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9 冬華side
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↓冬華side↓
夏休みが終わろうとしていた。
私は紫田先生と一緒に、兄の墓参りに来ていた。お花と線香を供えて、一緒に手を合わせる。
冬華「お兄ちゃん。お兄ちゃんの好きな人連れてきたよー」
千秋「久しぶり、夏輝。なかなか会いに来られなくてごめんな。俺、お前のこと傷つけたよな。本当はちゃんと会って話したかった。本当はさ、俺もお前のこと好きだった。ちゃんとあの時好きだって伝えれば良かった。ごめん…」
冬華「ちゃんと伝わってるよね、お兄ちゃん」
千秋「また、来るから。これからは毎年必ず」
日差しの強い道を先生と歩いていた。
鳴り響く蝉の声。地面から漂う陽炎。
噴き出る汗。
冬華「暑いですね」
千秋「そうだね。こんな日が命日なんて、夏輝らしいよ」
冬華「はは、確かに」
季節は過ぎ去り、卒業式。
桜が散りながらも、まだ肌寒い頃。着慣れた制服に袖を通すのも今日が最後。
校内では泣きながら抱き合う生徒や、制服のボタンをもらおうとしている下級生でごった返していた。
恋春「え、冬華ちゃん!?」
優雨「冬華!?お前、髪どうしたんだよ」
いつものように、あの2人に声かけられる。
冬華「あ、おはよ。2人とも」
恋春「おはようじゃなくて!なんで!?綺麗なストレートだったのに」
冬華「別に、深い意味はないんだけどね」
優雨「にしたって、切りすぎだろ。男みたいだぞ…」
冬華「似合わない?」
恋春「ううん!すっごい似合う!イケメンだよ冬華ちゃん!」
冬華「そっか、なら良かった」
恋春「あっ!!おーーーい紫田せーんせー!」
恋春が遠くにいる先生を呼び止めた。
こちらに向かってくる。
千秋「え、、冬華……さん?」
冬華「なんですか?千秋先生」
千秋「いや、あまりにもイメージが違ったから驚いた」
恋春「ね!紫田先生も似合うと思いますよね」
千秋「うん、そうだね」
優雨「なぁ、冬華。ほんとに意味もなく切ったのかよ」
冬華「優雨には関係ないよー」
優雨「…」
千秋「さ、皆さん。はやく行かないと式が始まります。急いで向かってくださいね。」
冬華「あ、私も行きます」
優雨「あ、まて!冬華!」
恋春「待って!優雨くん」
優雨「なんだよ、恋春。早く追いかけるぞ」
恋春「ねぇ、優雨君は本当に冬華ちゃんのことが好きなんだね」
優雨「だからなんだよ」
恋春「聞いた?冬華ちゃん、卒業したら紫田先生の家のカフェで働くって」
優雨「聞いた…」
恋春「いつの間にかお互い下の名前で呼び合ってるし。たぶん、あの2人くっついちゃうよ…?」
優雨「諦めろって言ってんのか」
恋春「私じゃ…だめなの?」
優雨「は?」
恋春「私じゃ冬華ちゃんの代わりにはなれないの?冬華ちゃんよりずっと昔から優雨くんの隣にいるのに?」
優雨「恋春…」
恋春「私なら、これからもずっと優雨くんの隣にいられるよ…?」
優雨「恋春。代わりとか言うな。お前は誰の代わりにもなれないし、なろうとするな。恋春は恋春だろ」
恋春「うん…」
3年間歩いてきた渡り廊下を千秋先生と歩く。
冬華「先生、本当に似合ってますか?この頭」
千秋「うん、似合ってるよ」
冬華「似てますか…?」
千秋「え?」
冬華「いえ。ただ、兄も卒業式出たかっただろうな。って思ったんです。兄の代わりと言ってはなんですが」
千秋「そうだな、似てるよ」
冬華「ハハッ、良かった」
千秋「なぁ、冬華。本当にあのカフェで働くのか。本当はもっとちゃんとしたところに就職した方がいいだろ」
冬華「いいんです。私あのお店が大好きなんです。それに、先生といると落ち着きます。他の誰かが必要ないくらい」
千秋「そうか」
冬華「勘違いしないでいただきたいのは、好きだとかお付き合いしたいとか、そういう気持ちではないんです」
千秋「そうだな…。俺も冬華といると落ち着くよ」
冬華「利害の一致ですね」
千秋「いいのか、それで」
冬華「いいんですよ」
千秋「そうか」
冬華「あ、先生。写真とりませんか。あの黒板の前で」
千秋「いいけど」
冬華「肩でも組みますか。はいーちーず。…うん、
やっぱりお兄ちゃんには叶わないなぁ。あの写真の方が全然いい表情ですよ。千秋先生」
千秋「お前な」
冬華「さっ!早く行きましょう。遅刻です」
春が過ぎて、暖かい雨に打たれて、夏が来る。
秋の風に吹かれながら、冬を待つ。
季節を超えてこれからもあの日々を思い出すんだろう。
大切な日々をもっと、もっと大事に生きていこう。お兄ちゃんの分まで。
