ヒョロガリ教師だが不良だらけの高校に赴任することになった

りなっくす

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さんじかんめ~速の盗人 早愧・京~

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「そこ、どいてもらえない? ここはこの鉄扉を開けるのに、仲間の力を借りてやっとの人間が来るところじゃないよ、豪蛇くん」
 豪蛇が驚いて振り返る。彼の巨体の背後から現れたのは、毛先にウェーブのある金髪センター分けヘアーが特徴的な、線の細い男だった。世紀末なこの世界で初めて見るようなタイプだった。彼を見て、豪蛇の顔色が変わった。

「お、おめえは・・・スクールカーストファーストプレイス一軍のファースト、早愧・京はやき・きょうッ!! いつの間に俺の後ろに立った!? 陰のものどもを入れた後に扉は締めたはずだ! あのバカ重い扉をてめえ一人で開けたってのか!?」

「ジャッカル学校長、おはようございます。そして淀・来先生、はじめまして。学校長からの命令で、あなたを教室まで案内するよういわれております。淀先生、次はホームルームです」
 豪蛇の驚いた様子を無視し、早愧はにこやかに俺の目の前にやってきた。豪蛇がそんな早愧にブチ切れた。

「てめえ、随分な出世じゃねえか? あん? 一軍のくせにぶっちぎりの陰キャとクソ教師に味方しやがって、見上げた態度だな!」
「君まだ居たんだね。早く出ていかないと、殺っちゃうよ?」
「ヘッ! 殺っちゃう? それは俺様のセリフだ! いつもニヤニヤしやがって、おめえに余計に穴を増やしてやらァ!」

 豪蛇が拳銃を構え、またも勝ち誇ったように黄色い歯をみせ、勝ち誇ったように笑う。しかし、銃を向けられているのに早愧の表情は一ミリも変わらない。目を細め笑顔が張り付いたままだ。ジャッカル学校長は笑いをこらえていた。なぜ二人はこんなにも余裕なんだ? そんな二人の態度に豪蛇の顔がまたも怒りの色に染まりあがる。そして彼は何の躊躇いもなくハンドガンのトリガーを引いた。しかし、弾は発射されず、豪蛇は驚いたのかトリガーを必死に何度も引く。

「な、なぜだ! な、何をしやがった!!!!」
「危ないから、その拳銃の弾とマガジンはさっき盗ませてもらったよ。残弾はゼロ。さあ、もう十分構ってあげたよね。だから帰ったら? 君の残機もゼロにしてほしいのなら別だけど」
「い、いつの間に・・・」

 俺はふと驚きの声を漏らした。そんな声に早愧はさも普通そうに語った。

「入った瞬間。この程度の早業に気づけ無いようじゃ二年に堕ちるのも納得。ジャッカル学校長は俺よりもっと早くやっちゃうよ。同じ時間で、空のマガジンをその銃に戻してからその錆だらけのスライドを磨いただろうね」

「く、くそっ!! お、覚えてろよおめえら! ぜってー後悔させてやるからなッ!!」
 豪蛇は負けを確信したのか、悔しさ一杯の顔で踵を返し、一目散に逃げた。途中ドアの前で派手にすっ転んだが、冬眠後の熊みたいにのっそりと起き上がり、巨体を揺らしながら校長室から出ていった。

「追いかけなくていいんですか?」
逃げる豪蛇を目前にして、微動だにしなかった学校長と早愧に俺が問う。するとジャッカル学校長は言った。

「今日のところは十分だろう。猛省するいい機会にはなったはずだ。これ以上拘束すると、やつは授業に間に合わなくなるからな。教育の機会を奪うわけにもいかないのだ。これは我々教員が抱えるジレンマだ。徹底的に罪を追求するべきか、それとも授業を優先するべきか。まあだが、折檻は授業の後、たっぷり受けてもらう」
「で、でも・・・」

 陰のものどもと蔑まされ、命を弄ばれたこの子たちが可愛そうに思った。彼らは一様に浮かない顔をしている。そんな様子を見て、ジャッカル学校長は彼らに言った。

「お前達、悔しいか? それはおそらく、やつから独立を成し遂げたお前たちならではの悔しさのはずだ」
 豪蛇にきっぱりと言い放った、マッシュヘアーの子が答えた。

「・・・はい。なんでさっき、あいつを懲らしめなかったんですか、なんて言いません。
悔しいんです。この手で豪蛇を追い払いたかった。でも、僕にそんな度胸も力もないんです。
所詮、陰キャは陰キャなんです。陽キャには勝てない・・・」

