8 / 21
8
しおりを挟む
俺も救急車に乗り込み付き添った。
名前も、年齢も何も知らない。病院で色々聞かれたが、何も答えられない。その事実が腹立たしい。
もっと話しかけていれば。あの時にもっと話していれば。後悔ばかりだ。
意識はまだ戻らない、このまま消えていなくなってしまいそうな危うさがある。
あの時駆けつけて良かった。夜道を徘徊してて本当に良かった。誰も気付かずあのままだったら……。
そう思うと背筋が寒くなる。手が震える。こんなに誰かの事で動揺するなんて。こんな事があって漸く自分の気持ちに気付くなんて……。阿保すぎてわらえねぇ。
点滴の管を繋がれたウデが細すぎて痛々しい。3週間で何があったのか、目の下のクマがひどい。少し痩せた様に見える。食べに来てくれた時はこんなじゃ無かったはずだ。だが、定かではないか、上辺しか見ていなかった。
俺も、俺に寄ってきた奴らと同じ事してたんだな。そりゃ、話もしてくれない訳だ。
だが、折角のチャンスだ、これから絶対に落としてみせる。
俺はしつこいからな。側に居ない時に危険な目に遭っているなんて、今回だけで懲り懲りだ。もう後悔なんかしたくねぇ。たった一人の大切な人を守れないなんて漢じゃねぇ!
少しずつだな。焦らず、じっくり、確実にだ。
悪いな美人さん。俺に惚れられちまったんだ。諦めてくれ、もう逃がさないぜ。
目を開けたら明るい部屋に知らない天井。どこだ?ここ。身体が重くて動かない。手が……。大きな暖かい手に包まれている。
(え?だれ?)
ゆっくりとしか動かせない首でそちら側を向いた。
(なんで?)
椅子にもたれて僕の手を握って眠る人に驚き過ぎて、手がビクッとなった。起こしてしまった。
「お!やっと気が付いたか。一日眠ったまんまだったから心配したよ。良かった、漸くほっとした。俺が誰か分かるか?階段から落ちた時、頭を打ってるから。心配だ」
(あ。そうだ、僕、階段から落ちたんだった。ここは病院か)
「やっぱり。強く頭を打ったから、もしかしたら記憶がないのか?大変だ、先生呼ばなきゃな……」
「あ、あの、大丈夫です……記憶は大丈夫です……先生は呼ばないでください」
答えるのに少し間が空たせいで先生を呼んでしまうところだった。
「おはようございます」
部屋のドアを開け、ちょうど先生と思われる人と、看護師さんが入って来る。
あ、ヤバい、発作が出ちゃう。
はじめての環境と、知らない人達が、入り口からどんどんこちらに近づいて来る。その恐怖に、先生とわかっているのに、怖い。
どうしようもなく身体が拒否してしまう。息がしづらい、怖い、怖い、知らない人が、僕に話しかけてくる。心臓がバクバクする。怖い。どうしよう、怖い……。
いき…が……で…き……な…………い…………。
久しぶりに発作をおこし、気が遠くなっていった。
意識が遠のく僕の耳に、マキさんの焦った声が聞こえていた。
「あ、先生。今気がつきました。記憶も大丈夫みたいで……おい、どうした!
先生!息が苦しそうだ!どうして急に!」
(おどろかせてごめんなさい)
声にはならなかった。
名前も、年齢も何も知らない。病院で色々聞かれたが、何も答えられない。その事実が腹立たしい。
もっと話しかけていれば。あの時にもっと話していれば。後悔ばかりだ。
意識はまだ戻らない、このまま消えていなくなってしまいそうな危うさがある。
あの時駆けつけて良かった。夜道を徘徊してて本当に良かった。誰も気付かずあのままだったら……。
そう思うと背筋が寒くなる。手が震える。こんなに誰かの事で動揺するなんて。こんな事があって漸く自分の気持ちに気付くなんて……。阿保すぎてわらえねぇ。
点滴の管を繋がれたウデが細すぎて痛々しい。3週間で何があったのか、目の下のクマがひどい。少し痩せた様に見える。食べに来てくれた時はこんなじゃ無かったはずだ。だが、定かではないか、上辺しか見ていなかった。
俺も、俺に寄ってきた奴らと同じ事してたんだな。そりゃ、話もしてくれない訳だ。
だが、折角のチャンスだ、これから絶対に落としてみせる。
俺はしつこいからな。側に居ない時に危険な目に遭っているなんて、今回だけで懲り懲りだ。もう後悔なんかしたくねぇ。たった一人の大切な人を守れないなんて漢じゃねぇ!
少しずつだな。焦らず、じっくり、確実にだ。
悪いな美人さん。俺に惚れられちまったんだ。諦めてくれ、もう逃がさないぜ。
目を開けたら明るい部屋に知らない天井。どこだ?ここ。身体が重くて動かない。手が……。大きな暖かい手に包まれている。
(え?だれ?)
ゆっくりとしか動かせない首でそちら側を向いた。
(なんで?)
椅子にもたれて僕の手を握って眠る人に驚き過ぎて、手がビクッとなった。起こしてしまった。
「お!やっと気が付いたか。一日眠ったまんまだったから心配したよ。良かった、漸くほっとした。俺が誰か分かるか?階段から落ちた時、頭を打ってるから。心配だ」
(あ。そうだ、僕、階段から落ちたんだった。ここは病院か)
「やっぱり。強く頭を打ったから、もしかしたら記憶がないのか?大変だ、先生呼ばなきゃな……」
「あ、あの、大丈夫です……記憶は大丈夫です……先生は呼ばないでください」
答えるのに少し間が空たせいで先生を呼んでしまうところだった。
「おはようございます」
部屋のドアを開け、ちょうど先生と思われる人と、看護師さんが入って来る。
あ、ヤバい、発作が出ちゃう。
はじめての環境と、知らない人達が、入り口からどんどんこちらに近づいて来る。その恐怖に、先生とわかっているのに、怖い。
どうしようもなく身体が拒否してしまう。息がしづらい、怖い、怖い、知らない人が、僕に話しかけてくる。心臓がバクバクする。怖い。どうしよう、怖い……。
いき…が……で…き……な…………い…………。
久しぶりに発作をおこし、気が遠くなっていった。
意識が遠のく僕の耳に、マキさんの焦った声が聞こえていた。
「あ、先生。今気がつきました。記憶も大丈夫みたいで……おい、どうした!
先生!息が苦しそうだ!どうして急に!」
(おどろかせてごめんなさい)
声にはならなかった。
0
あなたにおすすめの小説
とあるΩ達の試練
如月圭
BL
吉住クレハは私立成城学園に通う中学三年生の男のオメガだった。同じ学園に通う男のオメガの月城真とは、転校して初めてできた同じオメガの友達だった。そんな真には、番のアルファが居て、クレハはうらやましいと思う。しかし、ベータの女子にとある事で目をつけられてしまい……。
この話はフィクションです。更新は、不定期です。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる
衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。
男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。
すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。
選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。
二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。
元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる