ヒョロガリ教師だが不良だらけの高校に赴任することになった

りなっくす

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いちじかんめ~新米教師「淀・来」、世紀末の洗礼を受ける~

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曇り空、半壊した家の塀、道に転がるゴミをついばむカラスの大群。ふと路地裏に目をやれば、怪しげな男たちが一斉にこちらをギロリと睨む。ここは日本で最も治安が悪い地域である、世紀末地区。

 俺は何度も後ろを振り返ったりしながら、おっかなびっくり歩みを進める。石橋を叩いて渡る、なんてレベルじゃないまでに。そう、こんな恐ろしい地区に存在する小学校、つまり新たな職場に向かっていた。

「あぁ・・・なんてところなんだ・・・」

 俺は世紀末小学校に通勤中の新米教師、淀・来よどみ・らい24歳独身。小さい頃から小学校の教師になるのが夢だった。これにはちゃんとした理由がある。当時の子どもたちは教師に対する信頼が全く無くて、不良なんかもよく居た時代だった。

 俺はどちらかと言うと、不良の威をかりてイキってたキョロガキだったけど、己の肉体のみでも何かと先生に反発していた。まあ、周りが反発しているからそれに流されて便乗していたっていう、恥ずかしいキョロ充的な理由なんだけども。

 ある日の臨海学校、俺は最後の小学生生活のその日、海に溺れた。その時、普段は頼りない先生が海に飛び込んで必死になって俺を救ってくれた。あれ以来、俺は小学校の教師になることを決意し、がむしゃらに頑張った。

 後に四年制大学で教育の学士を取得し、その後やや道を外れたが、実家で居候させてもらいながら教員免許を取得した。そして、新米のくせにいっちょ前に日本の教育体制に不満があった僕が行き着いた先は、ここ、世紀末小学校だった。そして・・・。

「ゴルラァ! 邪魔だ邪魔だ! 轢かれてぇのかこのヒョロガリ!」

 後ろから炸裂するクラクションと怒号。僕は恐ろしくなってひゃっと横に避けた。僕の前を爆走して通っていく、これは・・・護送車? いや、しかし・・・車体をよく見ると『世紀末高等学校登下校バス』とデカデカと白のペンキでなぐり書きされていた。

 車内がちらりと目に入る。中には筋骨隆々な男たち。顔に傷がある。女性も居るがドSな格好に身を包み、手にはタバコ。まてまて、あれは銃か? 上半身ハダカで、体に弾丸ベルトを巻き付け、肩に銃を乗せている者も居る。これが高校の通学バスだって? 高校に通学バスがあることも驚きだが、なによりあれは凶悪犯罪者の護送にしか見えない。それをボーッと眺めているときだった。俺にまたも不運が降り掛かった。

「おい、おめえ・・・俺の家の前でなに油売ってんだ?」
「・・・へ?」
 ボロいプレハブ小屋・・・いやいや彼にとっては家、から出てきたのは巨大な男だった。あまりの恐怖に俺は尻もちをついた。

「いえいえいえいえ! 違うんです!」
「お前なんか腹が立つな。死ぬまで殴らせろ」
「・・・!」

 大男はニヤリと笑うと、何のためらいもなく岩のような拳を振り上げた。その時だった。

「その手を止めろ。さもないと命を貰い受ける」

 声がして恐る恐る目を開ける。大男の顔が真っ青になっていた。この山のような男を震え上がらせた声の正体を見ると、それは美少女だった。黒髪のロングヘアーで前髪ぱっつんの、ややツリ目気味で白い肌と琥珀色の瞳。何よりも、この美ボディとそれを強調する如し露出の多いレザーを基調にしたセクシーファッション。というかこれほぼ水着だろ! こんな恐ろしい地域でこれは浮きすぎている、と俺は彼女をガン見しながら思った。

「お、おめえはスクールカーストのファーストプレイス一軍に君臨する、ファーストの・・・牧野・澪まぎの・れい!」
「私の質問はわかりにくかったかしら? その手を引っ込めるのか、引っ込めないのか」

 美少女は大男に黒い刀の先を向け、そう語気を強めた。

「へぇへぇ、すいやせん。ちいとムシャクシャしたもんで・・・あははっ。刀をしまっちゃあくれやせんか、この地域のイロハを回覧板かわりに教えてやっただけですよははっw」

 大男が自分の背丈より遥かに小さい美少女から、ゴマをするような態度で下がっていく。そして大男は家の中へ消えていった。数秒後、その家から悲鳴が聞こえてきた。聞き覚えのない男の絶叫だった。

「あ、ありがとう・・・助けてくれて」
「どういう理由でここに来たかは知らないけど、早く出ていったほうが身のためね」
「はい?」

 澪は長い髪の毛が風でなびく。僕は何故、彼女がこんなことを言うかわからなかった。しかし見ごたえのある美人だ。俺がびっくりして固まっていると、彼女は続けた。

「さっきの男は、この地域を縄張りとするギャング、”ノストラ・ブラザーフッドに所属するギャングで、死体処理屋よ。ここは治外法権だから、あなたみたいな人が居たら良いカモにされるわ」

「いや、警察とかは? 正義はどこにあるんだ!?」
「強いもののみがこの地域の正義よ。そんなことよりちょっとまってあなた、その手に持っているものをよく私に見せて」

 澪さんが俺の前に立って腕を組む。彼女が気になっているのは、俺が手に持っている黄金の生徒名簿だった。これは、世紀末小学校の校長が俺が小学校入りするためにと郵送で送ったものだった。見た目は派手だが、中身は何の変哲のない自分が担当するクラスの生徒の名前と顔写真だ。ただ、生徒たちの顔が全員怖すぎるせいで、賞金首リストか警察署の犯罪者情報にしか思えないが・・・。澪さんは、黄金の生徒名簿をじっくりと見つめた後、俺を一目置くようにこう言った。

「へえ、あなたは成し遂げられる人物ってわけね。この黄金の名簿は、学校長が認めた人間に送るものよ。新しい先生ってわけね。でも、調子に乗らないで。黄金の名簿を授かった者の中にも、その命を落としたものはいくらでも居たわ」
「よくわかったよ、この世紀末地域では何が起こっても不思議じゃない。今まさに俺も、その命を落とした者になるところだったんだから」
「飲み込みが早い教師ね。あなたが私の担任だったら良いのだけれど。さあ、世紀末高校まではあと5km。遅刻したくないから私はお先に」

 澪さんは、そういって黒いバイクに跨ると、思いっきりふかし始めた。ブオンブオンと地鳴りのような音がこだまする。

「まてまて! こんな猛獣の檻の中みたいなところに俺を置いてかないでくれ!
さっき助けた意味がないじゃないか!」
「助けてないわよ。困ってる人が居たから手を差し伸べただけよ」
「いやそれ助けたってことだから!」
「ごめんなさい、私国語が苦手なの。だから難しいことはよくわからないわ。それじゃ、また」

 猛スピードでバイクは爆走していった。俺を置き去りにして。
しかし、俺は別の感情に震えていた。そんな強い気持ちを吐き出すか如く、俺は叫んだ。

「コラ!! バイク通学なんて規則違反だぞ!!!!」

 その後、なんとか5kmの道のりを走破し、高校に到着した。しかし、そこに待ち受けていたものは、世紀末ならではの手厳しいものばかりだったのことを、このときの俺はまだ知らない。
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