初夜に訪れたのは夫ではなくお義母様でした

わらびもち

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夫の代わりに付き合ってもらいます

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「も、もう無理……。もう寝かせて、お願い……」

「何言っているんですか、お義母様? 夜はまだまだ長いですよ……。ほら、もう一回……」

「う、うう……もう無理……」

 ここに来た時の威勢はどこに行ったのやら。
 セシリアは力尽きてぐったりする義母をワインを飲みながら悠然と眺めていた。

「お義母様もワインのお代わり如何です?」

「もういらないわよ……。というか、貴女それ何本目よ……」

 二人の近くには数本ものワインの空瓶が置かれていた。
 義母の飲んだ量はおよそ瓶の半分ほど。残りは全てセシリアがたいらげていた。

「お義母様はお酒に弱いのですね? 私はいくら飲んでも酔えない体質なんですよねー」

 グイッとグラスをあおりワインを空にするセシリアに義母は化け物を見るような目を向けた。

に飽きたのなら、次はカードゲームでもしましょうか?」

「飽きたとかじゃないわよ、疲れたのよ。だいたいチェスだって貴女が完勝で面白くなかったわよ……。なんなのその強さは……」

 寝所に連れ込まれた義母はセシリアによって無理やり
 初夜の軽食として用意されたワインを片手に悠々と勝ち星をあげていくセシリアに義母は既に満身創痍だ。

「そもそもどうして寝所にワインがそう何本もあるのよ!? こういうのって普通は一本だけ用意されているものじゃないの?」

「あ、二本目からは私が持参したものを開けています。いや~、持ってきて正解ですね」

「なんで花嫁がワインを何本も嫁入り道具のように持ち込んでいるのよ? というか……貴女、自分の夫が何処に行ったとか、何故初夜を放棄したのかとか気にならないの?」

「別に? 理由はどうあれ、夫は初夜に何も言わず花嫁を放置する糞野郎だと分かったので、何処に行ったかなんて気になりません」

「ちょ……ちょっと、お口が悪いわよ? 淑女がそんなことを口にしては駄目よ!」

「あら、そうですね、申し訳ございません。では、嫁いだ妻に対して砂粒ほどの配慮も気遣いも出来ないゴミ屑野郎ですね。よりにもよって新婚初夜に勝手に外出し、しかもそれを本人に伝えることすらせず、妻の時間を無駄にさせた挙句に尊厳まで貶める人の心が無い、虫にも劣るゴミです」

「もっと酷くなっているわよ!? そこまで言う?」

「そこまでのことでしょう。何が気に入らないか知りませんけど、新婚初夜に花嫁を放置して外出する夫なんて聞いたことありませんよ」

 感情を乗せず淡々と辛辣な台詞を言い募るセシリアに義母は唖然とした。
 その様子は怒っているのか、呆れているのか、それとも両方なのかが見ても分からない。

「実際、こうしてお義母様が報せてくれなかったら私は一晩中来ない夫を待ち続けるところでしたよ? 何の罪も無い私をそんな惨めな目に遭わせるなんて、この世に存在してはならないほどの人でなしではありませんか。そんな人の心を母親のお腹に忘れてきたような屑男が何処で何をしようが知ったことではありません」

 あ、これは怒っているなと義母は無言で頷いた。

「肯定して頂けたようなので今度はカードゲームに興じますか?」

「肯定したわけじゃないわよ! だいたい、わたくしは夫に放置された哀れな嫁を嗤ってやろうとしただけなのに……なんでチェス遊びに付き合わされているのよ!?」

「いやですわ、お義母様。義理とはいえ息子の不手際を詫びるのは母親の役目ではありませんか? ならば代わりにお義母様が私の気が済むまで遊びに付き合うのは当然です」

「何処の国の常識なのよ、それ!?」

 とんでもない女が嫁いできた、と驚愕する義母をよそにセシリアはチェス盤を片付けてカードの用意を始めた。

「ちょっと! どうしてカードの用意を始めているのよ!? 疲れたって言ったでしょう!」

「まだお若いのに疲れるのが早いですよ。私は遊び足りません、まだまだ付き合ってもらいますよ……」

 満面の笑みを浮かべるセシリアに義母は顔を引きつらせた。
 背中からは嫌な汗がじわりと垂れ、自然と体が震えだす。

「もう無理……! お願いだから寝かせて……!」

「うふふ、嫌です。さあ、まずはポーカーから始めましょうか……」

 慣れた手つきでカードを配りだしたセシリアに義母は言葉も出ない。
 この部屋から出ようとしても彼女に阻まれ、逃げ出すことも叶わない。

 結局、義母が解放されたのは窓の外が明るくなる頃だった……。
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