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04 俺の姫プレイは始まった……のか?
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水都『アクア』
DFO三大都市の一つ。
名前の通り『水』が豊富であり、円形型闘技場コロセウムを模した、すり鉢型の巨大都市である。
第一層から第六層で構成されており、一番上の階層が『第一』となっている。
上から順に下へ行くにつれ、第二、第三となっており、最下層の第六はこの都市の中心となる主要な店やストーリー上の重要なNPCがいる城が配置されている。
第六層の中心部分には大きな噴水があり、そこから遠すぎず近すぎない場所にギルドがある。
俺はギルドの掲示板を見ながら、野良パーティーの回復職募集を探していた。
「同レベルくらいのパーティーは、っと……おー……あったあった!」
自分の希望と合うパーティーを見つけ、申請ボタンをタップする。
相手側からOKが来ればパーティー編成完了。
「返事来た来た。OKね。えーっと何なに……今酒場に皆いるんで、お暇でしたら会いませんか? おっ! 行く行く!」
それじゃパーティーメンバーに会いに行きますか!
俺はギルドを出て第五層にある酒場へ向かった。
酒場に到着し、カランコロンとドアベルの音を立て店へ入る。酒場はプレイヤーが集まりやすい場所の一つで、店内はガヤガヤとしていた。俺はキョロキョロと辺りを見回す。
それらしき人達が店の一番奥のテーブルに座っている。
爽やかそうな赤髪ツンツン頭。
黒髪眼鏡のモッサリ君。
長髪を軽く結ってサイドに流してる少しチャラそうな男。
そのテーブルへ向かって歩いて行く。そして俺はニコリと笑顔を浮かべ、赤髪ツンツン君に声をかけた。
「こんにちは。タカヒロさん……ですか? 先程パーティー申請したチロと言います」
「こんにちは、チロさん! タカヒロです。よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしくお願いします」
ペコリとお辞儀をする。
揺れるピンク色のツインテール。
フッフッフッ! きっと可愛いに違いない俺!
あ~可愛い。ツインテールはやっぱ正義だな。
「メンバーを紹介しますね。コッチは魔術師のタナカさん、コイツは槍使いのアレク。あ、俺は一応戦士やってます。」
「……ども」
「やっほー! よろしく! やったー女の子だ! チロちゃん俺の隣空いてるから、座って座って!」
「ありがとうございます~。それじゃ失礼します」
俺がこの野良パーティーに入った目的は週末に行われるレイドの参加だ。
フィールドにいるモンスターを倒してお金を稼ぐことも出来るが、レイドで大型モンスターを討伐すると、金もドロップアイテムも懐にたんまり入る。ついでに経験値も美味しい、一石二鳥のイベントがあるのだ。
俺達は挨拶を交わした後、早々にお互いのスケジュール確認を行うことにした。
「お……私は平日19時以降なら都合が付きやすいですね。タナカさんはどうですか?」
「僕も……それくらい」
「俺は20時以降かなー! ちょっと仕事が忙しくて!」
「俺もアレクと同じ20時以降になるかな……じゃあ20時30分頃に酒場集合。レイドまでは特に縛りは無し。週末のレイドが終わったらパーティー解散ってことでいいかな?」
「はいっ!」
「……うん」
「オッケー!」
こうして一週間だけの限定パーティーがここに誕生した。
***
<月曜日 20:10>
夕飯も風呂も済ませた俺はヘッドギアを装着し、ゲームを立ち上げる。
集合場所である酒場へと向かった。
カランカランコロン。
酒場へ入るとチラホラと他のプレイヤーがいる。
俺はキョロキョロと見回すと、前回と同じ一番奥の席にパーティーメンバーの顔を見つけた。
黒髪眼鏡のモッサリ君ことタナカさんだ。俺はタナカさんの元へ歩いて行く。
「こんばんは~タナカさん早いですね!」
「……ども」
タナカさんが小さくお辞儀をする。
その後、タカヒロさん、アレクさんと次々に集まり、五分もしない内に全員揃った。
