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第6弾 日は沈み 日は昇る
full smile(フルスマイル)
しおりを挟む「は~い、みんな、並んで~」
保母がチビッコを舞台に並ばせる。
キャラクタートリオもチビッコの背後に並んだ。
「――お、いけね」
ケントは大急ぎで舞台下の楽団のところへ走っていく。
「ああ、緊張してきちゃった」
「ホント」
ミーナも他の保母も手早く髪を直し、リップカラーを塗り直してからチビッコの背後に並んだ。
オープニングではミーナも舞台でキャラクタートリオやチビッコと一緒に踊るのだ。
パカッと舞台の照明が入った。
目がチカチカするほど眩しく、顔がジリジリするほど熱い。
「みんな~、満面の笑顔だよ~」
そう太ったオッサン司会者に言われてミーナも笑顔を作った。
よく間違えがちな重複言葉になど気が付きもしない。
「正しくは“満面の笑み”ですね。満面は顔全体のことなので笑顔というと重複になりますから」と元・塾講師で家庭教師のバッキーの太田なら、すかさず指摘してくるところだ。
しかし、今はそのバッキーの太田はキャラクターという立場上、声を出せない。
~~♪
楽団が奏でる賑々しい曲に合わせてスルスルと幕が上がった。
ウェスタン・タウンのオリジナル曲の『バッキーの行進曲』をみなで踊り始める。
軽快なアップテンポの曲に合わせて、足踏みして、両手を上げたり、下げたり、クルクルと回ったり、やたらに忙しい。
託児所では毎日、お遊戯で踊っているのでチビッコでも振り付けは完璧だ。
「みんな~、元気に笑顔で~」
なんと、太ったオッサン司会者までノリノリの笑顔で踊っている。
何故、振り付けを知っているのか?
太ったオッサンなのに息も乱さず振り付けに遅れも取らない。
ミーナも満面の笑みで張り切った。
託児所の保母としてお遊戯で部外者のオッサンに引けを取る訳にはいかない。
続けて、『バミーのワルツ』『バーバラのカンカンダンス』とお遊戯は合わせて3曲ある。
ウルフもカレンも天使の衣装でノリノリで踊っている。
「ひゃうっ」
「みゃうっ」
カンカンダンスのよく分からない掛け声も張り切って上げた。
「お~、ウルフ、思ったより舞台度胸あるじゃん」
「普段、照れ屋なのにショウのパフォーマーの血筋かな」
「振り付けだって完璧よね。まだ託児所に入って間もないのに」
ジョー、メラリー、マダムはウルフのお遊戯に感心する。
「家でオレと特訓したんだ」
10歳のタイガーも6歳までタウンの託児所にいたのでお遊戯の振り付けは身体が覚えていた。
「……」
ロバートは感無量でやや涙目である。
~~♪
「はぁはぁはぁ」
ミーナは1曲目から張り切り過ぎて3曲目では息切れしてきた。
カンカンダンスは足を高く蹴り上げるハイキックの繰り返しがキツイ。
「みんな~、笑顔、笑顔で~~」
太ったオッサン司会者はまだ息も乱さず足を高く蹴り上げている。
キャラクタートリオもヘッドとボディの重みも何のそのとキレッキレの動きを見せている。
ミーナも必死に笑顔を作ってカンカンダンスのハイキックを繰り返す。
「ぜぇぜぇぜぇ」
託児所にクララを置いてきぼりにしたことなど思い出す余裕もなかった。
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