60年生きてきて、何があったかというと何もない。

mazda と Mercedes-Benz

　マツダとベンツのディーラーに知り合いがいる。マツダは一営業マンだが、ベンツは所長と仲良くさせてもらっている。マツダは２台ほど所有したことがあるが、（当然）ベンツは無い。
　新車が発表されると、試乗会に来てくれとDMが届く。好きなので、日時に都合が付けば、出掛ける。試乗して感想（アンケート記入）を書くと、プレゼントが貰えたりする。来店するだけでもいただけることがある。まあ、それも楽しみの一つだが、メインは車だ。

　偶然、同じ日に開催されるマツダとベンツの試乗会の案内が届く。車を所有していないときだったので、バイクで出掛けた。次の車どうしようかと思っていた時期でもあったので、タイミングもいい。
　まずはベンツ。乗り込み、エンジンをかける。？・・・違和感を感じる。とりあえず言われるがまま、街中を走ってみる。ボディの剛性とか、ギャップのいなし方はベンツそのものだ。でも違う。試乗後、尋ねる。
「エンジン、ベンツじゃ無いですネ。NISSAN のエンジン載せてますね」
　営業マンが驚き、所長を呼ぶ。
「さすがですね。見抜いたの人見さんが初めてです。この車はおっしゃる通り、NISSAN と提携しています」
　ウーーム・・・皆さ~~ん。ベンツの○○、実はエンジン、NISSAN ですよーーッ！
　丁度、車を所有していなかったので、１％くらいは購入の意思があったが、ゼロになった。街中で偉そうにその車種を転がしている人は、おそらく分かってないだろう。ネームバリューだけで乗っている。車好きでも何でも無い。言葉は悪くなるが、空っぽだ。
　帰り際、骨組みがカーボン製のワンポイントのロゴの入った立派な傘を頂いた。いかにも高級品である。後で価格を調べたら、12,000円の傘にワンポイントのロゴを入れていて驚いた。バイクに傘を括り付け、マツダへ向かった。

　同じように試乗する。いい車だ。が、ベンツに乗ったあとでは、エンジン以外、見劣りする。訪れる順序が逆だったら、見積を依頼していたかもしれないくらいいい車だった。
　帰り際、プレゼントの木箱を渡される。重い。
「ジャガイモ１キロです。新ジャガです！」
　どうやって持って帰ろうか。これから毎日、食卓はイモだ。

　傘はどこかに置き忘れ、ジャガイモを食する度に、こんな休日もあったなあと思い出す。