「週末のレイドまで時間あるし、今日は何しようか? やりたいことがある人いる?」
戦士のタカヒロさんがそう告げると、槍使いのアレクさんがスっと手を上げる。
「はーい! 俺この前レベル50になったからさ~! 職業クエストがやりたい!」
「職業クエか。他に何かやりたい人いる?」
「職業クエストで大丈夫ですよ~!」
「……僕も大丈夫」
タカヒロさんがパンッと両手を叩く。
「それじゃあ今日はアレクの職業クエの手伝いだな!」
「サンキュー! これでやっと防具が揃うわ~!」
今日のやることが決まって、ガタガタと皆立ち上がる。
カランコロンと音を立て、酒場を出た。
職業クエスト。
戦士や聖女など、ゲームにおける全ての職業はある程度レベルが上がると、段階的に試験のようなものを受ける事が出来る。
それぞれの職業でクリアすべき課題内容は異なり、レベルが高くなるとボス戦も行うこともある。
アレクさんはレベル50になったことでボス戦が発生するのだが、ボスを討伐するとご褒美アイテムとして防具が受け取れるようだ。
俺達は水都アクアから外へ出て、アレクさんの職業クエストダンジョンを目指し歩いていく。
目の前いっぱいに広がる草原をサクサク歩きながら、アレクさんが俺に話かけてきた。
「チロちゃんはレベル42だから、ちょっと戦闘が苦しくなるかもしれないけど……いいかな? 大丈夫?」
いいね。女の子を気遣えるとは、素晴らしい。
嬉しく思いながら俺はニコリと微笑み答えた。
「聖女のレベルは42ですけど、他職でパッシブスキルをいくつか取っているので、多分大丈夫だと思いますよ」
戦士スキルのおかげで防御とHP、攻撃力はそこそこある。
レベル50程度で出てくるボスに一撃で戦闘不能になる事はまず無いんじゃないかな?
さすがに取得スキル全部付けておくのは不自然すぎるから、まだいくつか外してるけど。
「へ~! そうなんだ! ステータスちょっと見せて貰ってもいい?」
「どうぞ~」
俺はステータスウインドウを開いて、アレクさんにウインドウをスライドさせて見せた。
「おっ本当だ~! これだけHPと防御力があれば大丈夫そうだ……ん?」
突然アレクさんが立ち止まり、口をパクパクさせている。
「アレク~! 止まってないで歩け~!」
「タカッ! こ……ここッこれ!!」
アレクさんが俺のステータスウインドウを指差しタカヒロさんに見せる。
タカヒロさんもステータスを覗き込むと、カッと目を見開き、直後にブルブルと震え出した。
(何だ? なんか変なものあったか?)
俺も近づき自分のステータスを覗き込む。
アレクさんが指差していたのは、HPや防御力では無く、装備のほうだった。
そして俺は二人の反応の理由を知ることになる。
「「せ…赤竜のピアス……」」
はっ!! しまったー!!
アクセサリーのこと失念してたー!!
赤竜のピアス。
二年前に追加されたボスがドロップするレアアイテムのことだ。
戦闘の際にスキル回しを一つでもミスると討伐できないと噂のボスで、討伐できたパーティーの数は二年経過した今でも三桁にも満たない。
討伐出来たとしてもそのアイテムを必ずドロップするとは限らない鬼畜仕様だった。
あまりにも討伐とドロップ難易度が高いので、その後運営は難易度を少し下げることを検討した。
しかし、検討しただけで今現在も難易度はそのままである。
「赤竜のピアス……?」
振り返ったタナカさんが、ポカンとした様子で俺を見ている。
こんなアイテム装備してるヤツがレベル42はおかしいだろ! 俺ぇ!
普段アクセサリー装備はアバター非表示に設定してるから、外すの完全に忘れてた。
どうしよう……どうやって誤魔化そうかな。えーとえーと……そうだ!
「これ貰ったんです!!」
「も……貰った……?」
「えっ!? これあげるヤツとかいんの!?」
「……」
大事なことなのでもう一度言おう。
「モラッタンデス」
「誰に?」
「誰だれ!? 俺めっちゃ気になるー!」
「……」
誰ってそんなの一人しかいない。
「<暁>っていうチームのチヒロさんに……」
「「「!?」」」
くっそー! 他に赤竜討伐した奴の名前なんて知らないんだよ!
