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にじかんめ~ジャッカル学校長のありがたいお言葉~
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そびえ立つ灰色の壁に、その両端には中世ヨーロッパに登場しそうな監視塔が構えており、かつ壁の周りには茂みのように張り巡らされた有刺鉄線。その門の壁には、世紀末区立世紀末高等学校と、書道でお目にかかるような字で書かれた札が埋め込まれていた。その見てくれはまるで脱出不可能な刑務所だ。俺こと淀・来は、世紀末高校の外壁を見上げてこう声を漏らした。
「あ、俺今日ここで死ぬんだぁ・・・」
監視塔にはバズーカ砲を担いだ屈強な男が二名、睨みを利かしていた。
俺は目を合わさないようにコソコソと動く。学生時代にメ◯ルギアシリーズをやり込んだおかげか、監視塔の男たちにはバレずに校門を通過できた。
校舎に入ると、そこには普通の高校だった。昔自分も通ったようなもので、中も普通。普通とは、一見するとヤバそうなものは無いということである。入ってすぐに下駄箱があり、壁には緑色の掲示板。掲示板すぐ横にある棚の上には、生徒たちが作った作品が陳列されている。
しかし、俺は甘かった。そして目を疑った。その作品の数々はあくまでも世紀末だった。黄金のドクロ、粘土で作ったであろうデスマスク、サバイバルナイフを発射する改造銃やパイプで作られた爆弾まである。
そして、校庭の様子が俺に追い打ちをかけた。見ると、早朝に俺の横を通り過ぎた護送車、もとい学バスがそこには止まっており、その横では、いかつい男女がズラッと整列している。まるで軍隊の朝礼だ。高校の外観は普通なのに、中はしっかり世紀末だった。刑務所だった。
「あ、あれれ・・・来る所間違えたかな? グーグルマップがナビ間違えて米軍基地にでも俺を誘ったのかな・・・?」
そんな光景を横目に俺は校長室の扉の前にやってきた。かなり分厚い黒い鉄扉で、悪魔の紋章や剣などの装飾が施してある。鉄扉は両開きで、まるで地獄の出入り口のようだ。ノックをして入ろうとしたとき、背後から声がした。
驚いて振り向くと、校長だった。スキンヘッドに、赤いネクタイの黒いスーツ姿で、顔中に裂傷や傷があり、片目はロボットのような赤い義眼。彼は葉巻を吸っていたが、俺を見るや、その葉巻を口の押し込んで味わうように噛むと飲み込んだ。そんな光景に度肝を抜いていると、学校長は微笑んだ。
「そう驚いた顔をするな、こうやって有機物を直接摂取して体内で燃やしたほうが、食事を摂るより効率がいいのだ。朝食がまだでな。火力発電所がそうだろう。燃料に三ツ星レストランのフルコースなんて使うまい。私も同じだ。まあとにかく、淀先生、おめでとう、時間通りだ。ここに来た新米教師の中で、時間通りに来れたのはお前が初だ。殆どは道中追い剥ぎにあって行方不明か、原因不明の遺体で発見される」
学校長の話を聞いて、通勤途中に死にかけ、助けられたことを思い出した。そんなボーッとする俺に学校長の表情が怪訝そうに曇ったので、俺は急いで頷き話を聞いている風を装った。
「その扉は俺が開ける。片方2トンあるから、お前はさわるな。世紀末地区の外から来た人間が押しても引っ張っても、指紋がつくだけだ」
「2トンですか!?」
「前は50トンほどだったんだが、俺以外に開けられるやつが居なくなってしまってな。だから、譲歩に譲歩を極め、2トンまで落とした。まったく、最近の若い奴らの体力低下は鼻につくな。前なんか、10kmマラソンをさせただけで筋肉痛だ。これだからビッグボスに体育の時間を増やせだのと、くだらん小言を言われるのだ。けしからん」
なんだか話される内容の全てが異次元過ぎてどう返事して良いのか分からなかった。取り敢えず笑っておいた。笑顔は良い。たいていの局面を切り抜けられる。校長に中へと通され、彼の指示で牛革のソファに座る。
