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プロローグ
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ああ、お茶が不味い――。
茶園から取り寄せた初摘みの茶葉を、熟練の執事が淹れ、白磁のティーカップで頂く。
どう考えても不味いはずがない。
むしろ最高に美味なはずのそれを不味いと感じるのは、眼前に広がる光景が原因であろう。
「まあ、クリスったら!」
「はは、そんなに可笑しいかな?」
甘やかに微笑み合い、穏やかな談笑を楽しむ男女。
見目麗しい二人が仲睦まじく寄り添う姿は絵になる。
片方が私の婚約者でなければ……。
「ご馳走様でした。そろそろお暇させて頂きます」
婚約者以外の女性との会話に夢中になっている彼にそう告げ、席を立つ。
長居する気はない。する義理もないのだから。
「なんだレオナ、もう帰るのか? せっかくカサンドラが来ているというのに……」
そのカサンドラ様がいるから私は帰るんですけど?
そう言いたいが言えない。
何故なら彼女の身分が私より上だからだ。
しかも彼女は王太子殿下の婚約者。
王族に連なる存在になる彼女に不敬なことなど言えるわけがない。
たとえ彼女が“婚約者同士のお茶会に乱入”という、非常識で物凄く失礼なことをしていようとも。
「いえ、結構です。それでは失礼いたします」
とはいえ相手が不快にならないような物言いをしてやる義理もない。
冷たいが不敬にならない程度にこちらの帰る意思のみ告げる。
正直もう疲れたのだ。
茶会に招いておきながら、別の女性を優先させる婚約者にも。
婚約者同士の茶会に乱入してくるその女性、カサンドラ・スピナー公爵令嬢にも。
後ろからまだ何か言い募る婚約者を無視し、さっさと邸を出て馬車に乗る。
扉が閉まり、安堵した私は大きく息を吐いた。
茶園から取り寄せた初摘みの茶葉を、熟練の執事が淹れ、白磁のティーカップで頂く。
どう考えても不味いはずがない。
むしろ最高に美味なはずのそれを不味いと感じるのは、眼前に広がる光景が原因であろう。
「まあ、クリスったら!」
「はは、そんなに可笑しいかな?」
甘やかに微笑み合い、穏やかな談笑を楽しむ男女。
見目麗しい二人が仲睦まじく寄り添う姿は絵になる。
片方が私の婚約者でなければ……。
「ご馳走様でした。そろそろお暇させて頂きます」
婚約者以外の女性との会話に夢中になっている彼にそう告げ、席を立つ。
長居する気はない。する義理もないのだから。
「なんだレオナ、もう帰るのか? せっかくカサンドラが来ているというのに……」
そのカサンドラ様がいるから私は帰るんですけど?
そう言いたいが言えない。
何故なら彼女の身分が私より上だからだ。
しかも彼女は王太子殿下の婚約者。
王族に連なる存在になる彼女に不敬なことなど言えるわけがない。
たとえ彼女が“婚約者同士のお茶会に乱入”という、非常識で物凄く失礼なことをしていようとも。
「いえ、結構です。それでは失礼いたします」
とはいえ相手が不快にならないような物言いをしてやる義理もない。
冷たいが不敬にならない程度にこちらの帰る意思のみ告げる。
正直もう疲れたのだ。
茶会に招いておきながら、別の女性を優先させる婚約者にも。
婚約者同士の茶会に乱入してくるその女性、カサンドラ・スピナー公爵令嬢にも。
後ろからまだ何か言い募る婚約者を無視し、さっさと邸を出て馬車に乗る。
扉が閉まり、安堵した私は大きく息を吐いた。
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