姫プレイがやりたくてトップランカー辞めました!

椿原守

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66 俺の姫プレイとPvP 後編

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「なぁ、なんでセイヤが赤文字になってんだ?」

 観覧席でスクリーンばかり見ていたギャラリーが、ようやくセイヤの戦闘不能に気がついた。

「え? マジ? 本当だ。<スノウ>の銃士ってそんな強いのか?」
「ヒーラー回収に向かってたんだろ? じゃあ、守ってそうなったんじゃねーの?」
「えー……? 銃でそんなダメージ出る火力技なんて、あったっけか?」
「あるにはあるけど、あれはボス向けだろ? PvPみたいにちょこまかと動いてる相手には向かないし、外すとMPもごっそり減って、ダブルでキツイから使う奴はいねーよ」
「セイヤが落ちる前に、回復魔法は間に合わなかったのか?」

 セイヤが戦闘不能になった瞬間を見ていないため、各々が推測で語っている。


 レンとレツヤも自分達の闘いが精一杯で、セイヤがどうやって戦闘不能になったのか分からない。
 分からないまま、<エクソダス>のヒーラーがレン達に合流する。
 <スノウ>の銃士もコウヅキ達に合流した。

 <スノウ>四人に対して<エクソダス>は三人。

 セイヤが落ちたのは痛いが、闘えないこともない。
 レツヤは回復の仕事を自チームのヒーラーに任せて、攻撃側に転ずる。
 召喚獣を呼び、風魔法を唱え、全体攻撃を仕掛けた。

 <スノウ>の三人はレツヤを狙う。
 遠距離からの銃と闇魔法、近距離からのサーベル攻撃。
 三人の集中砲火に、レツヤの体力がごっそり削られる。

(早く、回復を……!)

 そう思って、レツヤがヒーラーを見た。
 ヒーラーの回復魔法がレツヤの元に届く──が、量が少ない。

 レンへ飛ばす回復魔法は『大』
 レツヤへ飛ばす回復魔法は『中』

 多彩な魔法とスキルのエフェクト、剣の軌跡が交差する混戦の中、遠い観覧席で見ているギャラリーは、その異変に気づかない。

 中回復では、畳みかけられる攻撃のダメージを全てカバーできない。
 レツヤは、たまらず魔法詠唱短縮スキルを使い、自分に回復を重ねる。
 そして次に攻撃魔法を唱えようとしたが、不発。魔法が発動しない。

 自分のステータスを見るとMPが一桁。
 今までMP回復薬を飲む暇も無かった。

「──しまっ……!」

 レツヤの名前が『赤』に変わる。
 次にヒーラーの名前が『赤』に変わった。


「あははははは!! ほらぁ! 俺が言った通りじゃないか!」
「くっ!」

 レンは正面、側面、背後と立て続けに襲いかかられる。
 ダメージの蓄積により、ガクリとステージに片膝をついた。レンの体力もあとわずか。

 コウヅキはスキルを最大に回し、深紅の大剣をレンの首めがけて、振り下ろす。


「──だから、お前は弱ぇんだって」


 レンの名前が『赤』くなった。
 そして試合終了の合図が鳴る。


 観客席では「チヒロさんやっぱつえぇえ!」と湧き上がった。
 周囲の興奮が冷めやらぬ中、静かな怒りを瞳にたたえたサヨが「……ロビーへ行く」と席を立つ。
 俺とトモヤ、マサトもその後をついて行った。

 ***

「お前ッ! どういうつもり!?」

 ロビーへ行くと、セイヤがヒーラーの胸倉を掴んで、壁に押し付けていた。
 レンとレツヤは今にも殴り掛かりそうなセイヤを見て、止めようとしている。
 ヒーラーは目を逸らして「……やめてくださいよ」とボソリと漏らしていた。

 サヨはゆっくり歩いてヒーラーの前に行くと、顔を上げ、ソイツの目を真っすぐ見つめた。

「なにゆえ……なにゆえ、そなたは自分のチームを裏切るような真似をしたのじゃ……何か、理由があるのではないか?」
「……サヨ……さん」

 優しそうな男が眉を下げ、サヨに申し訳なさそうな顔をしている。

(やはり……理由が……)

