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思ってたより馬鹿だったな
「ライアスが帰ってくる日まで気が気じゃなかったよ。あいつが毒薬のことを知っていたらどうしようってさ……。まさかこんな、ただ嵌められただけなんて……想像もしてなかったわ」
村長は気怠そうな様子でそう話す。
「ええ。それにしてもそんな初歩的な罠に嵌まるとは……。意外にお馬鹿さんでしたのね。貴族が毒見をしていない食物を避けることは基本ですわよ」
「いや~……俺もあいつがここまで馬鹿だったとは思ってもいなかったわ。というか、びっくりするほど深く物事を考えないんだな……。俺はあいつに『軍から手紙が届いたからそれを確認してほしい』と嘘をついてここに連れてきたんだが、全くそのことに触れなかったな。飯食って葉巻吸って、話をしたら帰ってったわ……」
村長は毒薬のことを聞くためにライアスを家まで連れてきた。
嘘の手紙まで準備しておいたのだが、彼はそのことに全く触れなかったのだ。
「食べ物に仕込まれた毒に倒れたというのに、何の警戒もなく俺が出した料理を食ってたな……。肝が太いのか、何も考えてないのか……まあ後者だろうな。それに、それくらい鈍感な方が義妹の婿さんに向いているだろうよ」
「それですけど……どうしてライアスを妹の婿に推薦したのですか?」
「ん? あのままライアスを放置したらまた余計な諍いの種を運びそうだからな。お貴族様に嵌められて毒飲まされたー、なんて口外したらヤバイことを平気で喋りそうだったぞ、あいつ」
「まああ……なんて命知らずなのかしら? そんなこと口外すれば黒幕の貴族が暗殺者くらい寄こしてきそうですわ……。そうなれば自分の家族だって危険なのに……なんでそんな簡単なことすら分からないのかしら? ああ、だから妹の婿にして商会に閉じ込めておこうということですね?」
「ああ、その方が俺も安心だ。むしろそのまま放置したら領主様に怒られる。この村の秘密は知らなくても、お貴族様のヤベエ情報をペラペラ喋る奴なんか放置しておけないだろう?」
「ええ、そうですわね。それに妹もそろそろ婿をとりたいと言ってましたし……。ライアスならば面食いの妹の好みでしょうね。ようございました、これでやっと商会に跡継ぎが望めますわ。妹は少々性格に難がありますが、鈍感なライアスならば大丈夫でしょう」
村長の妻の妹、商会の跡継ぎ娘は華のある才女だが、その性格は極めて苛烈である。
「あの子は妥協というものを知りませんからね……。いくら見た目が好みの男性相手でも、自分がちょっと気に入らない部分があるとそれを徹底的に矯正させようとするんですの。そのせいで精神が病んでしまった見合い相手もおりましたわ……。それに独占欲が強くて、夫となる人を閉じ込めたいなんて言うものだから中々結婚相手が見つからなかったんですのよ」
「ああ、だがライアスなら大丈夫だろう。あいつは人の忠告なんて聞かないからな。義妹さんがいくら駄目出ししようが聞く耳すらもたないだろう。それに貴族のヤベエ情報を喋ろうとする奴は、閉じ込めておくくらいが丁度いいだろうよ」
「ええ、本当に。父もやっと婿がくると喜ぶでしょう。ところでアニーのことはどうしますか? 彼女はただ濡れ衣を着せられただけのようですが……」
「アニーは放置でいいだろう。何も知らないのだし、それに修道院で強制労働させられているらしいしな」
「ですが修道院で強制労働は通常数年で終わるでしょう? その後この村に戻ってきましたらどうするんですの? 不倫するような考えの足りない子ですもの、ライアス同様事件の真相を喋ってしまうのではなくて?」
「だとしても、もう誰もアニーの話なんて信じないだろうよ。濡れ衣であるとはいえ、不倫のうえに毒殺未遂、しかも刑にまで服した人間の言うことをまともに聞くのなんざ家族くらいじゃないか? その家族は領主様が囲っているから簡単には会えないだろうしな」
領主がアニーの家族を囲ったのことは結果的に正解だったな、と呟き村長は重い体を起こした。
「あら? もう起きて大丈夫なんですの?」
「ああ。まだ怠さはあるが一刻も早く領主様に報告に行きたいんだ。全て終わったことをな」
ここ数日は秘匿された情報が知られたかもしれないという不安で夜も眠れなかった。
それはきっと領主もそうだろう。