 ジャッカル学校長は彼らの前にしゃがみ、目線を合わせてこういった。

「いいか、お前たちは根本的に間違っている。この世紀末社会、もっと言えば全世界に、陽キャだの陰キャだのという押し付けがましい関係図は存在しない。ただあるのは、己が何をしたく、何ができ、何をやったかだ。この世界は残酷であり、時間とは無慈悲だ。だからこそ、己の意思と行動力を潰す呪縛は一刻も早く振りほどくのだ。そのためには、目的を定め、勇往邁進あるべしッッッ!!! 失敗、何回だってすればいい。いつの日か一度でも成功すれば、その失敗は極上の経験ゴールドエクスペリエンスとなるのだ。お前らの勇気と成長は、あのとき豪蛇に見せた態度から、しかとこの目に焼き付けた。お前たちは確かにあのとき、一歩大きく前進したぞ」
 まるで父のように、ジャッカル学校長は彼ら全員を抱擁した。抱擁を受けた彼らは涙を浮かべ、一様にすすり泣いた。マッシュヘアーの子が言う。

「校長先生ありがとう、僕もっと頑張るから!」
 授業に遅れるとまずいからと、ジャッカル学校長はマッシュヘアーの子を含めその友達たちに授業へ行くよう促した。彼らが部屋を後にし、少しして、学校長は振り返って俺に言った。

「淀先生、見ての通りだ。・・・ ・・・さっきの子たちには、親が居なくてな。この世紀末高校に来る生徒たちの親には、世紀末地区で生きるためギャングとして、もしくはそれ以外の何かとして悪事を働き死んだり、首が回らなくなり蒸発したものが殆どだ。この高校も最初は小さかったが、お人好しの俺は生徒をドンドン受け入れ、今やお前や他の教師を雇うようになった。しかし、それに伴って問題も大きくなっている。それは、俺だけでは解決できないまでにな。この世紀末小学校は、暴力・派閥争い・重犯罪といったことだけではなく、ああした生徒間のトラブルや問題がたくさんある。この学校の見てくれは軍事刑務所で、生徒は体育会系の不良ばかりに思えるが、その内情は非常に様々で、繊細なのだ」

「そして私は伝えたい。淀・来、お前がこの世紀末小学校で達成すべき教育課程はただ一つッ!! 担任する黄金の一年生たちの抱える問題を解決しながら、彼らを立派に卒業させることッッッ!! そして余裕があれば、学校内の様々な問題にも首を突っ込んで欲しい。教師狩りなどを我が物顔で行い、我が高校の最大の宿敵、クリミナル《重罪生徒》を更生させることッ! お前の同僚である教師も、死なずにこの学校にたどり着き、猛者だ。一筋縄ではいかない。そして一番に、生徒の諸君に、スクールカーストも陽キャも陰キャも、そんな狭い物差しは存在しないっていうことを示してやってくれ、淀先生。彼らを心のしばりから開放してやってほしい」

 俺はただ黙ってうなずいた。正直やっていける自信はない。今も、武者震いなのか恐怖のせいなのかわからない身震いに襲われている。しかし、きっとここに通う生徒たちも、俺と同じような思いをしているのかも知れない。そんな彼らが世紀末地区から脱出するためには教育しか無いんだと俺は思う。そんな教育を与えるのは教師のほかない。

 俺は今日から教師だ。非力で勇気も不十分な俺だけど、教師が逃げるような真似をすれば彼らの希望が一つ無くなってしまう気がする。だから俺は、ジャッカル学校長に深々とお辞儀をし、早愧を連れて校長室を後にした。校長室の扉は轟音とともに閉まった。俺はため息を漏らした。やっと緊張がとけた。しばらくして早愧が人懐っこい笑顔で俺に言った。

「期待してますよ、先生っ。命だけなら守ってあげますから」
「え?」
「一年の教室までは、ここから最短ルートで通っても約1km。死にたくなかったら、俺についてきて。ここでの歩き方を、しっかり教育してあげますよ」
「1kmだって!?」

 驚いて廊下を見ると、ずーっと奥まで一本道が続いている。廊下をよく見ると、曲がり角や分岐点などがいくつかあり、壁際にはテントやバラック小屋なども複数点在している。心が折れそうになったが、俺は自分の顔を叩き、早愧の後を追った。
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