2 / 165
夫の代わりに付き合ってもらいます
しおりを挟む
「も、もう無理……。もう寝かせて、お願い……」
「何言っているんですか、お義母様? 夜はまだまだ長いですよ……。ほら、もう一回……」
「う、うう……もう無理……」
ここに来た時の威勢はどこに行ったのやら。
セシリアは力尽きてぐったりする義母をワインを飲みながら悠然と眺めていた。
「お義母様もワインのお代わり如何です?」
「もういらないわよ……。というか、貴女それ何本目よ……」
二人の近くには数本ものワインの空瓶が置かれていた。
義母の飲んだ量はおよそ瓶の半分ほど。残りは全てセシリアがたいらげていた。
「お義母様はお酒に弱いのですね? 私はいくら飲んでも酔えない体質なんですよねー」
グイッとグラスをあおりワインを空にするセシリアに義母は化け物を見るような目を向けた。
「チェスに飽きたのなら、次はカードゲームでもしましょうか?」
「飽きたとかじゃないわよ、疲れたのよ。だいたいチェスだって貴女が完勝で面白くなかったわよ……。なんなのその強さは……」
寝所に連れ込まれた義母はセシリアによって無理やりチェスの相手をさせられていた。
初夜の軽食として用意されたワインを片手に悠々と勝ち星をあげていくセシリアに義母は既に満身創痍だ。
「そもそもどうして寝所にワインがそう何本もあるのよ!? こういうのって普通は一本だけ用意されているものじゃないの?」
「あ、二本目からは私が持参したものを開けています。いや~、持ってきて正解ですね」
「なんで花嫁がワインを何本も嫁入り道具のように持ち込んでいるのよ? というか……貴女、自分の夫が何処に行ったとか、何故初夜を放棄したのかとか気にならないの?」
「別に? 理由はどうあれ、夫は初夜に何も言わず花嫁を放置する糞野郎だと分かったので、何処に行ったかなんて気になりません」
「ちょ……ちょっと、お口が悪いわよ? 淑女がそんなことを口にしては駄目よ!」
「あら、そうですね、申し訳ございません。では、嫁いだ妻に対して砂粒ほどの配慮も気遣いも出来ないゴミ屑野郎ですね。よりにもよって新婚初夜に勝手に外出し、しかもそれを本人に伝えることすらせず、妻の時間を無駄にさせた挙句に尊厳まで貶める人の心が無い、虫にも劣るゴミです」
「もっと酷くなっているわよ!? そこまで言う?」
「そこまでのことでしょう。何が気に入らないか知りませんけど、新婚初夜に花嫁を放置して外出する夫なんて聞いたことありませんよ」
感情を乗せず淡々と辛辣な台詞を言い募るセシリアに義母は唖然とした。
その様子は怒っているのか、呆れているのか、それとも両方なのかが見ても分からない。
「実際、こうしてお義母様が報せてくれなかったら私は一晩中来ない夫を待ち続けるところでしたよ? 何の罪も無い私をそんな惨めな目に遭わせるなんて、この世に存在してはならないほどの人でなしではありませんか。そんな人の心を母親のお腹に忘れてきたような屑男が何処で何をしようが知ったことではありません」
あ、これは怒っているなと義母は無言で頷いた。
「肯定して頂けたようなので今度はカードゲームに興じますか?」
「肯定したわけじゃないわよ! だいたい、わたくしは夫に放置された哀れな嫁を嗤ってやろうとしただけなのに……なんでチェス遊びに付き合わされているのよ!?」
「いやですわ、お義母様。義理とはいえ息子の不手際を詫びるのは母親の役目ではありませんか? ならば代わりにお義母様が私の気が済むまで遊びに付き合うのは当然です」
「何処の国の常識なのよ、それ!?」
とんでもない女が嫁いできた、と驚愕する義母をよそにセシリアはチェス盤を片付けてカードの用意を始めた。
「ちょっと! どうしてカードの用意を始めているのよ!? 疲れたって言ったでしょう!」
「まだお若いのに疲れるのが早いですよ。私は遊び足りません、まだまだ付き合ってもらいますよ……」
満面の笑みを浮かべるセシリアに義母は顔を引きつらせた。
背中からは嫌な汗がじわりと垂れ、自然と体が震えだす。
「もう無理……! お願いだから寝かせて……!」
「うふふ、嫌です。さあ、まずはポーカーから始めましょうか……」
慣れた手つきでカードを配りだしたセシリアに義母は言葉も出ない。
この部屋から出ようとしても彼女に阻まれ、逃げ出すことも叶わない。
結局、義母が解放されたのは窓の外が明るくなる頃だった……。
「何言っているんですか、お義母様? 夜はまだまだ長いですよ……。ほら、もう一回……」
「う、うう……もう無理……」
ここに来た時の威勢はどこに行ったのやら。
セシリアは力尽きてぐったりする義母をワインを飲みながら悠然と眺めていた。
「お義母様もワインのお代わり如何です?」
「もういらないわよ……。というか、貴女それ何本目よ……」
二人の近くには数本ものワインの空瓶が置かれていた。
義母の飲んだ量はおよそ瓶の半分ほど。残りは全てセシリアがたいらげていた。
「お義母様はお酒に弱いのですね? 私はいくら飲んでも酔えない体質なんですよねー」
グイッとグラスをあおりワインを空にするセシリアに義母は化け物を見るような目を向けた。
「チェスに飽きたのなら、次はカードゲームでもしましょうか?」
「飽きたとかじゃないわよ、疲れたのよ。だいたいチェスだって貴女が完勝で面白くなかったわよ……。なんなのその強さは……」
寝所に連れ込まれた義母はセシリアによって無理やりチェスの相手をさせられていた。
初夜の軽食として用意されたワインを片手に悠々と勝ち星をあげていくセシリアに義母は既に満身創痍だ。
「そもそもどうして寝所にワインがそう何本もあるのよ!? こういうのって普通は一本だけ用意されているものじゃないの?」
「あ、二本目からは私が持参したものを開けています。いや~、持ってきて正解ですね」