部屋の中を見回すと、黄金の刀やテロリストが使っているような武器に、バズーカ砲、熊の剥製、現金のピラミッドとなどがあり、学校長の部屋というよりは、マフィアの隠れ家だった。驚いて言葉を失っていると、粗茶だが・・・と一言添えて学校長が金粉入りの抹茶を出し、話を始めた。
「さて、自己紹介から始めようか。俺の名前はジャッカル。世紀末区立世紀末高等学校の学校長であり、自分で言うのは滑稽だが、この地区の世紀末四天王の一人だ。まあ、周りが勝手に俺をそう呼んでいるだけだが。とはいえ、俺がこの地域での支配力の一柱であることに変わりはない。この世界で大切なのは、誰がその場を支配しているのかをいち早く察知することだ。我が部下たち、もとい世紀末高校の生徒達は、世紀末地区、もっと言えば日本全国、最終的には世界に羽ばたくエリートになるための英才教育を文武両道で日々受けている。そんな彼らだが、皆問題を抱えている。いや、この学校の問題と言うべきか。いじめやスクールカースト、泥沼化した恋愛に酷い喧嘩、重犯罪などとどれも根深いものだ。淀先生には、これから黄金の一年生の担任をしてもらう。前の担任は、この学校内で横行している”教師狩り”の餌食になってしまってな。だからお前を雇ったわけだ。ここまでなにか質問はあるか?」
「きょ、教師狩り!? いや、その・・・遺書でも書いておきます。っていやいや、この小学校で僕みたいなヒョロヒョロが死なないためにどんなことをしたらいいですか?」
「賢明な質問だ。勝つことよりも生き残ることを考えたわけだ。進化の基本だな。まずは知ってほしいことがある。ここ世紀末高校は、1年生500人、2年生1500人、3年生3000人の延べ5000人からなる高校だ。しかし、これは確認されている生徒数であり、他にももっと居る可能性はある。そういった連中は、私達の手にはおえてない。黄金の1年生、次に輩の2年生、最後に狂戦士の3年生だ」
「そしてこの高校は軍隊も青ざめるような圧倒的な縦社会制度を採用している。そのため、高学年の命令は絶対だ。進級要件は、年に一回校内で開催される、学年対抗の”世紀末武道会”で勝利することだ。各学年から代表が数名選出され、代表同士の勝負で未来が決まる。代表は、同じ学年の組同士の戦いで勝利を収めたものだ。勝った学年は上に上がり、負けた学年は相手の学年を一年やらなければならない。卒業を控えた3年であっても、1年に負けたのであれば1年からだ。このシステムでは当然、飛び級もある。一番に、全校生徒たちには”鬼の教え”、もしくは”修羅の教練”なる学校内の法を命の次に厳守してもらっている」
「お、鬼の教え?」
「そうだ。まず、廊下を走ったものは火あぶりの刑、身だしなみがふさわしくないものは市中引き回し。教師を侮辱するものはグラウンド1000周。他にも様々だが、それはこの本を熟読してくれ。ここに全て書いてある」
ジャッカル校長がまるでドアみたいに分厚くてデカイ本をテーブルに置く。テーブルがドカンと揺れ動いた。
「そして最後に、絶対に授業中は生徒に背中を見せてはいけないし、目を合わせてもいけない。これだけ知っておけば数日は生き延びれるだろう」
「いや、それってどうやって授業するんですか!? 目を合わせるな、背を向けるなだなんて、ライオンとかの注意事項じゃないですか。それじゃあ、ホワイトボードとか黒板に書いたりできないんですが・・・」
「そこはだな、機転を働かせろ。今やハイテクの時代だ。創意工夫も世紀末教師に求められる能力のひとつなのだ」
「(世紀末教師って何なんだよ・・・)」
そんなときだった、突如としてジャッカル学校長の顔色が暗くなった。俺はなにか自分が失礼をしたのではないかと焦った。こんな何でもありの世界なのだから、きっと学校長は俺の心でも読めて、俺の心の声に機嫌を悪くしたのかも知れないからだ。しかし、原因はすぐに分かった。
「不届き者がこの校長室に向かっている。淀先生、そこにあるAK47をリロードして構えてくれ。使い方はスマホで撮影するのと同じようなもんだ。狙って、トリガーを軽く引く。生き残りたければ、今言ったことだけをロボットみたいに守っていればいい。いいか、奴らが入ってきたら、トリガーを引け。向こうも殺す気で来ている、正当防衛の観点から情けはかけるな」
