姫プレイがやりたくてトップランカー辞めました!

椿原守

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38 俺の姫プレイとデート 1

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 ──炎都フレアの酒場にて、頭を抱えし者ありけり。

「どーすんだよこれ……」

 ──その者、名をチロと申す。桃色髪の少女の正体は、チヒロという男子おのこであった。


「おやおや~これは、また随分と有名になりましたね。チヒロ君」

 ウインドウを開いているマサトが、俺にそう告げる。
 ウインドウには、掲示板の書き込みや動画がいくつも表示されていた。

『<エクソダス>のレンが広場で求婚した!!』
『セイヤ&レツヤがチロりんって呼んでたぞ』
『チロって……前に、にゃる美配信で出てきたヤツじゃね? 確かチヒロの妹って言ってた気がするけど』
『チヒロ様の妹!?』
『で? もちろんOKだったんだよな?』
『それがその場にいたヤツの話だと、<暁>のトモヤもそこに現れて、チヒロ妹に求婚したって』
『ダブルプロポーズ!?』

「ぐぉおおう」と唸りながら、俺は更に頭を抱えた。
 おい外野! あっちこっちに書き込んでんじゃねぇえ!!
 俺の隣でサヨが団子を食べつつ「良いではないか」と言っている。

(ここの酒場……お茶だけじゃなく、団子も置いてるのか……)

「それで、うつけ? あの時は強制ログアウトで、返事を聞けなかったが、どちらにするのか決めたのか?」

 ニヤニヤしながら、サヨが俺を見る。

「どっちも無しで……」
「左様か。それも有りじゃろうなぁ。ただし」
「ただし?」
此度こたびのイベントで、そなたの元に届く結婚の申し込みの数は、数百……いや、数千になると思うが良いか?」
「マジか……」

 ガクリと俺の頭が落ちた。

 コラボカフェのゲリラ配信で『アカツキ』がチヒロだった事が、視聴者にバレたその後のことを少し話す。

 あの後、DFOのスレ板で『チヒロ復活か!?』という盛り上がりがあった。
 その影響もあってか、チロが街中を歩くと、無言のフレンド申請が飛んできたり、声をかけられ「お兄さんはいつゲーム再開するの?」と何度も、何度も、聞かれる事案が多発した。

 チヒロの事を気にしてくれる気持ちは嬉しいのだが、こう何度も聞かれると、うっとおしいと思う感情が生まれる。

 俺がこの事で少々、辟易していると気付いたサヨは、運営のウエディングイベント告知を見た時、すぐさまに俺の周囲が、今以上に五月蝿くなると考えたようだ。
 そして、ある考えを思い付き、すぐレンとトモヤ、マサトに連絡を取った。

 ──そのある考えとは

「名付けて『羽虫駆除作戦』じゃ!」

 団子の串を掲げるサヨの前に、コトリとお茶を置くマサト。
 串を皿に置き、サヨはズズズ……とお茶を飲む。

「うむ。団子には濃い緑茶が合うのぉ! さすが、マサトじゃ」
「お褒めに預かり光栄です。サヨ様」
「サヨ……羽虫駆除ってのは一体どういうことなんだ?」
「チヒロ君。羽虫と言うのは、君を少々困らせているプレイヤー達の事です」
「プレイヤー?」
「その方達を一発で黙らせる事が出来るように、今回サヨ様が、急遽レン君とトモヤ君にお願いしたんですよ」
「???」
「トップランカーチームの二人が求婚する相手に、真っ向から勝負する物好きは、そうそういません。 これで話しかけてくる羽虫達は、少し減るんじゃないですか?」

 ニコリと笑ったマサトが俺を見る。

「あー……」

 ようやく合点がいった。
 突然の公開プロポーズに。

「よく、レンもトモヤも話に乗ったな?」
「レンはお主に逃げられておったからな、こちらの提案は、むしろ好都合だったようじゃぞ? 少々、先走っておったが、まぁ結果オーライじゃ」
「トモヤ君も女性プレイヤーからの結婚打診が多く困っていたみたいですし」
「ついでに、二人も自分達の羽虫が駆除出来て、一石二鳥という事じゃな」
「あー……なるほどね。あれ? レンのとこの……にゃる美は?」
「レン君にとっては、羽虫って事なんでしょうね」
「…………」

 今のは聞かなかった事にしよう……。

『ピロン』

 サヨのフレチャ通知音が鳴る。
 メッセージをチェックしたサヨが俺を見た。

「さぁ、うつけ! 更に羽虫どもを減らすのじゃ!」
「そうですね。サヨ様の言う通り、ブンブンと五月蝿い虫は早めの駆除が良いですよ。チヒロ君」
「そういう訳で、お主は王都の庭園に行ってまいれ!」
「王都ぉ~? 何しに行くんだよ……」
「レンとトモヤとお主の三人で、デートじゃ! 存分にイチャイチャするが良いぞ?」
「ええ……?」

 ガタガタと席を立ち、サヨとマサトは俺の腕を掴んだ。

「えっ……何?」
「行かないという選択肢は無いぞ? うつけ。妾もついて行くから、心配するでない」
「私もいますから、心配せずイチャイチャして下さいね。チヒロ君」
「あ、え? ちょっと、待って?」

 二人にずるずると引きずられていく。

 男とイチャイチャじゃなく、女の子とイチャイチャしたい。
 やっぱり、無かった事にしたい。
 そんな俺の意思なんて、二人はもう聞いてない。

 そして、羽虫プレイヤーが近寄らないという事は、俺の姫プレイが絶望的になるという事。
 レンも、トモヤも、サヨも、マサトも、そうなる事を分かっていてやっているという事に、またしても俺は気付いていないのだった。
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