姫プレイがやりたくてトップランカー辞めました!

椿原守

文字の大きさ
95 / 202

95 俺の姫プレイと告白

しおりを挟む

「ゲームやってるとき、自分が一番強いと思ってるやつ……? それがどうかしたのか?」

 俺はレンの顔を見た。
 レンは目の前の海を眺めている。

「お前、コラボカフェの後に行った居酒屋で、俺のことを『俺より絶対強いはずなんだ』と言ったこと覚えているか?」
「……そんなこと言ったっけ?」
「言った。まさか、ずっと追いかけてたお前に、俺は認められていたなんてな」
「ん? 認めた??」
「ああ。自分が『一番強い』と思っているお前が、唯一『自分より強い』と思ってるのが俺なんだろう?」
「え? ……あ!?」
「そう思ってくれていたんだと気づいたのが、レツヤとお前との話を聞いた時だったんだ。嬉しかったよ」

 そういや……あのとき、コイツ俺をじっと見つめてきた気がする……。
 そうか、このせいだったのか。

 特に何かを考えて言ったわけじゃないはずなんだが、改めてそう言われると、恥ずかしい気がする。
 自分でも気づいてなかったことに、気づかされたという恥ずかしさだ。

 レンが髪をかきあげて、俺を見る。

「少し早いが、そろそろ行くか」
「そういや聞いてなかったけど……どこに行くんだ?」
「すぐそこだ。着いたら分かる」

 駐車場に戻り、車で移動する。
 車が橋を渡ると、ものの五分で目的地へ到着した。


「……水族館?」


 時計を確認すると、あと十数分で18時だ。

 こんな時間に水族館? 
 それとも目の前の海を見に来ただけ……?
 海はでも……さっき歩いたときに見たぞ?

「レン。水族館って今から行っても、あんま見れないんじゃねーの? 都内ならまだしも……」
「いや、ここは土日に夜の水族館をやってるんだ」

(夜の……水族館……!?)

 **

 時間になり、俺達は車を降りて、水族館の中に入った。
 昼間とは一変して、暗い水族館は新鮮だ。
 トンネルのようになっている真っ暗な通路には、ボール型の丸い照明がいくつも置いてあり、足元をほんのり照らす。

 トンネルを抜けて俺の目に飛び込んできたのは、暗闇の中に浮かぶ大きな水槽、そこを泳ぐさかな達。
 イワシの鱗がライトアップされた明かりを反射している。
 それが大群となって泳ぐと、まるでミラーボールのようにキラキラと輝いていて、とても綺麗だった。 
 
(昼と夜でこんなに印象が変わるんだ……すげぇ)

 ゆっくりと館内を回る。
 クラゲ達のいる水槽は、まるで宇宙空間の中にいるような気分になった。

「チヒロそろそろショーが始まるぞ。行くか」
「えっ!? 夜もイルカショーってやってんの!?」

 俺達はイルカショーが行われる場所へと移動した。
 お客さんは親子連れもいるが、女友達同士やカップルが多いようだ。

 少し暗い場所にいても、隣にいるこの男はやはり目立つ。
 こちらを見ながら、ヒソヒソと喋っている女の人の姿が目に入った。

 ショーが始まる。音楽は夜に合わせているのか、ジャズっぽい曲を使っていた。
 明るくノリの良い曲の中に、少しだけムーディーな雰囲気がある。


 イルカやアシカたちのショーは、あっという間に終わった。
 もう少し見たかったな……と後ろ髪を引かれながら、俺は水族館を後にした。

 **
 

 家路へと向かって走る車の中で、俺は今朝あったことをポツリポツリと話し始めた。
 レンに八つ当たりした、その原因を。

 トモヤの気持ちはトモヤのものだから、そこはできるだけ隠して喋った。
 しかし、レンはトモヤが俺に抱いている気持ちを、とっくの昔に気づいていたらしい。
 レンのほうから「告白でもされたか」と言ってきた。
 ここでも俺の鈍感っぷりを再確認することになり、はぁとため息をついた。


 行きと同じように一時間以上かけて、ようやく自宅マンションへと到着。
 俺はシートベルトを外しながら、改めてレンにお礼と謝罪を口にした。

「水族館に連れて行ってくれて、ありがと。楽しかった。あと、今日はいきなり押しかけて、ごめん」
「……気にするな。少しは気分転換になったか?」
「まぁ、ね」

 朝のことを考えると、申し訳ない気持ちや自分のバカさ加減に凹みそうになるけど、あの直後に比べれば、今の精神の状態はまだ良いと思える。
 そうやって思いをはせているうちに、気づけばレンが俺の手を握っていた。

「……チヒロ。改めて言うが、俺はお前のことが好きだ」
「え、あ、うん」

 真剣な顔で言われ、心臓はドキリと跳ねる。

「返事は急がない。ゆっくりでいい。今の状態がいいって言うなら、それでもいい」
「……そう……なの?」
「それはきっとトモヤも一緒だろう。アイツはお前が自ら行動したことにショックを受けて、焦っただけだと思う」
「……そう……なのかな」
「前にも言ったが……お前はもう少し考えて行動しろ。思いつきで、動きすぎなんだ」
 
 そう指摘され、俺はぐうの音も出ない。

(ごもっともです……はい……)

 俺は車のドアを開けて、外へ出た。
 レンが後ろのトランクを開け、ビニール袋に包んだびちょ濡れのデイバッグを取り出す。
 俺はそのバッグが入った袋を受け取った。

「……昼間に少し言ったことだが、ゲームも、それ以外でも、執着の少ないお前の中に、俺という存在が引っかかっているということが分かって、俺は嬉しい」
「…………」

(そんな笑顔で言うことかよ……)

 恥ずかしいヤツだな……と思って、目を逸らす。
 するとレンは俺の顎を掴んで、キスをした。
 ちゅっと一度だけ音をたてる。

「なっ!?」
「悪いな、我慢できなかった。トモヤには同情する部分もあるが……俺も、お前を誰かに渡すつもりはない」

 レンはもう一度、俺にちゅっとキスをした。

「おいっ!!」
「チヒロ。ひとつだけ言っておく、出来るだけ心をニュートラルにしてから考えろよ。凹んだときは、美味いものでも食って浮上させろ。そして、それから考えろ。凹んだままじゃ、良い答えは出てこないぞ」

 そう言うとレンは「じゃあな」と手を上げて、車に乗り込み去って行った。
 俺は濡れたバッグの入った袋をお腹に抱えたまま、顔を真っ赤にしている。

「──返事はゆっくりでいい、心をニュートラルとか言っときながら、手ぇ出してんじゃねぇよ! バーカ!!」
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

ファントムペイン

粒豆
BL
事故で手足を失ってから、恋人・夜鷹は人が変わってしまった。 理不尽に怒鳴り、暴言を吐くようになった。 主人公の燕は、そんな夜鷹と共に暮らし、世話を焼く。 手足を失い、攻撃的になった夜鷹の世話をするのは決して楽ではなかった…… 手足を失った恋人との生活。鬱系BL。 ※四肢欠損などの特殊な表現を含みます。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

番を囲って逃さない

ネコフク
BL
高校入学前に見つけた番になるΩ。もうこれは囲うしかない!根回しをしはじめましてで理性?何ソレ?即襲ってINしても仕方ないよね?大丈夫、次のヒートで項噛むから。 『番に囲われ逃げられない』の攻めである颯人が受けである奏を見つけ番にするまでのお話。ヤベェα爆誕話。オメガバース。 この話だけでも読めるようになっていますが先に『番に囲われ逃げられない』を読んで頂いた方が楽しめるかな、と思います。

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

処理中です...