「え? AKって、じゅじゅじゅじゅじゅ銃!? そんなもの、使ったことな、ないですぅ!!」
突如、校長室の鉄扉から耳をふさぎたくなるような打撃音が聞こえる。誰かが狂ったように殴打しているのだとわかった。それに集団だ。ジャッカル校長は立ち上がることもなく、黄金の社長椅子に更に深々と座る。まるでリラックスするかのように。そして彼は俺に銃を投げ渡した。俺は初めて銃を触った。重たい。持っているだけで恐怖心が騒ぎ出し、身震いがしてくる。俺がワタワタしていると、鉄扉がゆっくりと開いた。
そして、校長室に銃や凶器を持った、軍隊のような服装の上裸で屈強な男たちが流れ込んできた。まるで世紀末に登場するような集団だ。その中の一人、巨大な斧を持った男が獣のようにがなり立てた。肌が浅黒く、筋肉質で体がとにかくでかい。首や頭に蛇の入れ墨を入れていた。こいつがリーダーだと一発でわかった。
「おうおうおう!! このツルピカハゲスーツ野郎。ヒットマンみてえな見た目しやがって、今日こそ決着をつけてやらァ! 俺らに縛りはいらねえ、女も金も酒もこの高校では好きにさせてもらうぜ! 俺様が法律だ。てめえのハゲ頭にこの弾丸を植毛されたくなかったら、大人しく言うこと聞けやゴラァ!」
俺はリーダーの男の姿と怒声を聞いて、体が震え上がった。ジャッカル校長に銃を撃てと言われたが、俺はピクリとも動けない。蛇に睨まれた蛙だった。
「貴様ら、俺の目の前で教師狩りか。それに、騒がしいのが居ると思ったら豪蛇じゃないか。前までは野球部のベンチだったやつが、今や不良ごっことはな。高校デビューにしてはかなりのスロースターターだ。しかしターゲットが俺とは、貴様らの脳みそは穴開きチーズのようだな。器物損壊に学校長への侮蔑行為。さて、特別指導の時間だ。それもとびっきりのな」
ジャッカル学校長が嘲笑すると、豪蛇の顔がゆでダコのように真っ赤になった。
「ふざけるなよッ! 鬼の教えなんざクソ食らえだ! そのハゲ頭を叩き割っちまえば俺らがルールなんだ!」
「淀先生よ、コイツラを見てどう思う? 何年生くらいに見える、この小童共は」
「え!? えっと・・・や、輩の2年生ってところですか・・・ね?」
「ははっ、淀先生、いい線いってる。素晴らしい洞察力だ。まあ、あれはどこからどう見ても輩以外の何者でもないが。ハズれる方が珍しい」
「てめえ! 俺の話を聞きやがれ! クソ、おめえら! 殺せ殺せ! 囲ってふくろにしろ! 後悔させてやれ!」
筋骨隆隆で武装した男たちが怒声をあげながらジャッカル学校長に襲い掛かる。しかし学校長の顔には薄ら笑みが張り付いたままで、椅子に座ったままだ。何をやってるんだ学校長! 座ってちゃやられちゃう! とにかく応戦しなくてはっ! 俺は使えもしない銃を必死に構えた。しまった! 焦ってマガジンを入れ忘れてた! が、その次の瞬間だった。学校長がつぶやいた。
「今日の局面、19枚落ち・・・裸玉ってところか。今日はどれだけ部屋を汚さず処理できたものか」
その次の瞬間学校長が黄金の椅子から姿を消す。部屋に一陣の風が吹き荒れ、遅れて鞭を空に打ったような音が響く。そして男たちの手から武器が次々と消えていく。そして最後には牛革の重いソファが宙を舞い、俺もふっとばされ、目の前が暗くなった。
気づくと、俺は地面に倒れていた。意識を失っていたようだった。見ると、ジャッカル学校長はすでに黄金の社長椅子に座っており、襲撃してきた男たちが持っていた武器を手入れしていた。彼の横を見ると、あの屈強な男たちが洗濯物みたいに積み上げられていた。校長はあの集団を瞬殺してしまった。学校長は銃をいじりながら、呆然と立ち尽くす豪蛇に言う。
「ふん、貴様ら、銃の手入れがなってないな。分解はしているようだが、部品がところどころしっかりはまってない。どうせ力任せに押し込んだんだろう。こんなもの、撃った瞬間に暴発で即スクラップだ。まったく、2年の担任はコイツラに何を教えているんだか。お前ら2年の何組だ? 先生の名前も教えなさい。それと、そこに積み上がってる貴様のお仲間は、ちゃんと保健室まで介抱してやるんだぞ。そしたらお前は次の授業にさっさと行け、遅れるなよ」