 あるのか? と、俺がそう思った時、<スノウ>がロビーに現れた。
 <スノウ>を見て、ヒーラーの顔がパッと明るくなる。

 ヒーラーは胸倉を掴んでいたセイヤの手を振りほどき、コウヅキへ駆け寄った。

「チヒロさん!」
「やあ、さっきはどうも。<エクソダス>のヒーラーさん」
「やだなぁ~! チヒロさん。そんな他人行儀な……やめてくださいよ。これから同じチームになるんですから」

 顔を紅潮させたヒーラーの言葉に、俺達は固まった。
 セイヤとレツヤが「「同じチームって何だよ?」」と言っている。

「同じチーム? 君と俺が?」
「はい! そう言ってくれましたよね?」
「……そんなこと言ったかなぁ?」

 ニコニコと笑うコウヅキの後ろで、<スノウ>の三人もニヤニヤしている。
 ヒーラーは戸惑いながら、コウヅキと<スノウ>の顔を交互に見た。

「えっ? だって……協力したら、ボクをトップヒーラーとして迎えてくれるって、言ってくれましたよね?」


 ニィ……とコウヅキの口が歪んだ。その顔でレンや俺達の顔を見渡す。
 セイヤ、レツヤ、サヨが怒りの形相をあらわにしている。
 そんな中、レンは冷静に「……なるほどな」と声を発した。

「……八百長か」
「人聞きが悪いなぁ~そんなことはしていない。あー……そうだ、<エクソダス>のレン。お前、負けたんだから、何でも言うこと聞くんだよなぁ?」
 
 コウヅキは楽しくてたまらないといった様子で、ニタニタとした笑みを絶やさない。

「レン! ズルしたヤツの言うこと聞く必要はないよ!」
「レン! 卑怯者の言うこと聞く必要はないよ!」

 セイヤとレツヤが、そんなものは無効だと叫ぶように言う。
 レンはそんな二人を制して、コウヅキと向き合った。

「……男に二言はない。それで、内容は?」
「そうだなぁ~……」

 コウヅキは腕を組み、右手の人差し指で二の腕をトントンと叩いた。
 宙に浮いたアイツの視線が、俺を捕まえる。
 スッとトモヤが前に出て、その背に俺を隠した。

「じゃあ、<エクソダス>の解散……とか?」

 コウヅキは俺から目を離さず、歪んだ口でそう告げる。
 レンは、はぁ……と息を吐いて「わかった」と返事をした。

「「レン! なんで!?」」

 双子は顔色を変えて、レンに詰め寄る。
 周りがざわついてる中、俺は静かに閉じた瞼の奥で、ふつふつとしたものが沸いてくるのを感じた。

(……ちょっと、待て)

 八百長した上に、<エクソダス>の解散……? なんだそれ?
 
(ふざけんなよ……クソ野郎……)

 俺はゆっくり瞼を開けると、トモヤの背中を押し、前に出た。

「チヒロ、ダメだよ。アイツの狙いは君なんだから」

 静止しようとするトモヤの手を振りほどき、俺は走った。握りしめた右拳に全体重を乗せて、コウヅキを狙う。

 『──ガツッ!!』

 力に任せて、その頬を殴り倒した。

「いっ……たいなぁ。チロちゃん?」

 体勢を崩したコウヅキの胸倉を、俺はグッと掴む。
 手足はスッと冷えて寒いくらいなのに、目の奥と頭はぐつぐつと煮えたぎっていた。

 ──コウヅキ、お前は本当に俺をよく研究しているよ。

 コウヅキの額と鼻頭がぶつかるように、顔を引き寄せる。
 射抜くような怒りの視線で、俺はコウヅキを睨みつけた。

「劣化コピーが、いつまでも調子に乗ってんじゃねーぞ」

 ──俺はゲームを舐めるヤツも、人を舐めるヤツも……大っ嫌いなんだ!!
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