冬華「桜が散ってますね」
千秋「今年も夏がくるな」
END
夏休みが終わろうとしていた。
私は紫田先生と一緒に、兄の墓参りに来ていた。お花と線香を供えて、一緒に手を合わせる。
冬華「お兄ちゃん。お兄ちゃんの好きな人連れてきたよー」
千秋「久しぶり、夏輝。なかなか会いに来られなくてごめんな。俺、お前のこと傷つけたよな。本当はちゃんと会って話したかった。本当はさ、俺もお前のこと好きだった。ちゃんとあの時好きだって伝えれば良かった。ごめん…」
冬華「ちゃんと伝わってるよね、お兄ちゃん」
千秋「また、来るから。これからは毎年必ず」
日差しの強い道を先生と歩いていた。
鳴り響く蝉の声。地面から漂う陽炎。
噴き出る汗。
冬華「暑いですね」
千秋「そうだね。こんな日が命日なんて、夏輝らしいよ」
冬華「はは、確かに」
季節は過ぎ去り、卒業式。
桜が散りながらも、まだ肌寒い頃。着慣れた制服に袖を通すのも今日が最後。
校内では泣きながら抱き合う生徒や、制服のボタンをもらおうとしている下級生でごった返していた。
恋春「え、冬華ちゃん!?」
優雨「冬華!?お前、髪どうしたんだよ」
いつものように、あの2人に声かけられる。
冬華「あ、おはよ。2人とも」
恋春「おはようじゃなくて!なんで!?綺麗なストレートだったのに」
冬華「別に、深い意味はないんだけどね」
優雨「にしたって、切りすぎだろ。男みたいだぞ…」
冬華「似合わない?」
恋春「ううん!すっごい似合う!イケメンだよ冬華ちゃん!」
冬華「そっか、なら良かった」
恋春「あっ!!おーーーい紫田せーんせー!」
恋春が遠くにいる先生を呼び止めた。
こちらに向かってくる。
千秋「え、、冬華……さん?」
冬華「なんですか?千秋先生」
千秋「いや、あまりにもイメージが違ったから驚いた」
恋春「ね!紫田先生も似合うと思いますよね」
千秋「うん、そうだね」
優雨「なぁ、冬華。ほんとに意味もなく切ったのかよ」
冬華「優雨には関係ないよー」
優雨「…」
千秋「さ、皆さん。はやく行かないと式が始まります。急いで向かってくださいね。」
冬華「あ、私も行きます」
優雨「あ、まて!冬華!」
恋春「待って!優雨くん」
優雨「なんだよ、恋春。早く追いかけるぞ」
恋春「ねぇ、優雨君は本当に冬華ちゃんのことが好きなんだね」
優雨「だからなんだよ」
恋春「聞いた?冬華ちゃん、卒業したら紫田先生の家のカフェで働くって」
優雨「聞いた…」
恋春「いつの間にかお互い下の名前で呼び合ってるし。たぶん、あの2人くっついちゃうよ…?」
優雨「諦めろって言ってんのか」
恋春「私じゃ…だめなの?」
優雨「は?」
恋春「私じゃ冬華ちゃんの代わりにはなれないの?冬華ちゃんよりずっと昔から優雨くんの隣にいるのに?」
優雨「恋春…」
恋春「私なら、これからもずっと優雨くんの隣にいられるよ…?」
優雨「恋春。代わりとか言うな。お前は誰の代わりにもなれないし、なろうとするな。恋春は恋春だろ」
恋春「うん…」
3年間歩いてきた渡り廊下を千秋先生と歩く。
冬華「先生、本当に似合ってますか?この頭」
千秋「うん、似合ってるよ」
冬華「似てますか…?」
千秋「え?」
冬華「いえ。ただ、兄も卒業式出たかっただろうな。って思ったんです。兄の代わりと言ってはなんですが」
千秋「そうだな、似てるよ」
冬華「ハハッ、良かった」
千秋「なぁ、冬華。本当にあのカフェで働くのか。本当はもっとちゃんとしたところに就職した方がいいだろ」
冬華「いいんです。私あのお店が大好きなんです。それに、先生といると落ち着きます。他の誰かが必要ないくらい」
千秋「そうか」
冬華「勘違いしないでいただきたいのは、好きだとかお付き合いしたいとか、そういう気持ちではないんです」
千秋「そうだな…。俺も冬華といると落ち着くよ」
冬華「利害の一致ですね」
千秋「いいのか、それで」
冬華「いいんですよ」
千秋「そうか」
冬華「あ、先生。写真とりませんか。あの黒板の前で」
千秋「いいけど」
冬華「肩でも組みますか。はいーちーず。…うん、
やっぱりお兄ちゃんには叶わないなぁ。あの写真の方が全然いい表情ですよ。千秋先生」
千秋「お前な」
冬華「さっ!早く行きましょう。遅刻です」
春が過ぎて、暖かい雨に打たれて、夏が来る。
秋の風に吹かれながら、冬を待つ。
季節を超えてこれからもあの日々を思い出すんだろう。
大切な日々をもっと、もっと大事に生きていこう。お兄ちゃんの分まで。
冬華「桜が散ってますね」
千秋「今年も夏がくるな」
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