「ク・・・クソッ! なめやがって!」
「さっさと仲間を運んで帰れ。俺は攻撃されない限り反撃しない主義だ」
「へへっ、いいさ。俺にはとっておきがある。俺の異名は知ってるだろう? ビッグマグナムアナコンダだ! 一度食らいついたら諦めねえ! 俺はな、てめえを殺すための捨て駒をたんまり用意してんだよ!」
「(ビッグマグナムアナコンダで草 見た目の割にセンスは小1から変わってねえ・・・!)」
「ん? なんだ? メッチャバカスギパッパラパー? またふざけたことを言ってるのか、授業じゃ一言だって発言しないのにな」
ブチギレていた豪蛇は突如、歯をむき出して余裕そうに笑う。そして、こう叫んだ。
「うるせえうるせえ! 今に見てろよ! かかれおめえら! スクールカースト最下位の陰のものども! てめえらの使いみちなんかこれぐれえしかねえんだから、さっさと行けや! スクールカースト最上位の陽のものに根性見せてみろやッッ!!!」
部屋にぞろぞろと入り込む、覇気がなく、痩せており、死んだ目の生徒たち。まるで中高時代の俺のようだ。俺は彼らを見て眉をひそめた。彼らの体には、ダイナマイトが巻かれていたのだ。俺はそれを見て、恐怖よりも怒りが湧いた。
このリーダーの男、あまりにもひどすぎる。学校長もそれは同じようで、無表情か微笑んでいるかがほとんどの彼の顔が、見たこともないような鬼の形相に変貌していた。豪蛇が言い放った。
「けっ、クラスメイトだかなんだか知らねえが、こんな足手まといどもと同じクラスにしてくれなんざ頼んだ覚えねえんだよ! 陰キャなんか居なくたってどーでもいいし、誰も困りゃしねえんだよ! 陽キャ様の俺様が自爆つっても役目を与えてやったんだ、ありがたく思いやがれ!」
自爆を強いられている生徒たちの顔が一斉にうつむき、悲しそうに表情が歪む。俺はそれを見て、豪蛇に対してさらなる怒りが湧き上がる。俺は銃を強く握る。聞くに堪えられなくなった俺が一歩を踏み出したときだった。
校長の体から、赤黒い怒りの覇気のようなものが、湯気の如し立ち上る。その覇気には物理的実体があった。肌に触れると熱いのだ。蒸気のように。ジャッカル学校長が鬼の形相で顔を上げ、怪物のような恐怖の低い声色で話し始めた。
「貴様は今、決してやってはならぬことを恐れ知らずにも俺の目の前でやった。彼らがスクールカーストの最下位だから、上位のものが何をしたって構わないだと? ふざけたことを抜かすなよ三下。そもそも、スクールカーストなど狭苦しい偽りの上下関係に縛られている貴様は論外以外の何ものでもないッッッ!!!」
「・・・いいか、この世紀末社会において、人を見たら敵と思え、うまい話は罠と思い切り捨てろというのは、生まれてから言葉を覚える次に知る常識 ッッッ!!! そんな誰にも信用のおけぬ修羅の世界で頼れるものはただ一つ。それは家族と仲間、そしてクラスメイトだッ! 貴様はこの世界で生きるために必須とも言えるクラスメイトを、陰の者どもと蔑み、己のくだらぬ計画のためにもてあそんだ。心せよ、鬼の教えにのっとり、貴様にはシュプリーム・パニッシュメントを執行するッッッ!!!」
「ひっ・・・ヘッ! し、し知るかそんなもん・・・! おら陰キャども! その命を散らせ! ライターで腹の導火線に火をつけろ! さささ、さっさと突撃しろやぁ!」
焦った様子の豪蛇が彼らの内一人の頭を引っ叩く。しかし彼らは動かない。その内の一人、ライターを悔しそうに握りしめている少年、おかっぱとマッシュヘアーの中間のような髪型が特徴的で低身長の、角度によっては顔が女の子に見えるその子は、何かを決意したように振り返り、自分の二倍は大きい豪蛇に言った。
「つけないッ! 僕らはあんたたちの言いなりじゃない! だからつけないッ! 僕たちはただ、平和な学生生活を送りたいだけなんだッ!!! もう従いたくない!」
「・・・お前達、よくぞ言った。お前らはもう、この三下にゴミのように使われる犬ではないッ! この世紀末世界を己の足と意思で踏破する狼となるだろうッ!」
