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95 俺の姫プレイと告白
しおりを挟む「ゲームやってるとき、自分が一番強いと思ってるやつ……? それがどうかしたのか?」
俺はレンの顔を見た。
レンは目の前の海を眺めている。
「お前、コラボカフェの後に行った居酒屋で、俺のことを『俺より絶対強いはずなんだ』と言ったこと覚えているか?」
「……そんなこと言ったっけ?」
「言った。まさか、ずっと追いかけてたお前に、俺は認められていたなんてな」
「ん? 認めた??」
「ああ。自分が『一番強い』と思っているお前が、唯一『自分より強い』と思ってるのが俺なんだろう?」
「え? ……あ!?」
「そう思ってくれていたんだと気づいたのが、レツヤとお前との話を聞いた時だったんだ。嬉しかったよ」
そういや……あのとき、コイツ俺をじっと見つめてきた気がする……。
そうか、このせいだったのか。
特に何かを考えて言ったわけじゃないはずなんだが、改めてそう言われると、恥ずかしい気がする。
自分でも気づいてなかったことに、気づかされたという恥ずかしさだ。
レンが髪をかきあげて、俺を見る。
「少し早いが、そろそろ行くか」
「そういや聞いてなかったけど……どこに行くんだ?」
「すぐそこだ。着いたら分かる」
駐車場に戻り、車で移動する。
車が橋を渡ると、ものの五分で目的地へ到着した。
「……水族館?」
時計を確認すると、あと十数分で18時だ。
こんな時間に水族館?
それとも目の前の海を見に来ただけ……?
海はでも……さっき歩いたときに見たぞ?
「レン。水族館って今から行っても、あんま見れないんじゃねーの? 都内ならまだしも……」
「いや、ここは土日に夜の水族館をやってるんだ」
(夜の……水族館……!?)
**
時間になり、俺達は車を降りて、水族館の中に入った。
昼間とは一変して、暗い水族館は新鮮だ。
トンネルのようになっている真っ暗な通路には、ボール型の丸い照明がいくつも置いてあり、足元をほんのり照らす。
トンネルを抜けて俺の目に飛び込んできたのは、暗闇の中に浮かぶ大きな水槽、そこを泳ぐさかな達。
イワシの鱗がライトアップされた明かりを反射している。
それが大群となって泳ぐと、まるでミラーボールのようにキラキラと輝いていて、とても綺麗だった。
(昼と夜でこんなに印象が変わるんだ……すげぇ)
ゆっくりと館内を回る。
クラゲ達のいる水槽は、まるで宇宙空間の中にいるような気分になった。
「チヒロそろそろショーが始まるぞ。行くか」
「えっ!? 夜もイルカショーってやってんの!?」
俺達はイルカショーが行われる場所へと移動した。
お客さんは親子連れもいるが、女友達同士やカップルが多いようだ。
少し暗い場所にいても、隣にいるこの男はやはり目立つ。
こちらを見ながら、ヒソヒソと喋っている女の人の姿が目に入った。
ショーが始まる。音楽は夜に合わせているのか、ジャズっぽい曲を使っていた。
明るくノリの良い曲の中に、少しだけムーディーな雰囲気がある。
イルカやアシカたちのショーは、あっという間に終わった。
もう少し見たかったな……と後ろ髪を引かれながら、俺は水族館を後にした。
**
家路へと向かって走る車の中で、俺は今朝あったことをポツリポツリと話し始めた。
レンに八つ当たりした、その原因を。
トモヤの気持ちはトモヤのものだから、そこはできるだけ隠して喋った。
しかし、レンはトモヤが俺に抱いている気持ちを、とっくの昔に気づいていたらしい。
レンのほうから「告白でもされたか」と言ってきた。
ここでも俺の鈍感っぷりを再確認することになり、はぁとため息をついた。
行きと同じように一時間以上かけて、ようやく自宅マンションへと到着。
俺はシートベルトを外しながら、改めてレンにお礼と謝罪を口にした。
「水族館に連れて行ってくれて、ありがと。楽しかった。あと、今日はいきなり押しかけて、ごめん」
「……気にするな。少しは気分転換になったか?」
「まぁ、ね」
朝のことを考えると、申し訳ない気持ちや自分のバカさ加減に凹みそうになるけど、あの直後に比べれば、今の精神の状態はまだ良いと思える。
そうやって思いをはせているうちに、気づけばレンが俺の手を握っていた。
「……チヒロ。改めて言うが、俺はお前のことが好きだ」
「え、あ、うん」
真剣な顔で言われ、心臓はドキリと跳ねる。
「返事は急がない。ゆっくりでいい。今の状態がいいって言うなら、それでもいい」
「……そう……なの?」
「それはきっとトモヤも一緒だろう。アイツはお前が自ら行動したことにショックを受けて、焦っただけだと思う」
「……そう……なのかな」
「前にも言ったが……お前はもう少し考えて行動しろ。思いつきで、動きすぎなんだ」
そう指摘され、俺はぐうの音も出ない。
(ごもっともです……はい……)
俺は車のドアを開けて、外へ出た。
レンが後ろのトランクを開け、ビニール袋に包んだびちょ濡れのデイバッグを取り出す。
俺はそのバッグが入った袋を受け取った。
「……昼間に少し言ったことだが、ゲームも、それ以外でも、執着の少ないお前の中に、俺という存在が引っかかっているということが分かって、俺は嬉しい」
「…………」
(そんな笑顔で言うことかよ……)
恥ずかしいヤツだな……と思って、目を逸らす。
するとレンは俺の顎を掴んで、キスをした。
ちゅっと一度だけ音をたてる。
「なっ!?」
「悪いな、我慢できなかった。トモヤには同情する部分もあるが……俺も、お前を誰かに渡すつもりはない」
レンはもう一度、俺にちゅっとキスをした。
「おいっ!!」
「チヒロ。ひとつだけ言っておく、出来るだけ心をニュートラルにしてから考えろよ。凹んだときは、美味いものでも食って浮上させろ。そして、それから考えろ。凹んだままじゃ、良い答えは出てこないぞ」
そう言うとレンは「じゃあな」と手を上げて、車に乗り込み去って行った。
俺は濡れたバッグの入った袋をお腹に抱えたまま、顔を真っ赤にしている。
「──返事はゆっくりでいい、心をニュートラルとか言っときながら、手ぇ出してんじゃねぇよ! バーカ!!」
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