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同僚の忠告
「ちょっとアニー! あんたさ、まだライアス隊長に手作り菓子あげてんの? 既婚者にちょっかい出すの止めなよみっともない!」
アニーは同じ事務方の同僚にライアスへの差し入れの件を非難されていた。
「は? 関係ないじゃない! それにライアス隊長だって喜んで受け取ってくれるんだよ? 懐かしくて美味しいって!」
「受け取っちゃうライアス隊長も大概だけどさ、既婚者に手料理渡すアンタもどうかと思うよ? アンタが隊長のこと好きだったのは知ってるけど、あの人が選んだのはあの綺麗な奥様じゃん? 言いたかないけど、アンタじゃ勝ち目なんて一つもないよ」
同僚の言葉にアニーはカッと頭に血が上った。
自分よりもあの妻が綺麗なのは分かっている。でもアニーは昔からずっとライアスのことが好きでたまらなかった。
ライアスのことを昔から想っていたのは自分なのに、いきなりぽっと出の貴族令嬢に掻っ攫われたのだ。
いわばあの女は自分からライアスを盗った泥棒だとアニーは本気で思っていた。
「違うわよ! ライアス隊長が選んだんじゃなくて、上からの命令で無理矢理あの奥さんと結婚させられたの! 隊長は本当は貴族になんかなりたくなかったんだよ! それなのにあの奥さんと結婚したせいで無理矢理貴族にさせられてさ! 妻といると癒されないって嘆いてたんだよ!? 可哀想じゃない?」
「はあぁ? 奥様は将軍のご息女よ? 村出身で平民のライアス隊長が将軍のご息女、しかも貴族令嬢と結婚できたのなんてすっごい幸運だと思うけど? というか、隊長になれたのだって奥様と結婚したからだし。逆玉の輿もいいとこだよ。……それにさ、アンタは別に隊長の恋人だったわけでもないんだから、図々しいよちょっと」
「なっ……!? あの奥さんさえいなければ、アタシがライアス隊長と結婚してたかもしれないじゃない!?」
「ないない、そんなこと。だってアンタが一方的に慕っているだけじゃん? ちょっとでも脈があるなら『菓子のお礼に~』とかで食事の一つにでも誘われてるでしょう? 現実は食事どころかお礼の品一つくれないじゃん」
同僚は言っているうちに「貰うくせしてお礼の一つもしないとか、隊長って最悪な男だな」と思えてきた。
彼はアニーが自分に好意を寄せていることを分かっている。そしてそんな好意を寄せられる自分に酔っている。
改めてどうしようもない男だなと同僚はため息をついた。
「お礼目当てにしているわけじゃないわよ! ただ、ライアス隊長が喜んでくれるのが嬉しくてしてるだけ! 故郷の味で少しでも心を癒してほしいからよ!」
「……既婚者にちょっかいかける女って、皆おなじこと言うよね。『奥さんじゃ彼を癒せない』とか『私が癒してあげたい』とかさ。男の方だって、どうせその場のノリで言ってるだけなのに。アンタ、これが原因で隊長が離婚したらどうするの?」
「えっ……!?」
離婚と聞いて嬉しそうな顔をするアニーに同僚はため息をついた。
どうして既婚者に言い寄る女はこうもお花畑な脳みそばかりなのかと。
「嬉しそうにしてるけどさ、離婚して隊長が独身に戻るなんていう単純な話じゃないんだよ? 貴族の結婚に亀裂を入れた平民がどうなるかなんて考えなくてもわかるでしょう? 少なくとも隊長を薦めた師団長の怒りは間違いなく買うからね」
同僚がこうもアニーに注意するのは彼女が貴族の恐ろしさを知っているからである。
彼女が子供の頃、村で評判の美人が領主さまにちょっかいをかけたせいで領主夫人の怒りを買い、見るも無残な姿にされたのを覚えている。
平民が貴族の怒りを買えば恐ろしい目に合う。
嫌でもそれを知ったからこそ、そうならないためにアニーに敢えて厳しく言うのだ。
だがそんな同僚の心配は恋に恋するアニーには届かない。
「いいの! どんな障害があろうともアタシがライアス隊長を想う気持ちの方が強いもの!」
何があろうとも負けない! と言わんばかりのアニーの態度に同僚は呆れかえった。
「アンタはただ恋を楽しんでいるだけだろうけど、周りから見ればただ既婚者にちょっかいかける略奪狙い女だからね? それを忘れない方がいいよ……」