「豪蛇、覚悟せよッ!!!」
ジャッカル学校長の轟音の一喝が響く。部屋の窓が甲高い音とともに割れ、お札が舞い上がる。男のリーダーの顔が真っ青になった。その時だった。豪蛇の背後から人影が突如現れた。殺気立っていた部屋の雰囲気が、侵入者によって一瞬にして一転した。
「あ、俺今日ここで死ぬんだぁ・・・」
監視塔にはバズーカ砲を担いだ屈強な男が二名、睨みを利かしていた。
俺は目を合わさないようにコソコソと動く。学生時代にメ◯ルギアシリーズをやり込んだおかげか、監視塔の男たちにはバレずに校門を通過できた。
校舎に入ると、そこには普通の高校だった。昔自分も通ったようなもので、中も普通。普通とは、一見するとヤバそうなものは無いということである。入ってすぐに下駄箱があり、壁には緑色の掲示板。掲示板すぐ横にある棚の上には、生徒たちが作った作品が陳列されている。
しかし、俺は甘かった。そして目を疑った。その作品の数々はあくまでも世紀末だった。黄金のドクロ、粘土で作ったであろうデスマスク、サバイバルナイフを発射する改造銃やパイプで作られた爆弾まである。
そして、校庭の様子が俺に追い打ちをかけた。見ると、早朝に俺の横を通り過ぎた護送車、もとい学バスがそこには止まっており、その横では、いかつい男女がズラッと整列している。まるで軍隊の朝礼だ。高校の外観は普通なのに、中はしっかり世紀末だった。刑務所だった。
「あ、あれれ・・・来る所間違えたかな? グーグルマップがナビ間違えて米軍基地にでも俺を誘ったのかな・・・?」
そんな光景を横目に俺は校長室の扉の前にやってきた。かなり分厚い黒い鉄扉で、悪魔の紋章や剣などの装飾が施してある。鉄扉は両開きで、まるで地獄の出入り口のようだ。ノックをして入ろうとしたとき、背後から声がした。
驚いて振り向くと、校長だった。スキンヘッドに、赤いネクタイの黒いスーツ姿で、顔中に裂傷や傷があり、片目はロボットのような赤い義眼。彼は葉巻を吸っていたが、俺を見るや、その葉巻を口の押し込んで味わうように噛むと飲み込んだ。そんな光景に度肝を抜いていると、学校長は微笑んだ。
「そう驚いた顔をするな、こうやって有機物を直接摂取して体内で燃やしたほうが、食事を摂るより効率がいいのだ。朝食がまだでな。火力発電所がそうだろう。燃料に三ツ星レストランのフルコースなんて使うまい。私も同じだ。まあとにかく、淀先生、おめでとう、時間通りだ。ここに来た新米教師の中で、時間通りに来れたのはお前が初だ。殆どは道中追い剥ぎにあって行方不明か、原因不明の遺体で発見される」
学校長の話を聞いて、通勤途中に死にかけ、助けられたことを思い出した。そんなボーッとする俺に学校長の表情が怪訝そうに曇ったので、俺は急いで頷き話を聞いている風を装った。
「その扉は俺が開ける。片方2トンあるから、お前はさわるな。世紀末地区の外から来た人間が押しても引っ張っても、指紋がつくだけだ」
「2トンですか!?」
「前は50トンほどだったんだが、俺以外に開けられるやつが居なくなってしまってな。だから、譲歩に譲歩を極め、2トンまで落とした。まったく、最近の若い奴らの体力低下は鼻につくな。前なんか、10kmマラソンをさせただけで筋肉痛だ。これだからビッグボスに体育の時間を増やせだのと、くだらん小言を言われるのだ。けしからん」
なんだか話される内容の全てが異次元過ぎてどう返事して良いのか分からなかった。取り敢えず笑っておいた。笑顔は良い。たいていの局面を切り抜けられる。校長に中へと通され、彼の指示で牛革のソファに座る。
部屋の中を見回すと、黄金の刀やテロリストが使っているような武器に、バズーカ砲、熊の剥製、現金のピラミッドとなどがあり、学校長の部屋というよりは、マフィアの隠れ家だった。驚いて言葉を失っていると、粗茶だが・・・と一言添えて学校長が金粉入りの抹茶を出し、話を始めた。
