60年生きてきて、何があったかというと何もない。

人見 犬々(ケンケン)

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素敵だった親父③

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 中学のときは岡山に住んでいた。親父は仕事が忙しいらしく、(本当の事は今だに知らないし、あふくろに尋ねる気も今さら・・である)月に1・2度家に帰る というか、家に寄る程度であった。
 決して裕福ではない家庭にも高校受験は訪れる。
「参考書を買ってほしい」
という言葉は、口に出さないほうが良いという判断を中学生にさせるレベルの生活水準だったと思う。

 朝日新聞の1面の天声人語というコラムを読みなさい。と中学校の先生に言われた。
新聞など読んだことのないテレビっ子だ。家の新聞をみると、地元紙の山陽新聞をとっていた。朝刊だけ・・・新聞に夕刊なるものがあることを知ったのはそのあとだ。

 おふくろに行ってもラチが開かない(いつもチンプンカンプンな答えしか返ってこない)と思ったので、決死の覚悟で(どんな覚悟や・・)おばあちゃんに言った。
「山陽新聞を朝日新聞に変えてほしい!」

 おばあちゃんは、(僕の)親父と相談してみる とだけ言った。

 それから1・2週間後、ヤマザキパンをほおばりながら、山陽新聞の疑似天声人語を読んでいると、食卓のワキに新聞が山積みされていた。

 察した。ー朝日新聞だ! 過去1か月分くらいの!
      ・
      ・
      ・
      違った・・・
      ・
      ・
      ・
 その日の朝日新聞だった。毎日・サンケイ・中国(広島県の地元紙)・日本経済・日本経済産業・赤旗・聖教
 8紙あった。

 中学卒業まで、山陽新聞を含め、全9紙がポストパンパンに配達された。朝刊だけ・・

 赤旗と聖教 両紙を一緒にとってる家庭なんて、たぶんここだけだろう・・

 イヤイヤ、参考書買ってよ! 親父!

      ・
      ・
      ・

 数年後、親父に尋ねた。
「どうして読売新聞はとらなっかたの?」
「ほんなもん、阪神ファンが巨人の新聞なんか読めるかいな!」

 基本、バカである。
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