もう同僚にはアニーが悲惨な道を進む未来しか見えない。
そして同僚の予想は当たっており、この日から数日も立たないうちにアニーは信じられないほどの窮地に立たされることとなる……。
アニーは同じ事務方の同僚にライアスへの差し入れの件を非難されていた。
「は? 関係ないじゃない! それにライアス隊長だって喜んで受け取ってくれるんだよ? 懐かしくて美味しいって!」
「受け取っちゃうライアス隊長も大概だけどさ、既婚者に手料理渡すアンタもどうかと思うよ? アンタが隊長のこと好きだったのは知ってるけど、あの人が選んだのはあの綺麗な奥様じゃん? 言いたかないけど、アンタじゃ勝ち目なんて一つもないよ」
同僚の言葉にアニーはカッと頭に血が上った。
自分よりもあの妻が綺麗なのは分かっている。でもアニーは昔からずっとライアスのことが好きでたまらなかった。
ライアスのことを昔から想っていたのは自分なのに、いきなりぽっと出の貴族令嬢に掻っ攫われたのだ。
いわばあの女は自分からライアスを盗った泥棒だとアニーは本気で思っていた。
「違うわよ! ライアス隊長が選んだんじゃなくて、上からの命令で無理矢理あの奥さんと結婚させられたの! 隊長は本当は貴族になんかなりたくなかったんだよ! それなのにあの奥さんと結婚したせいで無理矢理貴族にさせられてさ! 妻といると癒されないって嘆いてたんだよ!? 可哀想じゃない?」
「はあぁ? 奥様は将軍のご息女よ? 村出身で平民のライアス隊長が将軍のご息女、しかも貴族令嬢と結婚できたのなんてすっごい幸運だと思うけど? というか、隊長になれたのだって奥様と結婚したからだし。逆玉の輿もいいとこだよ。……それにさ、アンタは別に隊長の恋人だったわけでもないんだから、図々しいよちょっと」
「なっ……!? あの奥さんさえいなければ、アタシがライアス隊長と結婚してたかもしれないじゃない!?」
「ないない、そんなこと。だってアンタが一方的に慕っているだけじゃん? ちょっとでも脈があるなら『菓子のお礼に~』とかで食事の一つにでも誘われてるでしょう? 現実は食事どころかお礼の品一つくれないじゃん」
同僚は言っているうちに「貰うくせしてお礼の一つもしないとか、隊長って最悪な男だな」と思えてきた。
彼はアニーが自分に好意を寄せていることを分かっている。そしてそんな好意を寄せられる自分に酔っている。
改めてどうしようもない男だなと同僚はため息をついた。
「お礼目当てにしているわけじゃないわよ! ただ、ライアス隊長が喜んでくれるのが嬉しくてしてるだけ! 故郷の味で少しでも心を癒してほしいからよ!」
「……既婚者にちょっかいかける女って、皆おなじこと言うよね。『奥さんじゃ彼を癒せない』とか『私が癒してあげたい』とかさ。男の方だって、どうせその場のノリで言ってるだけなのに。アンタ、これが原因で隊長が離婚したらどうするの?」
「えっ……!?」
離婚と聞いて嬉しそうな顔をするアニーに同僚はため息をついた。
どうして既婚者に言い寄る女はこうもお花畑な脳みそばかりなのかと。
「嬉しそうにしてるけどさ、離婚して隊長が独身に戻るなんていう単純な話じゃないんだよ? 貴族の結婚に亀裂を入れた平民がどうなるかなんて考えなくてもわかるでしょう? 少なくとも隊長を薦めた師団長の怒りは間違いなく買うからね」
同僚がこうもアニーに注意するのは彼女が貴族の恐ろしさを知っているからである。
彼女が子供の頃、村で評判の美人が領主さまにちょっかいをかけたせいで領主夫人の怒りを買い、見るも無残な姿にされたのを覚えている。
平民が貴族の怒りを買えば恐ろしい目に合う。
嫌でもそれを知ったからこそ、そうならないためにアニーに敢えて厳しく言うのだ。
だがそんな同僚の心配は恋に恋するアニーには届かない。
「いいの! どんな障害があろうともアタシがライアス隊長を想う気持ちの方が強いもの!」
何があろうとも負けない! と言わんばかりのアニーの態度に同僚は呆れかえった。
「アンタはただ恋を楽しんでいるだけだろうけど、周りから見ればただ既婚者にちょっかいかける略奪狙い女だからね? それを忘れない方がいいよ……」
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