「さて、自己紹介から始めようか。俺の名前はジャッカル。世紀末区立世紀末高等学校の学校長であり、自分で言うのは滑稽だが、この地区の世紀末四天王の一人だ。まあ、周りが勝手に俺をそう呼んでいるだけだが。とはいえ、俺がこの地域での支配力の一柱であることに変わりはない。この世界で大切なのは、誰がその場を支配しているのかをいち早く察知することだ。我が部下たち、もとい世紀末高校の生徒達は、世紀末地区、もっと言えば日本全国、最終的には世界に羽ばたくエリートになるための英才教育を文武両道で日々受けている。そんな彼らだが、皆問題を抱えている。いや、この学校の問題と言うべきか。いじめやスクールカースト、泥沼化した恋愛に酷い喧嘩、重犯罪などとどれも根深いものだ。淀先生には、これから黄金の一年生の担任をしてもらう。前の担任は、この学校内で横行している”教師狩り”の餌食になってしまってな。だからお前を雇ったわけだ。ここまでなにか質問はあるか?」
「きょ、教師狩り!? いや、その・・・遺書でも書いておきます。っていやいや、この小学校で僕みたいなヒョロヒョロが死なないためにどんなことをしたらいいですか?」
「賢明な質問だ。勝つことよりも生き残ることを考えたわけだ。進化の基本だな。まずは知ってほしいことがある。ここ世紀末高校は、1年生500人、2年生1500人、3年生3000人の延べ5000人からなる高校だ。しかし、これは確認されている生徒数であり、他にももっと居る可能性はある。そういった連中は、私達の手にはおえてない。黄金の1年生、次に輩の2年生、最後に狂戦士の3年生だ」
「そしてこの高校は軍隊も青ざめるような圧倒的な縦社会制度を採用している。そのため、高学年の命令は絶対だ。進級要件は、年に一回校内で開催される、学年対抗の”世紀末武道会”で勝利することだ。各学年から代表が数名選出され、代表同士の勝負で未来が決まる。代表は、同じ学年の組同士の戦いで勝利を収めたものだ。勝った学年は上に上がり、負けた学年は相手の学年を一年やらなければならない。卒業を控えた3年であっても、1年に負けたのであれば1年からだ。このシステムでは当然、飛び級もある。一番に、全校生徒たちには”鬼の教え”、もしくは”修羅の教練”なる学校内の法を命の次に厳守してもらっている」
「お、鬼の教え?」
「そうだ。まず、廊下を走ったものは火あぶりの刑、身だしなみがふさわしくないものは市中引き回し。教師を侮辱するものはグラウンド1000周。他にも様々だが、それはこの本を熟読してくれ。ここに全て書いてある」
ジャッカル校長がまるでドアみたいに分厚くてデカイ本をテーブルに置く。テーブルがドカンと揺れ動いた。
「そして最後に、絶対に授業中は生徒に背中を見せてはいけないし、目を合わせてもいけない。これだけ知っておけば数日は生き延びれるだろう」
「いや、それってどうやって授業するんですか!? 目を合わせるな、背を向けるなだなんて、ライオンとかの注意事項じゃないですか。それじゃあ、ホワイトボードとか黒板に書いたりできないんですが・・・」
「そこはだな、機転を働かせろ。今やハイテクの時代だ。創意工夫も世紀末教師に求められる能力のひとつなのだ」
「(世紀末教師って何なんだよ・・・)」
そんなときだった、突如としてジャッカル学校長の顔色が暗くなった。俺はなにか自分が失礼をしたのではないかと焦った。こんな何でもありの世界なのだから、きっと学校長は俺の心でも読めて、俺の心の声に機嫌を悪くしたのかも知れないからだ。しかし、原因はすぐに分かった。
「不届き者がこの校長室に向かっている。淀先生、そこにあるAK47をリロードして構えてくれ。使い方はスマホで撮影するのと同じようなもんだ。狙って、トリガーを軽く引く。生き残りたければ、今言ったことだけをロボットみたいに守っていればいい。いいか、奴らが入ってきたら、トリガーを引け。向こうも殺す気で来ている、正当防衛の観点から情けはかけるな」
「え? AKって、じゅじゅじゅじゅじゅ銃!? そんなもの、使ったことな、ないですぅ!!」
突如、校長室の鉄扉から耳をふさぎたくなるような打撃音が聞こえる。誰かが狂ったように殴打しているのだとわかった。それに集団だ。ジャッカル校長は立ち上がることもなく、黄金の社長椅子に更に深々と座る。まるでリラックスするかのように。そして彼は俺に銃を投げ渡した。俺は初めて銃を触った。重たい。持っているだけで恐怖心が騒ぎ出し、身震いがしてくる。俺がワタワタしていると、鉄扉がゆっくりと開いた。
