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第6弾 日は沈み 日は昇る
steel virgin(鋼鉄の処女)
しおりを挟む一方、
その頃。
「ああ、クララちゃん。まだ、いたんだ」
アランは走って託児所へ戻ってきていた。
「……」
クララはいまだに思考回路がストップしたまま人形のように固まって椅子に座っている。
さっきまでクリスマス会の準備の保母とチビッコの甲高い声で騒がしかった室内は打って変わってシーンと静まり返っている。
カツカツとアランの騎兵隊コスチュームの長靴の足音が響いているが、クララは気付く様子もなく無反応だ。
「――あ、そういえば、初めてだね?クララちゃんとこんな風に2人きりなんてさ」
アランはウキウキとクララに歩み寄り、
「クララちゃん」
背後からクララにムギュッと抱き付いた。
「――っ」
ビリッとクララの全身に電流が走る。
やにわに思考回路にスイッチが入った。
「――なにするのよっっ」
クララはいきなり痴漢に遭ったような怒声を上げ、アランの顔面にガツンッと頭突きをかまし、椅子から立ち上がった。
ガターン!
弾みで椅子が倒れる。
「ご、ごめん。ビックリさせちゃった?――ぶ――ふ――っ」
アランは顔を手で押さえてタラタラと鼻血を垂らしている。
(――ア、アラン――っ)
クララは「シマッタ!」と思った。
アランにしてみればクララはすでに熱いkissまで交わした彼女なのだから本人の同意なく抱き付いたとしても強制ワイセツ行為とは思ってもいないのだ。
「――あ、あの、いきなりでビックリして、つい、頭突きを――」
実はクララは過保護な父親が心配性のために中学生の頃から護身術を身に付けさせられていた。
だからこそ、以前、ジョーに押し倒された時にも咄嗟に身体が反応したのである。
「――あっ?」
今もハタと気付くと、無意識のうちに手にハサミを握って刃先をアランに向けて構えていた。
「やだ。折り紙を切ってたハサミ。片付けて置かなきゃね」
クララは作り笑いをしてテーブルの上のヤマト糊やハサミをせっせとお道具箱の中に仕舞った。
アランにどういう態度で接したらいいものか、まったく分からない。
「あっ、もうクリスマス会、始まってる。早く行かなきゃっ」
クララはひとまず今日はその場しのぎに誤魔化すことにした。
「クリスマス会、クリスマス会」
アランの顔を見ないようにそっぽを向きながら独り言のように言ってバタバタと慌ただしく託児所を出て廊下を走っていく。
「……」
アランは鼻血をポタポタと床に落としながら廊下へ出た。
「あれこそ正真正銘の純情可憐な乙女――」
なんとなく感動して吐息混じりに呟く。
昨夜は意外にあっさりとオッケーしてくれて熱いkissまで交わしたので噂ほどでもないのかと侮ってしまったが、
さすがは絶滅危惧種の天然記念物乙女と呼ばれているクララだと顔面の痛みと共に実感した。
「……」
アランは探し求めていた幻の珍獣でも発見したように惚れ惚れとして、廊下のずっと先を走るクララの後ろ姿を見つめていた。
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