冷や汗ダラダラかきながら、俺はエア姫プレイを決めるしか無かった。
DFO三大都市の一つ。
名前の通り『水』が豊富であり、円形型闘技場コロセウムを模した、すり鉢型の巨大都市である。
第一層から第六層で構成されており、一番上の階層が『第一』となっている。
上から順に下へ行くにつれ、第二、第三となっており、最下層の第六はこの都市の中心となる主要な店やストーリー上の重要なNPCがいる城が配置されている。
第六層の中心部分には大きな噴水があり、そこから遠すぎず近すぎない場所にギルドがある。
俺はギルドの掲示板を見ながら、野良パーティーの回復職募集を探していた。
「同レベルくらいのパーティーは、っと……おー……あったあった!」
自分の希望と合うパーティーを見つけ、申請ボタンをタップする。
相手側からOKが来ればパーティー編成完了。
「返事来た来た。OKね。えーっと何なに……今酒場に皆いるんで、お暇でしたら会いませんか? おっ! 行く行く!」
それじゃパーティーメンバーに会いに行きますか!
俺はギルドを出て第五層にある酒場へ向かった。
酒場に到着し、カランコロンとドアベルの音を立て店へ入る。酒場はプレイヤーが集まりやすい場所の一つで、店内はガヤガヤとしていた。俺はキョロキョロと辺りを見回す。
それらしき人達が店の一番奥のテーブルに座っている。
爽やかそうな赤髪ツンツン頭。
黒髪眼鏡のモッサリ君。
長髪を軽く結ってサイドに流してる少しチャラそうな男。
そのテーブルへ向かって歩いて行く。そして俺はニコリと笑顔を浮かべ、赤髪ツンツン君に声をかけた。
「こんにちは。タカヒロさん……ですか? 先程パーティー申請したチロと言います」
「こんにちは、チロさん! タカヒロです。よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしくお願いします」
ペコリとお辞儀をする。
揺れるピンク色のツインテール。
フッフッフッ! きっと可愛いに違いない俺!
あ~可愛い。ツインテールはやっぱ正義だな。
「メンバーを紹介しますね。コッチは魔術師のタナカさん、コイツは槍使いのアレク。あ、俺は一応戦士やってます。」
「……ども」
「やっほー! よろしく! やったー女の子だ! チロちゃん俺の隣空いてるから、座って座って!」
「ありがとうございます~。それじゃ失礼します」
俺がこの野良パーティーに入った目的は週末に行われるレイドの参加だ。
フィールドにいるモンスターを倒してお金を稼ぐことも出来るが、レイドで大型モンスターを討伐すると、金もドロップアイテムも懐にたんまり入る。ついでに経験値も美味しい、一石二鳥のイベントがあるのだ。
俺達は挨拶を交わした後、早々にお互いのスケジュール確認を行うことにした。
「お……私は平日19時以降なら都合が付きやすいですね。タナカさんはどうですか?」
「僕も……それくらい」
「俺は20時以降かなー! ちょっと仕事が忙しくて!」
「俺もアレクと同じ20時以降になるかな……じゃあ20時30分頃に酒場集合。レイドまでは特に縛りは無し。週末のレイドが終わったらパーティー解散ってことでいいかな?」
「はいっ!」
「……うん」
「オッケー!」
こうして一週間だけの限定パーティーがここに誕生した。
***
<月曜日 20:10>
夕飯も風呂も済ませた俺はヘッドギアを装着し、ゲームを立ち上げる。
集合場所である酒場へと向かった。
カランカランコロン。
酒場へ入るとチラホラと他のプレイヤーがいる。
俺はキョロキョロと見回すと、前回と同じ一番奥の席にパーティーメンバーの顔を見つけた。
黒髪眼鏡のモッサリ君ことタナカさんだ。俺はタナカさんの元へ歩いて行く。
「こんばんは~タナカさん早いですね!」
「……ども」
タナカさんが小さくお辞儀をする。
その後、タカヒロさん、アレクさんと次々に集まり、五分もしない内に全員揃った。
「週末のレイドまで時間あるし、今日は何しようか? やりたいことがある人いる?」
戦士のタカヒロさんがそう告げると、槍使いのアレクさんがスっと手を上げる。