そして、校長室に銃や凶器を持った、軍隊のような服装の上裸で屈強な男たちが流れ込んできた。まるで世紀末に登場するような集団だ。その中の一人、巨大な斧を持った男が獣のようにがなり立てた。肌が浅黒く、筋肉質で体がとにかくでかい。首や頭に蛇の入れ墨を入れていた。こいつがリーダーだと一発でわかった。
「おうおうおう!! このツルピカハゲスーツ野郎。ヒットマンみてえな見た目しやがって、今日こそ決着をつけてやらァ! 俺らに縛りはいらねえ、女も金も酒もこの高校では好きにさせてもらうぜ! 俺様が法律だ。てめえのハゲ頭にこの弾丸を植毛されたくなかったら、大人しく言うこと聞けやゴラァ!」
俺はリーダーの男の姿と怒声を聞いて、体が震え上がった。ジャッカル校長に銃を撃てと言われたが、俺はピクリとも動けない。蛇に睨まれた蛙だった。
「貴様ら、俺の目の前で教師狩りか。それに、騒がしいのが居ると思ったら豪蛇じゃないか。前までは野球部のベンチだったやつが、今や不良ごっことはな。高校デビューにしてはかなりのスロースターターだ。しかしターゲットが俺とは、貴様らの脳みそは穴開きチーズのようだな。器物損壊に学校長への侮蔑行為。さて、特別指導の時間だ。それもとびっきりのな」
ジャッカル学校長が嘲笑すると、豪蛇の顔がゆでダコのように真っ赤になった。
「ふざけるなよッ! 鬼の教えなんざクソ食らえだ! そのハゲ頭を叩き割っちまえば俺らがルールなんだ!」
「淀先生よ、コイツラを見てどう思う? 何年生くらいに見える、この小童共は」
「え!? えっと・・・や、輩の2年生ってところですか・・・ね?」
「ははっ、淀先生、いい線いってる。素晴らしい洞察力だ。まあ、あれはどこからどう見ても輩以外の何者でもないが。ハズれる方が珍しい」
「てめえ! 俺の話を聞きやがれ! クソ、おめえら! 殺せ殺せ! 囲ってふくろにしろ! 後悔させてやれ!」
筋骨隆隆で武装した男たちが怒声をあげながらジャッカル学校長に襲い掛かる。しかし学校長の顔には薄ら笑みが張り付いたままで、椅子に座ったままだ。何をやってるんだ学校長! 座ってちゃやられちゃう! とにかく応戦しなくてはっ! 俺は使えもしない銃を必死に構えた。しまった! 焦ってマガジンを入れ忘れてた! が、その次の瞬間だった。学校長がつぶやいた。
「今日の局面、19枚落ち・・・裸玉ってところか。今日はどれだけ部屋を汚さず処理できたものか」
その次の瞬間学校長が黄金の椅子から姿を消す。部屋に一陣の風が吹き荒れ、遅れて鞭を空に打ったような音が響く。そして男たちの手から武器が次々と消えていく。そして最後には牛革の重いソファが宙を舞い、俺もふっとばされ、目の前が暗くなった。
気づくと、俺は地面に倒れていた。意識を失っていたようだった。見ると、ジャッカル学校長はすでに黄金の社長椅子に座っており、襲撃してきた男たちが持っていた武器を手入れしていた。彼の横を見ると、あの屈強な男たちが洗濯物みたいに積み上げられていた。校長はあの集団を瞬殺してしまった。学校長は銃をいじりながら、呆然と立ち尽くす豪蛇に言う。
「ふん、貴様ら、銃の手入れがなってないな。分解はしているようだが、部品がところどころしっかりはまってない。どうせ力任せに押し込んだんだろう。こんなもの、撃った瞬間に暴発で即スクラップだ。まったく、2年の担任はコイツラに何を教えているんだか。お前ら2年の何組だ? 先生の名前も教えなさい。それと、そこに積み上がってる貴様のお仲間は、ちゃんと保健室まで介抱してやるんだぞ。そしたらお前は次の授業にさっさと行け、遅れるなよ」
「ク・・・クソッ! なめやがって!」
「さっさと仲間を運んで帰れ。俺は攻撃されない限り反撃しない主義だ」
「へへっ、いいさ。俺にはとっておきがある。俺の異名は知ってるだろう? ビッグマグナムアナコンダだ! 一度食らいついたら諦めねえ! 俺はな、てめえを殺すための捨て駒をたんまり用意してんだよ!」
