梅雨の快晴に

林檎飴。

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突然のキスは何の味?~未来side

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これは1人に1回、一生に一度だけの運命の恋物語。


「おっはよー!」私は少し古びて色褪せている教室のドアを元気よく開ける。
「未来おはよ! 今日先生出張らしいよ。」このショートヘアで少し寝癖が残っている、メガネをかけてる女子は私の唯一無二の親友、成瀬 真希。
「そーなんだ! ラッキーだね」
そして私は綾瀬 未来。゙みらい゙って書いでみぐって読むの。
私は元気で明るくてお調子者キャラ。今はね! 少し前までの私は正直言って根暗でかたくて真面目。声を掛けてくれる友達も少なくて…今とは正反対の性格だった。でもそれを変えてくれたのが――……
「未来、こんな所で何やってんの?」
そう言って私の頭に手を置いた男子は私の一生に一度の運命の恋の相手、青柳 瞬。
バスケ部のエースで女子から絶大な人気を集めている。
「あ! 瞬君きたよ!」そう1人の女子が叫んだ瞬間、瞬は女子に囲まれた。顔も整っていてスポーツ万能、性格も良ければ勉強も出来て欠点が無ければそれはそうなんだろうけど…。
私は頬をむうっと膨らませて窓を開ける。
季節は梅雨。まだ高校生になったばかりで未熟な1年生。
風がくすぐるように私の膨らませた頬を撫でる。
「快晴だね」思わずそう呟いてしまう程に晴れ渡った空が心地よかった。
あの日もこんな気持ちの良い天気だった、それはそれは絵に書いたような雲一つない澄んだ空。
あれは私がまだ中学2年生で人を信じることが安易に出来なくなっていた頃のこと―――……


「「「キャーー!!」」」遠くからミーハーな女子達の黄色い歓声が聞こえてくる。
まあ私にはあまり関係の無いことで、それよりも早く中間テストの結果が気になる。
窓側の角の席で、影が薄い私はもっと存在感が無くなっていた。小学生の頃の私はこんなにも楽しくない学校生活が待っているとも知らずに、ひたすら勉強に明け暮れてやっとの事で受かった進学校なのだが、思い描いていたものとは違っていた。よくマンガで見るような青春を味わってみたかったのだが、もう今になっては成績1位を守り抜くことしか頭にない。人見知りでスタートが出遅れた私は結局声を掛けられずに今に至る。
もう梅雨だというのにやけに澄んだ空で常に常備している折りたたみ傘が拍子抜け。
そんな空を何となく見つめていると、先生が教室に入って来たようだ。毎朝の長々しい先生の話が終わると、いよいよ中間テストの結果発表。出席番号順に教壇の前に一斉に並ぶ。テストがどんどん返されていく。それぞれ喜びの声をあげる者、ショックで声が出ない者など教室はザワついている。ドキドキ…少しずつ教壇に近付いて緊張感が大きくなる。
「はい、綾瀬さん。今回も素晴らしいわ!」先生が満足気にテストを私の前に差し出す。
「…ありがとうございます。」私は久しぶりに学校で言葉を発したからか、直ぐには声が出なかった。
席についてから裏返したテストを表に向ける。よし! 今回は自己ベスト! そう心の中で叫ぶ。結果は5科目合計、494点。これなら余裕で学年トップだろう。
「はい、皆さんお疲れ様でした。」先生がザワついたままの教室を静めるように大声を出す。次の瞬間衝撃の一言が発される。
「今回の学年1位は2人います。」再び教室がザワついた。信じられない、同点1位ってこと!? 私は勉強だけが取り柄だったので衝撃が隠せない。
「今回の学年1位は綾瀬さんと青柳君よ。皆んな見習うようにね!」先生が悪戯な笑みを浮かべてそう言う。青柳…? 誰だっただろうか。すると突然、
「「「キャーー!!」」」再びミーハー女子が騒ぎ始めた。
どうやら青柳という男子は、今年転校してきた女子の絶大な人気を誇る完璧王子だったらしい。私は絶対復讐に燃えて、次回絶対単独1位を取るために勉強にもっと精進すると心に誓う。
私は次の授業の準備のためロッカーに向かう。沢山の教科書を抱えて歩き出した途端――……
ドサドサ…
私は体に激しい衝撃を受ける。誰かとぶつかった…?
「ごめんね、大丈夫?」そう声を掛けられる。私はぶつかった時に教科書の紙で切った指を見ながら、
「大丈夫です。すみませんでした。」と冷たく言う。そして教科書を集めて立ち去ろうとした時、グイっと手を引かれる。
「指、怪我したんでしょ? 保健室に行こ」とその男子が手を引いたまま走り出す。
「い、いえ、大丈夫ですので!」そう叫んだ声は届かなかった。
保健室の先生は外回り中のようで誰もいない静まり返った保健室に入る。彼は絆創膏を取って、私の指に優しく貼ってくれた。
「ありがとうございます。」私は小声でそう言う。すると彼は、
「ねぇ、もうしかして綾瀬さん?」不意な質問に驚きながら
「はい、そうですがどちら様でしょうか?」何故名前を知っているのか疑問に思いつつ彼に問う。
「僕は清水 瞬だよ。綾瀬さんよろしくね!」そう満面の笑みで彼は言った。清水? どこかで聞いた気がする…。そう考え込んでいると、
「同じ学年1位の人ずっと気になってたんだよね。」あ!この人か!確かに顔も整っていて性格も良さそうだけど…悔しい。
「ありがとうございました、では。」そう言って立ち去ろうとした時、再び手を取られた。
「あの、今度は何でしょう?」私は早くしないと授業が始まってしまうのに今度は何んだろう、と不機嫌に言った。
「ん?なんか好きになっちゃった。」彼は曇り1つない、今日の晴れ渡った空の様な笑顔でそう言う。
「は、はぁ!? 冗談に付き合う時間はないので。」一瞬驚いてしまったが、やはり完璧王子にもなれば女子を口説き倒しているのだろう。
「僕は本気だよ? これから絶対好きって言わせるから見ててね?」何を言っているのだろう、この人は。呆れて手を振り払い教室に帰った。
好き、だなんて男子に言われたのは初めてのことで授業中気にしないフリをしていたが何回も思い出して赤面してしまう。どうせ演技だと分かっているのに、これだから免疫が少ないと困る。
「さようなら。」先生がそう言うと
「「「さようなら!」」」帰りはやけにテンションが高いクラスメイトが一斉に叫ぶように言う。
はぁ。こんな事は気にせずに早く帰ってお風呂に入ろう。鞄を手に取りいつの間にか薄暗くなっていた空を見る。
「綾瀬さん」ん…? 呼ばれた? 普段学校で声を掛けられる事など滅多にない私は少し驚いて振り返る。
チュ…
唇になにか…? リップ音…? 理解のできない事が立て続けに続いて私は状況が理解できない。
「キスしちゃった」え? キス? 清水君? も、もしかして!? 私は次第に自分の顔が赤くなっていくのが分かった。よく人はキスは甘酸っぱい恋の味、と言うけれど突然の出来事で味なんて考える暇は無かった。
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