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ゲルダの秘密編
第肆百壱拾㯃章 『嫉妬』の裏に潜む『強欲』
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四井主馬は上忍『嫉妬』の力量に舌を巻いていた。
だが『嫉妬』の力が桁外れている訳ではないのでは、とも思っている。
要は相性の問題なのだ。『嫉妬』の秘術『水芸』とやらの詳細はまだ見えぬ。
どうやら話を聞くに爆発の衝撃すら包み込める恐るべき術であるらしい。
ゲルダの魔法でも凍らぬというが、それとて仕掛けがあるに違いない。
(ふふふ、面白くなってきたではないか)
『嫉妬』とゲルダがぶつかり合えば双方共に只では済まないはずだ。
戦術家ゲルダが秘術『水芸』を破るか、前評判通り『嫉妬』が呑み込むのか。
どちらかが勝利したその瞬間、この四井主馬が首を頂いてやろう。
いや、頂くのは悪意の魂三つだ。
(ワシの手に『傲慢』『嫉妬』『怠惰』の魂を手中に収めたならば、新生七本槍も六人衆もワシを軽くは扱えまい。魂を盾にすればワシの地位も上がるという寸法よ)
秀吉に成り変わって自分が天下を取るという妄想が主馬の顔に笑みを浮かべた。
目論見が表に出た主馬の顔を上忍達は静かに見ていたものだ。
「忍びが捕らぬ狸の皮算用をして如何する」
「「「怖や怖や、何を仕出かすか分からぬ」」」
「野心を隠さぬ忍び、七本槍への忠義もあるまい」
「「「怖や怖や、報せてやるかや」」」
「否よ、否。この者、使えるやも知れぬ」
「「「怖や怖や、どうなっても知らぬぞ」」」
「否、分からぬからこそ面白い。我らを縛る七本槍よりは楽しめよう。よぅし、我らで飼うてやろうではないか」
「「「怖や怖や、壊れるまで遊ばれよう」」」
「壊れるもまた一興。だが最後まで壊れずにいられたならば、仲間に入れてやっても良いやも知れぬ」
「「「怖や怖や、真か嘘か。いずれ憐れな結末が目に浮かぶ」」」
地獄耳と豪語していた主馬にも聞こえぬ声の掛け合いは続く。
すると己の中で算段がついたのか、四井主馬が立ち上がる。
「ワシは行かせて貰うぞ。策を得たでな」
「好きにしろ。そなたは竹槍衆ではないのだ。断りなど無用」
「ふん、一応の礼儀よ。ではな」
鼻を鳴らすと四井主馬の姿が闇に溶け込むように消える。
その顔には既に最初の怯えは見えなかった。
皮算用が主馬の心を大きくしていたのだ。
「愚かな……あまりに愚か。だが、それは主馬に限った話にあらず」
「「「怖や怖や。思い込みほど恐ろしいものはない」」」
「ゲルダ、あやつも『怠惰』の記憶をなまじ読んだが故にしくじった」
「「「怖や怖や。海賊を動かすは『嫉妬』にあらず」
「その事に気付かぬ限り、全ては我らの掌の上よ」
「「「怖や怖や。『嫉妬』と『傲慢』の激突は避けられまい」」」
「全ては我が思惑のままよ」
「「「怖や怖や。恐るべきは『強欲』の知謀よ」」」
「くくく、カイゼントーヤに来るかよ。ならばワシも出迎えの準備をせねばな。では諸君、また会おうぞ」
『ピッ…『強欲』が退室しました』
『強欲』の言葉の後、電子音が鳴り、人間味を感じさせぬ女性らしき声が続いた。
「否、恐ろしいのは知謀ではなく、あやつの底の無い欲望そのものか」
『ピッ…『暴食』が退室しました』
「否、『嫉妬』すら囮とする非情さも恐ろしい」
『ピッ…『憤怒』が退室しました』
「でも…ゲルダは…桔梗は死なせない」