「(ビッグマグナムアナコンダで草 見た目の割にセンスは小1から変わってねえ・・・!)」
「ん? なんだ? メッチャバカスギパッパラパー? またふざけたことを言ってるのか、授業じゃ一言だって発言しないのにな」
ブチギレていた豪蛇は突如、歯をむき出して余裕そうに笑う。そして、こう叫んだ。
「うるせえうるせえ! 今に見てろよ! かかれおめえら! スクールカースト最下位の陰のものども! てめえらの使いみちなんかこれぐれえしかねえんだから、さっさと行けや! スクールカースト最上位の陽のものに根性見せてみろやッッ!!!」
部屋にぞろぞろと入り込む、覇気がなく、痩せており、死んだ目の生徒たち。まるで中高時代の俺のようだ。俺は彼らを見て眉をひそめた。彼らの体には、ダイナマイトが巻かれていたのだ。俺はそれを見て、恐怖よりも怒りが湧いた。
このリーダーの男、あまりにもひどすぎる。学校長もそれは同じようで、無表情か微笑んでいるかがほとんどの彼の顔が、見たこともないような鬼の形相に変貌していた。豪蛇が言い放った。
「けっ、クラスメイトだかなんだか知らねえが、こんな足手まといどもと同じクラスにしてくれなんざ頼んだ覚えねえんだよ! 陰キャなんか居なくたってどーでもいいし、誰も困りゃしねえんだよ! 陽キャ様の俺様が自爆つっても役目を与えてやったんだ、ありがたく思いやがれ!」
自爆を強いられている生徒たちの顔が一斉にうつむき、悲しそうに表情が歪む。俺はそれを見て、豪蛇に対してさらなる怒りが湧き上がる。俺は銃を強く握る。聞くに堪えられなくなった俺が一歩を踏み出したときだった。
校長の体から、赤黒い怒りの覇気のようなものが、湯気の如し立ち上る。その覇気には物理的実体があった。肌に触れると熱いのだ。蒸気のように。ジャッカル学校長が鬼の形相で顔を上げ、怪物のような恐怖の低い声色で話し始めた。
「貴様は今、決してやってはならぬことを恐れ知らずにも俺の目の前でやった。彼らがスクールカーストの最下位だから、上位のものが何をしたって構わないだと? ふざけたことを抜かすなよ三下。そもそも、スクールカーストなど狭苦しい偽りの上下関係に縛られている貴様は論外以外の何ものでもないッッッ!!!」
「・・・いいか、この世紀末社会において、人を見たら敵と思え、うまい話は罠と思い切り捨てろというのは、生まれてから言葉を覚える次に知る常識 ッッッ!!! そんな誰にも信用のおけぬ修羅の世界で頼れるものはただ一つ。それは家族と仲間、そしてクラスメイトだッ! 貴様はこの世界で生きるために必須とも言えるクラスメイトを、陰の者どもと蔑み、己のくだらぬ計画のためにもてあそんだ。心せよ、鬼の教えにのっとり、貴様にはシュプリーム・パニッシュメントを執行するッッッ!!!」
「ひっ・・・ヘッ! し、し知るかそんなもん・・・! おら陰キャども! その命を散らせ! ライターで腹の導火線に火をつけろ! さささ、さっさと突撃しろやぁ!」
焦った様子の豪蛇が彼らの内一人の頭を引っ叩く。しかし彼らは動かない。その内の一人、ライターを悔しそうに握りしめている少年、おかっぱとマッシュヘアーの中間のような髪型が特徴的で低身長の、角度によっては顔が女の子に見えるその子は、何かを決意したように振り返り、自分の二倍は大きい豪蛇に言った。
「つけないッ! 僕らはあんたたちの言いなりじゃない! だからつけないッ! 僕たちはただ、平和な学生生活を送りたいだけなんだッ!!! もう従いたくない!」
「・・・お前達、よくぞ言った。お前らはもう、この三下にゴミのように使われる犬ではないッ! この世紀末世界を己の足と意思で踏破する狼となるだろうッ!」
「豪蛇、覚悟せよッ!!!」
ジャッカル学校長の轟音の一喝が響く。部屋の窓が甲高い音とともに割れ、お札が舞い上がる。男のリーダーの顔が真っ青になった。その時だった。豪蛇の背後から人影が突如現れた。殺気立っていた部屋の雰囲気が、侵入者によって一瞬にして一転した。
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