PictureScroll 昼下がりのガンマン

薔薇美

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第12弾 ショウほど素敵な商売はない

Ⅽluelue to solution (解決の糸口)

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「俺はいったいどうすればいいんでしょうか?」

 マーティはうなだれた顔を上げると、すがるような目をバツイチ3人に向けた。

 すると、

「まあ、別れるか、諦めるか、どっちかだわね。だって、今さら相手の性質を変えるのは無理よ」

「そうね。無理だわ」

「無理よね~」

 マダム、サンドラ、タマラは事もなげに断言した。

 そもそも3人は無理だったので離婚したのだから経験を踏まえて確定的だ。

「――無理――ですか」

 再びマーティはうなだれた。

 別れるか、諦めるか、どっちか。

 当然、自分は諦めるという選択しか出来ないだろう。

 赤ん坊のマットはとにかく可愛いし、舅姑のダンと陽子との関係も良好だ。

 結婚前のエマと結婚後のエマはまるで別人だが、今のエマに自分が慣れて順応していくしかない。

(でも、こんなはずじゃなかったのに――)

 マーティはやるせなく溜め息した。


「あら、そろそろカンカンのレッスンに行かなきゃ」

「わたしも」

「わたしはドレスのパターンの続きだわ~」

 マダム、サンドラ、タマラはまだ仕事があるのであわただしく席を立った。

「あ、ありがとうございました」

 マーティも慌てて立ってペコリと頭を下げる。

 取り敢えず、あっという間に結論が出たのだからバツイチ3人に相談して良かった。


 マーティは地下通路からフロンティア砦へ向かった。

 先週に引き続き今週も馬当番だ。

 アーサーが体調不良のため代わりに引き受けたのだ。

 馬当番は兵舎に1週間の泊まり込みだが深夜勤の手当ては出るし、自宅で過ごす時間が少しでも短く済むことに、いや、赤ん坊のマットと舅姑のダンと陽子とだけなら何時間だって一緒に過ごすのは苦にならない、厳密に言うならばエマと過ごす時間が短く済むことにマーティはホッとしていた。


 一方、

「じゃ、スーザンとチェルシーにお見合いのこと訊いてみるから」

「しっかり頼んどくれよ」

 クララとアランは20分ほどでマーサの特別室を後にした。

 エレベーターの中は2人だけでスペースはたっぷりあるというのにアランはクララに身体を寄せてきた。

「よく考えたらカップルらしいことが追いかけっこだけって、ただの友達と変わらないよね?」

 アランは追いかけっこで息切れしてゴールの木の下でのkissが出来なかったのが不満そうだ。

「そんなことないわ。カップルらしいわ。わたし、彼氏でもない男のヒトと手を繋いだりしないもの」

 クララは小学生の頃でさえ家族以外の男のヒトと手を繋いだ覚えなどない。

「あ、そうだよね。もう当たり前に手は繋ぐしね」

 アランは良いきっかけとばかりにクララの手を取った。

(あ、昼間は右手を繋いだけど、今度は左手。ついに両手とも)

(防犯カメラに見られてるエレベーターの中ではしないだろうけど、この後、暗い夜道を帰ったら、もしかして、もしかしたら)

(kissされちゃうかも?やだ、どうしよう。まだダメよ。そりゃあ、もう初kissはしてるけど酔っていて覚えてないし)

 クララは未開の地に踏み込む期待と不安でドキドキした。


(クララちゃん、分かりやすく赤面して、めちゃくちゃ意識してるし、なんか、こっちまで緊張してくるんだけど)

 アランはラブストーリーのようなシチュエーションならkissをどこでするべきか考えを巡らせた。

(車の中?夜道?いや、それじゃ、ビジュアル的にイマイチだな)

 そもそもラブストーリーなどあまり観ないのでシチュエーションが思い浮かばない。

 緊張で繋いだ手が汗ばんできた。

 何はともあれ、この後に起こる急展開を2人は想像もしていなかった。


 チン。

 1階に着いてエレベーターの扉が開くと、

「えっ、ああっ?」

 エレベーターホールに立っていた女が素っ頓狂な声を上げた。

「お、お母さんっ」

 目の前の素っ頓狂な声の主はクララの母親の光恵だった。

 光恵の視線は2人の繋いだ手に注がれている。

「ち、違うのっ。手なんか繋いだのは今日が初めてなのっ」

 クララはパッとアランの手を振りほどく。

「えっ?クララちゃんのお母さん?」

 アランがハッとして姿勢を正し、一歩足を進めた。

「ご挨拶が遅れまして失礼いたしました。クララさんとは結婚前提に真剣交際をさせていただいております。騎兵隊キャストのアランこと荒井新哉と申します」

 キメ顔にイケメン光線を放ちつつ、ハキハキとよどみなく挨拶する。

(あ、そうだった。元々、アランはホテルマンだから意外に敬語はペラペラなんだわ)

 クララはホッと安堵した。

 改まった場面の礼儀に関しては何も文句の付けようはないのだ。

「あ、あの、は、母の光恵と申します」

 母親の光恵は身長185cmでハンサムなアランにすっかり取り乱している。

「また日を改めまして正式にご挨拶に伺わせていただきます」

 アランはホテル仕込みの丁寧なお辞儀をして病院のロビーから立ち去った。


「はあ~」

 光恵は全身の力が抜けたようにロビーの長椅子にへたり込んだ。

「もう、ビックリしちゃったじゃない。どうしてお付き合いしているヒトがいるって言わないのよ?あ、今日のお弁当も彼氏に作ったのね?ああ、それにしても、良かったわぁ。今、美容院に行ってきて帰りに寄ったのよ。ちゃんとヘアカラーしたばかりで良かったぁ」

 エレベーター横の壁の鏡に映る自分の姿をチェックして胸を撫で下ろす。

 美容院に行くので薄化粧して普段着よりも小綺麗にオシャレしていた。

「それより、お母さん、山田のおばちゃんのお見舞いに来たんでしょ?」

 クララは照れ臭いので素っ気なく話題を変える。

 なにしろ初めての彼氏なのでどんな顔していいのかも分からなかった。

「ええ、そうよ。山田のおばちゃんにお見合い写真を渡してきてってお義姉さんから頼まれたのよ。お義姉さんところの三兄弟、3人とも30過ぎて独身でしょ?あ、三男坊はまだ28くらいだった?どっちにしてもド田舎の農場へお嫁に来るヒトなんているかしらね?」

 光恵は落ち着かない様子で早口で捲し立てる。

 母親としても一人娘の初めての彼氏に動揺しているのだ。

 なにより父親の日出男がどんな反応を示すか気掛かりだった。

「ひとまず、まだお父さんには内緒にしているからね。あなたも気付かれないようにね」

 光恵はそうクララに念を押してエレベーターに乗っていった。


(あぁ、焦った。でも、お母さんにアランを逢わせる手間が省けたから良かったわ)

 クララはまず母親、祖母、祖父、父親と順々に突破していけばいいと考えた。

 母親の光恵は面食いだし、礼儀正しいアランのことは気に入ったはずなので、残る難関は父親の日出男だけなのだ。

 まったく虫のいい話だが、クララはジョーを追いかけることを続ける気満々でもアランとの結婚願望が失せた訳では決してなかった。
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