『ピッ…『十六夜』が退室しました』
後に残されたのは天井から幽かに降る通信装置の作動音のみであった。
だが『嫉妬』の力が桁外れている訳ではないのでは、とも思っている。
要は相性の問題なのだ。『嫉妬』の秘術『水芸』とやらの詳細はまだ見えぬ。
どうやら話を聞くに爆発の衝撃すら包み込める恐るべき術であるらしい。
ゲルダの魔法でも凍らぬというが、それとて仕掛けがあるに違いない。
(ふふふ、面白くなってきたではないか)
『嫉妬』とゲルダがぶつかり合えば双方共に只では済まないはずだ。
戦術家ゲルダが秘術『水芸』を破るか、前評判通り『嫉妬』が呑み込むのか。
どちらかが勝利したその瞬間、この四井主馬が首を頂いてやろう。
いや、頂くのは悪意の魂三つだ。
(ワシの手に『傲慢』『嫉妬』『怠惰』の魂を手中に収めたならば、新生七本槍も六人衆もワシを軽くは扱えまい。魂を盾にすればワシの地位も上がるという寸法よ)
秀吉に成り変わって自分が天下を取るという妄想が主馬の顔に笑みを浮かべた。
目論見が表に出た主馬の顔を上忍達は静かに見ていたものだ。
「忍びが捕らぬ狸の皮算用をして如何する」
「「「怖や怖や、何を仕出かすか分からぬ」」」
「野心を隠さぬ忍び、七本槍への忠義もあるまい」
「「「怖や怖や、報せてやるかや」」」
「否よ、否。この者、使えるやも知れぬ」
「「「怖や怖や、どうなっても知らぬぞ」」」
「否、分からぬからこそ面白い。我らを縛る七本槍よりは楽しめよう。よぅし、我らで飼うてやろうではないか」
「「「怖や怖や、壊れるまで遊ばれよう」」」
「壊れるもまた一興。だが最後まで壊れずにいられたならば、仲間に入れてやっても良いやも知れぬ」
「「「怖や怖や、真か嘘か。いずれ憐れな結末が目に浮かぶ」」」
地獄耳と豪語していた主馬にも聞こえぬ声の掛け合いは続く。
すると己の中で算段がついたのか、四井主馬が立ち上がる。
「ワシは行かせて貰うぞ。策を得たでな」
「好きにしろ。そなたは竹槍衆ではないのだ。断りなど無用」
「ふん、一応の礼儀よ。ではな」
鼻を鳴らすと四井主馬の姿が闇に溶け込むように消える。
その顔には既に最初の怯えは見えなかった。
皮算用が主馬の心を大きくしていたのだ。
「愚かな……あまりに愚か。だが、それは主馬に限った話にあらず」
「「「怖や怖や。思い込みほど恐ろしいものはない」」」
「ゲルダ、あやつも『怠惰』の記憶をなまじ読んだが故にしくじった」
「「「怖や怖や。海賊を動かすは『嫉妬』にあらず」
「その事に気付かぬ限り、全ては我らの掌の上よ」
「「「怖や怖や。『嫉妬』と『傲慢』の激突は避けられまい」」」
「全ては我が思惑のままよ」
「「「怖や怖や。恐るべきは『強欲』の知謀よ」」」
「くくく、カイゼントーヤに来るかよ。ならばワシも出迎えの準備をせねばな。では諸君、また会おうぞ」
『ピッ…『強欲』が退室しました』
『強欲』の言葉の後、電子音が鳴り、人間味を感じさせぬ女性らしき声が続いた。
「否、恐ろしいのは知謀ではなく、あやつの底の無い欲望そのものか」
『ピッ…『暴食』が退室しました』
「否、『嫉妬』すら囮とする非情さも恐ろしい」
『ピッ…『憤怒』が退室しました』
「でも…ゲルダは…桔梗は死なせない」
『ピッ…『十六夜』が退室しました』
後に残されたのは天井から幽かに降る通信装置の作動音のみであった。
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