミックスフライ定食のコロッケをルルのコロッケとすり替えた。

「あ、ジョーさん、ソース掛けてあげるね」

 メラリーはルルのコロッケにソースをどっぷりと掛ける。

 これで怪しい味もソースの味で軽減されるはずだ。

「わわっ、掛け過ぎちゃった。これじゃ辛くて食べらんない」

 メラリーはわざとらしくあたふたする。

「あ~、こんくらい平気、平気」

 ジョーは知らぬが仏でルルのコロッケを取り、ポイッと口に放り込んだ。

「――ん――?」

 モグモグしながら顔をしかめる。

「ほ、ほらっ、やっぱりソース辛いっすよね?水、飲んで。水っ」

 ジョーの口元に水を押し付けるメラリー。

「――(ゴクゴク)」

 まんまとジョーはルルのコロッケを飲み込んだ。

(やたっ。バッキー)

(グッジョブですっ。メラリーちゃん)

 メラリーと太田は互いに達成感に満ちた表情で頷き合った。
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