僕たちはまだ人間のまま

ヒャク

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第125話「きちんと話しをしよう。」

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「俺のこと嫌いになったの?」
「嫌いなわけないだろ、、好きだから、辛いんだよ」

ぼろぼろの泣き顔が芽依を見上げた。
黒くて長いまつ毛に水滴がついてキラキラしているのが見える。
芽依は鷹夜を見下ろして、安心させるように細い腰を抱き、コツン、と額をぶつけた。

「萎えたのは、ごめん。本当に。でもアレは鷹夜くんがどうって話しじゃないの」
「俺以外に原因あるわけないだろ」
「あーるーの」
「、、なに」

ふぅ、と息をついた芽依は、甘えるように鷹夜の鼻先に自分のを擦った。
ふわふわと芽依のシャンプーの匂いがして、鷹夜は少しだけ胸の中が落ち着いてきている。
彼の体温や匂いで安心するくらいには、鷹夜はどっぷりと芽依の事が好きなのだ。

「かっこ悪い話しするから、嫌いにならないでね」

そんな訳あるか、と頭の中でぼやく。
むしろ、嫌になったのはお前の方なんじゃないかと疑ってすらいた。
何せフェラしていたのに性器はへにゃへにゃに萎えたのだから。

「、、ん」

不機嫌そうな返事を聞いて、芽依は肩から力を抜いてから口を開いた。

「俺ね、緊張すると勃たなくなるんだ」
「、、え?」

芽依の言いにくそうな声に、見つめていた鼻先から視線を上げて鷹夜は目を閉じて話している彼の顔を見た。
まつ毛が長く、目を閉じていても顔が整っているのがよくわかる。
唇の形が薄く綺麗で、瞼に刻まれている二重のラインがくっきりしていた。

「かっこ悪いでしょ、、その、こんな話し鷹夜くんにするべきじゃないけど、初体験のときもかなり時間かかったんだ。何回もしようとして何回もダメで、好きな子に挿れるって考えると萎えちゃって、それで別れそうになったりもした。色々頑張って慣れてきたら萎えることなんてなくなったんだけど、その、、今日は、違うじゃん」
「、、なにが?」

ぱち、と芽依が目を開く。

「ぁ、」

鷹夜と同じように涙が滲んだ瞳は不安げで、大型犬と言うよりも小さいチワワに見えた。
微かに震えている唇は薄く、形が美しい。

「た、鷹夜くんにッ、、挿れるんだから、そりゃ、緊張するじゃんッ」
「え?わっ!」

裏返った声だった。
思い切り抱き締められ、芽依の顔がいつものように肩に埋まる。

(俺に、挿れるから緊張した?)

先程までの緊張感や悲しみはどこへ行ったのか、鷹夜はポカンとして芽依の体温に包まれていた。
相変わらず自分よりも20センチ程背の高い男はがっしりした筋肉がついていて、腰にまわされている腕の筋の出方に目を奪われそうになる。
けれど、鷹夜の頭はフル回転で、今言われた言葉を処理していた。

(緊張すると芽依は勃たなくて、俺に挿れるから緊張した、、?)
「え、だってずっと勃ってたじゃん」

鷹夜がフェラを始めるまで、芽依の性器は触らなくてもバキバキに勃起していたのを彼は覚えている。
嘘つけ!
と、強めに芽依の肩を叩いた。

「ずっと勃ってたから!良かった大丈夫だ鷹夜くんにカッコ悪いとこ見せなくて済む~って思ってたらいきなりフェラするって言うし、鷹夜くんが緊張してんのも触られた瞬間にめちゃくちゃ伝わってきて、もうあの瞬間にパンクしたの!!手、震えてんだもん!!怖がってんだもん!!」
「お、俺のせいか、ごめん。アレは本当に緊張してて、」
「あ、違う鷹夜くんのせいとかじゃなくて!!」

ガバッと身体を離し、芽依は鷹夜の肩を掴んで彼をジッと見つめた。
泣きそうだった顔は今度は恥ずかしさで真っ赤に染まり、焦って、困って、唇が不安そうに半開きのまま、何を言おうかと迷っている。

「、、、」

逆に今度は鷹夜が冷静さを取り戻していた。

(落ち着こう。俺が思ってるより、簡単な話しなのかも、、)

元々、お互いに少し被害妄想をする癖がある。
鷹夜は恥をかきながらも必死に自分に説明してくれる芽依を見て頭の中が少しずつ整理されてきていた。
先程のように嫌な事を考えてクヨクヨしている暇はないのだとやっと前向きに考え始めたのだ。

「芽依、ごめん、わかった。大人気ない態度取ってごめん、、座ってゆっくり話したい」
「どこにも行かない、、?」
「行かない。帰らない。芽依のそばにいさせて」
「っ、、うん」

鷹夜に見捨てられる、と言う不安がやっと消えて、芽依も口元を緩めた。
お互い正気に戻って話す必要があるなと察して、鷹夜と芽依は一旦ソファに座る。

「芽依」
「ん?」
「膝、座ってい?」
「え」

悪いことしたなあ、と思いつつ鷹夜は芽依にそう言った。
キョトンとする彼を無視してソファに座った芽依に跨ると、彼の太ももの上にストンと腰掛ける。
「食べて太って」とよく言われるので、芽依からしたら自分の体重は軽いのだろうと、容赦なく体重を預けた。

「寒くない?」
「大丈夫」

脱いだ服を全部着た鷹夜と違い、トイレに駆け込んだ鷹夜を急いで追ってきたままの芽依はボクサーパンツしか履いていない。

「ん」
「抱っこしてていいの?腕回していい?」
「別にいいよ」

鷹夜の許しが出ると、芽依はでれっとした顔で笑い、嬉しそうに鷹夜の細い腰に再び腕を回した。
また大型犬に戻ったなあ、と鷹夜はそんな彼の頭をポンポンと撫でてやる。

「パニクってごめんね。芽依のちんこ、俺がフェラしてから萎えたから、俺のことが気持ち悪くなって萎えたんだと思ったんだ」

落ち着きを取り戻した鷹夜は芽依の顔に触れて、頬を両手で包んでムニムニと揉んで遊びながら、そんな真剣な話しを始めた。

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