さっさと報告を終えてこの件から解放されたい。その一心で村長は重い体を無理矢理動かし、領主のもとへと急いだ。
村長は気怠そうな様子でそう話す。
「ええ。それにしてもそんな初歩的な罠に嵌まるとは……。意外にお馬鹿さんでしたのね。貴族が毒見をしていない食物を避けることは基本ですわよ」
「いや~……俺もあいつがここまで馬鹿だったとは思ってもいなかったわ。というか、びっくりするほど深く物事を考えないんだな……。俺はあいつに『軍から手紙が届いたからそれを確認してほしい』と嘘をついてここに連れてきたんだが、全くそのことに触れなかったな。飯食って葉巻吸って、話をしたら帰ってったわ……」
村長は毒薬のことを聞くためにライアスを家まで連れてきた。
嘘の手紙まで準備しておいたのだが、彼はそのことに全く触れなかったのだ。
「食べ物に仕込まれた毒に倒れたというのに、何の警戒もなく俺が出した料理を食ってたな……。肝が太いのか、何も考えてないのか……まあ後者だろうな。それに、それくらい鈍感な方が義妹の婿さんに向いているだろうよ」
「それですけど……どうしてライアスを妹の婿に推薦したのですか?」
「ん? あのままライアスを放置したらまた余計な諍いの種を運びそうだからな。お貴族様に嵌められて毒飲まされたー、なんて口外したらヤバイことを平気で喋りそうだったぞ、あいつ」
「まああ……なんて命知らずなのかしら? そんなこと口外すれば黒幕の貴族が暗殺者くらい寄こしてきそうですわ……。そうなれば自分の家族だって危険なのに……なんでそんな簡単なことすら分からないのかしら? ああ、だから妹の婿にして商会に閉じ込めておこうということですね?」
「ああ、その方が俺も安心だ。むしろそのまま放置したら領主様に怒られる。この村の秘密は知らなくても、お貴族様のヤベエ情報をペラペラ喋る奴なんか放置しておけないだろう?」
「ええ、そうですわね。それに妹もそろそろ婿をとりたいと言ってましたし……。ライアスならば面食いの妹の好みでしょうね。ようございました、これでやっと商会に跡継ぎが望めますわ。妹は少々性格に難がありますが、鈍感なライアスならば大丈夫でしょう」
村長の妻の妹、商会の跡継ぎ娘は華のある才女だが、その性格は極めて苛烈である。
「あの子は妥協というものを知りませんからね……。いくら見た目が好みの男性相手でも、自分がちょっと気に入らない部分があるとそれを徹底的に矯正させようとするんですの。そのせいで精神が病んでしまった見合い相手もおりましたわ……。それに独占欲が強くて、夫となる人を閉じ込めたいなんて言うものだから中々結婚相手が見つからなかったんですのよ」
「ああ、だがライアスなら大丈夫だろう。あいつは人の忠告なんて聞かないからな。義妹さんがいくら駄目出ししようが聞く耳すらもたないだろう。それに貴族のヤベエ情報を喋ろうとする奴は、閉じ込めておくくらいが丁度いいだろうよ」
「ええ、本当に。父もやっと婿がくると喜ぶでしょう。ところでアニーのことはどうしますか? 彼女はただ濡れ衣を着せられただけのようですが……」
「アニーは放置でいいだろう。何も知らないのだし、それに修道院で強制労働させられているらしいしな」
「ですが修道院で強制労働は通常数年で終わるでしょう? その後この村に戻ってきましたらどうするんですの? 不倫するような考えの足りない子ですもの、ライアス同様事件の真相を喋ってしまうのではなくて?」
「だとしても、もう誰もアニーの話なんて信じないだろうよ。濡れ衣であるとはいえ、不倫のうえに毒殺未遂、しかも刑にまで服した人間の言うことをまともに聞くのなんざ家族くらいじゃないか? その家族は領主様が囲っているから簡単には会えないだろうしな」
領主がアニーの家族を囲ったのことは結果的に正解だったな、と呟き村長は重い体を起こした。
「あら? もう起きて大丈夫なんですの?」
「ああ。まだ怠さはあるが一刻も早く領主様に報告に行きたいんだ。全て終わったことをな」
ここ数日は秘匿された情報が知られたかもしれないという不安で夜も眠れなかった。
それはきっと領主もそうだろう。
さっさと報告を終えてこの件から解放されたい。その一心で村長は重い体を無理矢理動かし、領主のもとへと急いだ。
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