「なんで花嫁がワインを何本も嫁入り道具のように持ち込んでいるのよ? というか……貴女、自分の夫が何処に行ったとか、何故初夜を放棄したのかとか気にならないの?」
「別に? 理由はどうあれ、夫は初夜に何も言わず花嫁を放置する糞野郎だと分かったので、何処に行ったかなんて気になりません」
「ちょ……ちょっと、お口が悪いわよ? 淑女がそんなことを口にしては駄目よ!」
「あら、そうですね、申し訳ございません。では、嫁いだ妻に対して砂粒ほどの配慮も気遣いも出来ないゴミ屑野郎ですね。よりにもよって新婚初夜に勝手に外出し、しかもそれを本人に伝えることすらせず、妻の時間を無駄にさせた挙句に尊厳まで貶める人の心が無い、虫にも劣るゴミです」
「もっと酷くなっているわよ!? そこまで言う?」
「そこまでのことでしょう。何が気に入らないか知りませんけど、新婚初夜に花嫁を放置して外出する夫なんて聞いたことありませんよ」
感情を乗せず淡々と辛辣な台詞を言い募るセシリアに義母は唖然とした。
その様子は怒っているのか、呆れているのか、それとも両方なのかが見ても分からない。
「実際、こうしてお義母様が報せてくれなかったら私は一晩中来ない夫を待ち続けるところでしたよ? 何の罪も無い私をそんな惨めな目に遭わせるなんて、この世に存在してはならないほどの人でなしではありませんか。そんな人の心を母親のお腹に忘れてきたような屑男が何処で何をしようが知ったことではありません」
あ、これは怒っているなと義母は無言で頷いた。
「肯定して頂けたようなので今度はカードゲームに興じますか?」
「肯定したわけじゃないわよ! だいたい、わたくしは夫に放置された哀れな嫁を嗤ってやろうとしただけなのに……なんでチェス遊びに付き合わされているのよ!?」
「いやですわ、お義母様。義理とはいえ息子の不手際を詫びるのは母親の役目ではありませんか? ならば代わりにお義母様が私の気が済むまで遊びに付き合うのは当然です」
「何処の国の常識なのよ、それ!?」
とんでもない女が嫁いできた、と驚愕する義母をよそにセシリアはチェス盤を片付けてカードの用意を始めた。
「ちょっと! どうしてカードの用意を始めているのよ!? 疲れたって言ったでしょう!」
「まだお若いのに疲れるのが早いですよ。私は遊び足りません、まだまだ付き合ってもらいますよ……」
満面の笑みを浮かべるセシリアに義母は顔を引きつらせた。
背中からは嫌な汗がじわりと垂れ、自然と体が震えだす。
「もう無理……! お願いだから寝かせて……!」
「うふふ、嫌です。さあ、まずはポーカーから始めましょうか……」
慣れた手つきでカードを配りだしたセシリアに義母は言葉も出ない。
この部屋から出ようとしても彼女に阻まれ、逃げ出すことも叶わない。
結局、義母が解放されたのは窓の外が明るくなる頃だった……。
2,994
あなたにおすすめの小説
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
無自覚人たらしマシュマロ令嬢、王宮で崇拝される ――見た目はぽっちゃり、中身は只者じゃない !
恋せよ恋
ファンタジー
富豪にして美食家、オラニエ侯爵家の長女ステファニー。
もっちり体型から「マシュマロ令嬢」と陰口を叩かれる彼女だが、
本人は今日もご機嫌に美味しいものを食べている。
――ただし、この令嬢、人のオーラが色で見える。
その力をひけらかすこともなく、ただ「気になるから」と忠告した結果、
不正商会が摘発され、運気が上がり、気づけば周囲には信奉者が増えていく。
十五歳で王妃に乞われ、王宮へ『なんでも顧問』として迎えられたステファニー。
美食を愛し、人を疑わず、誰にでも礼を尽くすその姿勢は、
いつの間にか貴族たちの心を掴み、王子たちまで惹きつけていく。
これは、
見た目はぽっちゃり、されど中身は只者ではないマシュマロ令嬢が、
無自覚のまま王宮を掌握していく、もっちり系・人たらし王宮譚。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 エール📣いいね❤️励みになります!
ローザリンデの第二の人生
梨丸
恋愛
伯爵令嬢、ローザリンデの夫はいつも彼女より仕事を優先させ、彼女を無碍にしている。
彼には今はもういない想い人がいた。
私と結婚したことにいい思いをしていないことは知っていた。
けれど、私の命が懸かっていた時でさえも、彼の精神は変わらなかった。
あなたが愛してくれないのなら、私は勝手に幸せになります。
吹っ切れたローザリンデは自分自身の幸せのために動くことにした。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
1/10 HOTランキング1位、小説、恋愛3位ありがとうございます。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃
ぜらちん黒糖
恋愛
「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」
甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。
旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。
「それは本当に私の子供なのか?」
学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜
織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。
侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。
学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる