姫プレイがやりたくてトップランカー辞めました!

椿原守

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番外編

24 俺の姫プレイと予言の書 10

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「──覚えてろよッ!!」

 闘技場ステージからロビーへと戻った<イカロス>のツバサは、顔を真っ赤にして、尻の辺りを押さえながら、捨て台詞を吐いて去って行った。

 サヨは、ホホホと笑って、「覚えておるのは、お主だけじゃ」と言っている。
 煽り散らかすサヨを見ながら、トモヤは俺に向かって口を開く。
 
「これで一応、チヒロの周りが落ち着くってことかな?」
「んー……そうなるのかなぁ?」
「あれだけ自信満々だったしねぇ。裏の住人のことだから、賭けもやってたんじゃない? もし、今頃、スレも荒れてるとしたら、しばらくは静かじゃないかな」
「んー……」

 俺の気のない返事に、トモヤが「どうしたの?」と言葉を続ける。
 
「不完全燃焼すぎる……せっかく、サヨの<竜騎士>だったのに、大技一発で終わってしまった」
「ああ……なるほど。それでさっきから、変な顔してたんだ」
「トモヤぁ~!」
「はいはい。今日はもう終わりでしょ。明日からなら付き合うよ」
「さすが!! 相棒!! わかってる!!」
「でも、平日なんだから、終わりの時間はちゃんと決めてからやってね」
「う……! わかった。じゃあ……0時まで」

 モヤモヤしている俺のことに気づいたトモヤは、「トモヤぁ」だけで、その後に続く言葉が分かっていたようだ。

『不完全燃焼だから、俺もPvPで闘いたい』

 連戦前提なのも、トモヤは分かってた。
 だから、翌日の仕事に影響が出ないように、終わりの時間を決めろ、と先に釘を刺してきたんだ。
 俺の返事を聞いたトモヤは、サヨとマサトに声をかける。

「サヨとマサトは、明日はPvP平気?」
「妾は予定があるから無理じゃな」
「私は、サヨ様の女帝っぷりをノートに綴らなければなりませんので、無理ですね」

 糸目のマサトが、カッと目を見開く。
 コイツが目を開くときは、逆らってはいけない。

 もし、逆らって邪魔すると……い、言えない。
 逆らったことを死ぬほど後悔するとだけしか言えない。

「マサトは相変わらず、歪みねぇな……」
「サヨ様をこの世で愛しているのは、私だけですからね」
「もし、あのツバサってのが、お前みたいになって、サヨ信者として現れたら……どうする?」
「えっ? そんなの決まってるじゃないですか。どんな手を尽くしてでも、兄に垢BANさせますよ」
「酷い!!!」
「そもそも、裏の住人なんですよ? 叩けば、それはもう運営が無視できないよな埃が、たくさん出るに決まってるじゃないですか。むしろ、なんの利益にもならないようなゴミク……いえ、ゴキブリを退治できるのですから、私が兄に感謝されることは、間違いありませんね」
「ゴミクズをゴキブリに言い直しやがった」
「なにか問題でも?」
「イイエ。ベツニ」

 ニッコリ笑うマサトから目を逸らす。
 お前に突っかかるつもりはないと、早々に白旗を振っておいた。
 隣にいるトモヤは顎先に手を当てて、考え込む。

「二人がダメなら、どうしようか。別の日に……するつもりはなさそうだね」

 俺はトモヤに向かって、腕をクロスし、バツと意思表示をする。
 別の日にするつもりは、全くございませんっ!