「はーい! 俺この前レベル50になったからさ~! 職業クエストがやりたい!」
「職業クエか。他に何かやりたい人いる?」
「職業クエストで大丈夫ですよ~!」
「……僕も大丈夫」
タカヒロさんがパンッと両手を叩く。
「それじゃあ今日はアレクの職業クエの手伝いだな!」
「サンキュー! これでやっと防具が揃うわ~!」
今日のやることが決まって、ガタガタと皆立ち上がる。
カランコロンと音を立て、酒場を出た。
職業クエスト。
戦士や聖女など、ゲームにおける全ての職業はある程度レベルが上がると、段階的に試験のようなものを受ける事が出来る。
それぞれの職業でクリアすべき課題内容は異なり、レベルが高くなるとボス戦も行うこともある。
アレクさんはレベル50になったことでボス戦が発生するのだが、ボスを討伐するとご褒美アイテムとして防具が受け取れるようだ。
俺達は水都アクアから外へ出て、アレクさんの職業クエストダンジョンを目指し歩いていく。
目の前いっぱいに広がる草原をサクサク歩きながら、アレクさんが俺に話かけてきた。
「チロちゃんはレベル42だから、ちょっと戦闘が苦しくなるかもしれないけど……いいかな? 大丈夫?」
いいね。女の子を気遣えるとは、素晴らしい。
嬉しく思いながら俺はニコリと微笑み答えた。
「聖女のレベルは42ですけど、他職でパッシブスキルをいくつか取っているので、多分大丈夫だと思いますよ」
戦士スキルのおかげで防御とHP、攻撃力はそこそこある。
レベル50程度で出てくるボスに一撃で戦闘不能になる事はまず無いんじゃないかな?
さすがに取得スキル全部付けておくのは不自然すぎるから、まだいくつか外してるけど。
「へ~! そうなんだ! ステータスちょっと見せて貰ってもいい?」
「どうぞ~」
俺はステータスウインドウを開いて、アレクさんにウインドウをスライドさせて見せた。
「おっ本当だ~! これだけHPと防御力があれば大丈夫そうだ……ん?」
突然アレクさんが立ち止まり、口をパクパクさせている。
「アレク~! 止まってないで歩け~!」
「タカッ! こ……ここッこれ!!」
アレクさんが俺のステータスウインドウを指差しタカヒロさんに見せる。
タカヒロさんもステータスを覗き込むと、カッと目を見開き、直後にブルブルと震え出した。
(何だ? なんか変なものあったか?)
俺も近づき自分のステータスを覗き込む。
アレクさんが指差していたのは、HPや防御力では無く、装備のほうだった。
そして俺は二人の反応の理由を知ることになる。
「「せ…赤竜のピアス……」」
はっ!! しまったー!!
アクセサリーのこと失念してたー!!
赤竜のピアス。
二年前に追加されたボスがドロップするレアアイテムのことだ。
戦闘の際にスキル回しを一つでもミスると討伐できないと噂のボスで、討伐できたパーティーの数は二年経過した今でも三桁にも満たない。
討伐出来たとしてもそのアイテムを必ずドロップするとは限らない鬼畜仕様だった。
あまりにも討伐とドロップ難易度が高いので、その後運営は難易度を少し下げることを検討した。
しかし、検討しただけで今現在も難易度はそのままである。
「赤竜のピアス……?」
振り返ったタナカさんが、ポカンとした様子で俺を見ている。
こんなアイテム装備してるヤツがレベル42はおかしいだろ! 俺ぇ!
普段アクセサリー装備はアバター非表示に設定してるから、外すの完全に忘れてた。
どうしよう……どうやって誤魔化そうかな。えーとえーと……そうだ!
「これ貰ったんです!!」
「も……貰った……?」
「えっ!? これあげるヤツとかいんの!?」
「……」
大事なことなのでもう一度言おう。
「モラッタンデス」
「誰に?」
「誰だれ!? 俺めっちゃ気になるー!」
「……」
誰ってそんなの一人しかいない。
「<暁>っていうチームのチヒロさんに……」
「「「!?」」」
くっそー! 他に赤竜討伐した奴の名前なんて知らないんだよ!
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