聖女と呼ばれておるが、ワシは剣客じゃよ? 乙女となった御隠居剣豪

若年寄

文字の大きさ
524 / 542
ゲルダの秘密編

第肆百壱拾㯃章 『嫉妬』の裏に潜む『強欲』

しおりを挟む
 四井主馬よついしゅめは上忍『嫉妬』の力量に舌を巻いていた。
 だが『嫉妬』の力が桁外れている訳ではないのでは、とも思っている。
 要は相性の問題なのだ。『嫉妬』の秘術『水芸』とやらの詳細はまだ見えぬ。
 どうやら話を聞くに爆発の衝撃すら包み込める恐るべき術であるらしい。
 ゲルダの魔法でも凍らぬというが、それとて仕掛けがあるに違いない。

(ふふふ、面白くなってきたではないか)

 『嫉妬』とゲルダがぶつかり合えば双方共に只では済まないはずだ。
 戦術家ゲルダが秘術『水芸』を破るか、前評判通り『嫉妬』が呑み込むのか。
 どちらかが勝利したその瞬間、この四井主馬が首を頂いてやろう。
 いや、頂くのは悪意の魂三つだ。

(ワシの手に『傲慢』『嫉妬』『怠惰』の魂を手中に収めたならば、新生七本槍も六人衆もワシを軽くは扱えまい。魂を盾にすればワシの地位も上がるという寸法よ)

 秀吉に成り変わって自分が天下を取るという妄想が主馬の顔に笑みを浮かべた。
 目論見が表に出た主馬の顔を上忍達は静かに見ていたものだ。

「忍びが捕らぬ狸の皮算用をして如何する」

「「「怖や怖や、何を仕出かすか分からぬ」」」

「野心を隠さぬ忍び、七本槍への忠義もあるまい」

「「「怖や怖や、報せてやるかや」」」

「否よ、否。この者、使えるやも知れぬ」

「「「怖や怖や、どうなっても知らぬぞ」」」

「否、分からぬからこそ面白い。我らを縛る七本槍よりは楽しめよう。よぅし、我らでうてやろうではないか」

「「「怖や怖や、壊れるまで遊ばれよう」」」

「壊れるもまた一興。だが最後まで壊れずにいられたならば、に入れてやっても良いやも知れぬ」

「「「怖や怖や、真か嘘か。いずれ憐れな結末が目に浮かぶ」」」

 地獄耳と豪語していた主馬にも聞こえぬ声の掛け合いは続く。
 すると己の中で算段がついたのか、四井主馬が立ち上がる。

「ワシは行かせて貰うぞ。策を得たでな」

「好きにしろ。そなたは竹槍衆ではないのだ。断りなど無用」

「ふん、一応の礼儀よ。ではな」

 鼻を鳴らすと四井主馬の姿が闇に溶け込むように消える。
 その顔には既に最初の怯えは見えなかった。
 皮算用が主馬の心を大きくしていたのだ。

「愚かな……あまりに愚か。だが、それは主馬に限った話にあらず」

「「「怖や怖や。思い込みほど恐ろしいものはない」」」

「ゲルダ、あやつも『怠惰』の記憶をなまじ読んだが故にしくじった」

「「「怖や怖や。海賊を動かすは『嫉妬』にあらず」

「その事に気付かぬ限り、全ては我らのたなごころの上よ」

「「「怖や怖や。『嫉妬』と『傲慢』の激突は避けられまい」」」

「全ては我が思惑のままよ」

「「「怖や怖や。恐るべきは『強欲』の知謀よ」」」

「くくく、カイゼントーヤに来るかよ。ならばワシも出迎えの準備をせねばな。では諸君、また会おうぞ」

『ピッ…『強欲』が退室しました』

 『強欲』の言葉の後、電子音が鳴り、人間味を感じさせぬ女性らしき声が続いた。

「否、恐ろしいのは知謀ではなく、あやつの底の無い欲望そのものか」

『ピッ…『暴食』が退室しました』

「否、『嫉妬』すら囮とする非情さも恐ろしい」

『ピッ…『憤怒』が退室しました』

「でも…ゲルダは…は死なせない」

『ピッ…『十六夜』が退室しました』

 後に残されたのは天井から幽かに降る通信装置の作動音のみであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

処理中です...