優しくしないで

やのつばさ

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 ふと目が覚めた、いけない。あのまま眠ってしまっていた。

 手首の痛さが酷くなっている、お尻もズキズキ痛んでやっぱり動けない。発熱もしているのか、寒気がする。

 どうにか這うように布団に入り包まった。うっすらと吐き気もする。

 痛い、すごく痛い。どうしよう。怖い。怖いよ。寒いよ。

 僕は、身体は丈夫みたいで、風邪も一年に一度引くかな?という程度。だから家には薬が何も常備されていない。
 痛みが少しでも引いてくれれば、どうにかなるかも知れない。

 ならないかもしれないけど、今はとにかく寒気がひどく寝るしか出来なそう……。

 明日、薬を買いに行こう。とにかく明日考えよう。

 僕は、ぞくぞくする寒気に震えながら、痛みに耐え寝ることを選んだ。



 翌日、寝たのかどうか、わからない眠りから目が覚めても、やっぱり痛みがひどい、寒気はしなくなったけど、熱が高そうな気がする。頭がふわふわしてる。

 とにかく起き上がることが難しい。動きが全部お尻に響く。怖くて見ないようにしていた手首を見てみる。
 見たことない程腫れている、全然動かす事が出来ない。患部の色もおかしい。悪い予感がして、涙が零れる。どうしよう。

 お尻も座ることが出来ない痛さに、やっぱり身体の異変を認めるしかないみたいだ。

 病院に行くしかないよな。

 無駄な出費は辛いけど、利き手だし、仕事ができなくなったらもっと困る。

 今日はもう暗いから、とっくに診察時間は終わっちゃってる。明日、朝に行こう。

 今は、とにかく痛み止めが欲しい。少しでも痛みを和らげたい。

 ふらふらしながら、ノロノロとしか進められない準備をどうにか整えて、昨日のドラッグストアを目指す。

 そうだった、この難関があった。

 アパートの階段を前に、足が止まってしまった。下りの階段に躊躇してしまう。

 行くしか無いか……。痛み止めが欲しい。ゆっくり行けば大丈夫。

 一段ずつ、一段ずつ、ゆっくり降りていく。このままゆっくり。

 熱のせいで頭がふわっとした。(あ!いけない)

 とっさに出たのが右手で、手摺を掴めない。
 ゆっくりと、自分が階段を転がり落ちる瞬間が迫ってくる。

 目の前に階段の段差が見える。僕は本当にどうしようもないや……。

 階段に、強く頭を打ちつけた。ガタゴトすごい音を響かせ下まで転がり落ちたんだろうな。
 階段の下まで落ちる前に、もう意識はなかった。



 昨日、美人さんが歩いてたの、この辺だったよなー。3週間ぶりに見かけたふわふわ頭を、途中までついつい尾行しちまった。
 駅前のドラッグストアに行く道すがら、たまたま見かけた。
 美人さんも駅前の方に向かってた様だったが、途中惜しくも裏通りへ曲がってしまった。もう少し見ていたかったが、このまま尾行を続けたら流石にヤバいな。

 と、泣く泣く曲がって進み去る姿を見送った。

 多分この辺に住んでると思うんだよなー。

 今はタバコを買いに行くという名目を掲げ、あわよくば昨日の様な出会いを願って、夜の散歩だ。
 徘徊じゃねえ。

 この辺だと思うんだよなー。古いアパートを通り過ぎて、不審者にならないように気をつけつつ、周りを見て歩く、そんなにうまく会えるはずねーよなー。ポケットのタバコを取り出そうと立ち止まった時。
 夜の静寂にガッタンゴロゴロドガン!通り過ぎたアパートらへんからすごい音が聞こえた。

 不思議だが、ひどい胸騒ぎを覚えた、小走りで音を確認に行く。なんでもないならそれでいい。違うならそれでいい、確認だ。

 悪い予感が当たってしまった。
 アパートの階段の下に、美人さんが倒れている。意識がない、額から血も流れている。

 嘘だろ!おいっ!あっ!ダメだ。頭を打っているから動かさない方がいいな……
 電話だ電話!救急車だ!

 ぐったりしている。大丈夫なのか……。

 下手に動かせないし、救急隊員の到着を、心が急かす。早く!早く!頼む!早く!
 
 早く来てくれ……。



 


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