 ロビーの一角で、わっ! と声が上がる。
 PvPのランキングが更新されたようだった。

 チラッとそっちを見て、上位にでかでかと表示されていたチーム名を見る。
 そこに上がっていたのは、見知った名前だった。

(──あ。そうか。アイツのとこなら)

 そう思った俺は、トモヤに話しかける。

「なぁ、レンのとこから誰か引っ張ってこれないか?」
「レンのところから?」
「セイヤ、レツヤ辺りは、暇してそうじゃん?」
「……まぁ、あの二人なら確かに有りだね。実力も申し分ないし」
「よし! それじゃ、善は急げ! ちょっと聞いてみる!」

 俺はそう言うとウインドウを立ち上げて、ピピピッとメッセージを送った。
 トモヤは「ん……?」と首を傾げて、それから口を開く。

「チヒロって、あの二人とフレンドだったっけ?」
「いや、フレじゃないけど?」
「えっ? ……じゃあ、誰にメッセージを……って、まさか──」

 トモヤがそう言いかけたとき、『ピロン』と通知音が鳴った。
 メッセージを送った相手からの返事が届いた音だった。

 俺はそれを開いて、内容を確認する。

「え……? レンがPvPに付き合うのか……?」

 ボソリをそう漏らすと、トモヤが腰に手を当てて俯いた。「あー……」と言いながら、特大のため息をはく。サヨは、ホホホッと笑い、マサトもクスクスと笑っていた。

「うつけ。お主のその行動は、もはや分かって、やっておるのではないか?」
「チヒロ君は、あんなに嫌っているにも関わらず、自らフラグを立てにいきますねぇ」
「なんだよお前ら。なに言ってんの? つーか、レンがPvPやるのなら、ちょっとこっちの火力が高すぎるな……」

 別に俺は、弱い者いじめのようなものが、したいわけじゃない。
 言葉は悪いが、格下相手に無双したいわけじゃないんだ。

 頭を悩ませていると、トモヤが別案を出してくる。

「不完全燃焼のモヤモヤを発散するのが目的なら、ボスを連戦とかでもいいんじゃない?」
「ボスかぁ~……って、言っても……」

 レン達は、まだ赤竜のピアスは持っていないはずだ。でもそれは、レンが前衛をやって取るべきだろう。今回は俺が、前衛をやりたいんだ。ストレス発散。モヤモヤ退散。だから、赤竜はパスかな。アイツは連戦向きじゃない。疲れるし。

「そうなると……妥当なところは、氷竜ってところか?」
「そうだねぇ。三戦くらいは、いけそうじゃない?」

 予定変更。PvPから氷竜討伐にすることにした。それをレンに伝えると『了解』と返事が飛んでくる。
 
 俺達も闘技場をあとにした。炎都の酒場に戻ると、マサトはすぐにログアウトした。サヨも少しして落ちていった。俺は明日の氷竜戦に備えるべく、装備の耐久値チェックや回復薬のチェックを行う。トモヤも同じように装備品の類をチェックしているようだった。

「あ。そうだ。トモヤ……お前、病み上がりじゃん。明日、氷竜を連戦って大丈夫なのか?」
「うん。平気だよ。咳も出ないし、鼻もそんなに出てないから」
「お前って、あんまり自分から体調悪いとか言わないじゃん……だから、ちょっとなぁ……」
「チヒロ。前にも言ったと思うけど、僕は君に嘘は言わないよ」
「や、まぁ、そうなんだけど……」

 でも、コイツって割と俺を優先するところがあるからなぁ。
 うちの相棒様は、隠すのも上手いと思うんだ。これは俺の勘。

「──そうだ! 俺、明日はヘッドギア持って、お前ん家に行くわ!」
「……平日なのに? 次の日も仕事じゃないの」
「お前が嘘言ってたら、氷竜は中止。俺もすぐに帰る。嘘じゃなかったら氷竜やって、そのままトモヤ家に泊まってく」

 ニシシと笑って、そう言うと、トモヤは呆れ顔になった。

「一度言い出したら、チヒロは聞かないからね。お好きにどうぞ」
「おっけー。わかった。それじゃ、俺も落ちる。また明日な!」
「うん。僕も落ちるよ。気をつけて来てね」
「おう!」

 俺は装備を表示させていたウインドウを閉じると、ログアウトボタンを押した。
 ヘッドギアとリストを外して、適当なバッグに入れて、会社のカバンの隣に置いておく。

 それから、歯磨きをして布団に入ってから、電気を消した。
 明日のことを楽しみにしながら、眠りにつくのだった。
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