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お義母様のせいにしないでください
「はあ……そうですか。どうも私にはキャサリン様がエリオット様にまだ未練があるように思えてならないのですが……そもそもどうして婚約を破棄されたので?」
「それは……」
ちら、とエリオットが横目で公爵を見る。つられてセシリアもそちらを向くと、公爵は今にも噴火しそうなほど怒りに満ち溢れた表情をしていた。
「……とことんふざけた小娘だな。そもそも婚約を破棄したのはその女だと忘れたか? 結婚式の準備も進んでいたというのに、いきなりくだらん理由で結婚出来ぬとぬかしおったのは小娘の方だろうが!!」
食堂全体に響き渡る声で怒鳴る公爵。その威力にエリオットや使用人は悲鳴をあげて怯むが、セシリアだけは少しも動じなかった。
「公爵様、婚約破棄をした“理由”とは?」
「……ああ、怒鳴ってすまなかったセシリア嬢。理由はイザベラ殿の存在だ。小娘は若い後妻のいる家に嫁ぎたくないとぬかしおった……」
「まあ、お義母様の存在を厭うたのですか? あんな素敵なお義母様を……」
結婚相手のエリオットは存在そのものが気に入らないほど嫌いになったが、義母のイザベラのことはかなり好きになった。意地悪な姑を装ってはいるものの、根はかなりの善良でお人好しだと分かる。
(ツンツンしているけど、それがまた可愛いのよね……)
あんな可愛い人に敵意を示すなんて……とセシリアはこの時点でエリオットの元婚約者に怒りを覚えた。自分の夫を結婚式の日に呼び出したこと以上に腹が立つ。
「おお、セシリア嬢はもうイザベラ殿と親しくなったのか」
「はい。お義母様は来ない夫を待つ惨めな私に優しくしてくださいましたから」
セシリアと公爵の間にほのぼのとした空気が流れ始めたその時、急にエリオットが反論しだした。
「待ってくれ、君はどうして義母上とそんなに親しくなっているんだ? こう言っては何だが義母上は私の婚約を潰したも同然なんだぞ!」
エリオットの反論にセシリアは思いっきり小馬鹿にしたような顔で煽った。
「あら、若い後妻がいる程度で破談にするような薄っぺらい婚約などいずれは潰れる運命だったのですよ。お義母様のせいにしないでくださいませ。もう一度言いますが、お義母様は惨めに貴方を待ち続けていた私に優しくしてくださったのですよ? そんなお優しいお義母様に感謝するどころか文句を言うなんて言語道断です!」
何度も”放置”されたことを強調し、相手の罪悪感を煽るが、この男はいまいち自分が悪いことをしたという自覚が無いように思える。とりあえず謝っておけ、という雰囲気が感じられて余計に腹立たしい。
「そ、それについては本当に悪いと思っている……! だが、義母上さえいなければ婚約は破談にならなかったのも事実だ!」
「ハンッ! それはどうでしょうね? 嫁ぎ先の舅に若い後妻がいるなど貴族にとってはありがちなこと。その程度で婚約を取りやめるようなか弱い心の持ち主では、たとえお義母様の存在がなくともいずれは破談になっていたことでしょうよ!」
セシリアの正論にエリオットは二の句が継げなかった。
強い意志の宿った目、隙の無い凛とした態度に圧倒されて言葉が出ない。
「ははっ、セシリア嬢の言う通りだ! 貴様の元婚約者は貴族家に嫁ぐ心得というものを分かっておらぬ。若い後妻がいる家に嫁ぎたくないとほざくのであれば最初から婚約をしなければよかっただけのこと。貴様の元婚約者はイザベラ殿がいると分かって婚約をしておきながら、土壇場で無理だと喚く不心得者だったというだけの話だ」
嫁に圧倒される甥を見て愉快そうに笑う公爵。
彼はセシリアのこういった強い気性を好んでいた。
「で、でも……義母上がこの邸から出て行ってくれていたなら、キャサリンとの婚約は破談にならなかったはずなのは確かだし……」
「お前はそれをまだ言うのか? 既に終わったことをいつまでもグチグチと……女々しい奴だ」
そして甥の優柔不断で煮え切らない気性にひどく失望していた。
「それは……」
ちら、とエリオットが横目で公爵を見る。つられてセシリアもそちらを向くと、公爵は今にも噴火しそうなほど怒りに満ち溢れた表情をしていた。
「……とことんふざけた小娘だな。そもそも婚約を破棄したのはその女だと忘れたか? 結婚式の準備も進んでいたというのに、いきなりくだらん理由で結婚出来ぬとぬかしおったのは小娘の方だろうが!!」
食堂全体に響き渡る声で怒鳴る公爵。その威力にエリオットや使用人は悲鳴をあげて怯むが、セシリアだけは少しも動じなかった。
「公爵様、婚約破棄をした“理由”とは?」
「……ああ、怒鳴ってすまなかったセシリア嬢。理由はイザベラ殿の存在だ。小娘は若い後妻のいる家に嫁ぎたくないとぬかしおった……」
「まあ、お義母様の存在を厭うたのですか? あんな素敵なお義母様を……」
結婚相手のエリオットは存在そのものが気に入らないほど嫌いになったが、義母のイザベラのことはかなり好きになった。意地悪な姑を装ってはいるものの、根はかなりの善良でお人好しだと分かる。
(ツンツンしているけど、それがまた可愛いのよね……)
あんな可愛い人に敵意を示すなんて……とセシリアはこの時点でエリオットの元婚約者に怒りを覚えた。自分の夫を結婚式の日に呼び出したこと以上に腹が立つ。
「おお、セシリア嬢はもうイザベラ殿と親しくなったのか」
「はい。お義母様は来ない夫を待つ惨めな私に優しくしてくださいましたから」
セシリアと公爵の間にほのぼのとした空気が流れ始めたその時、急にエリオットが反論しだした。
「待ってくれ、君はどうして義母上とそんなに親しくなっているんだ? こう言っては何だが義母上は私の婚約を潰したも同然なんだぞ!」
エリオットの反論にセシリアは思いっきり小馬鹿にしたような顔で煽った。
「あら、若い後妻がいる程度で破談にするような薄っぺらい婚約などいずれは潰れる運命だったのですよ。お義母様のせいにしないでくださいませ。もう一度言いますが、お義母様は惨めに貴方を待ち続けていた私に優しくしてくださったのですよ? そんなお優しいお義母様に感謝するどころか文句を言うなんて言語道断です!」
何度も”放置”されたことを強調し、相手の罪悪感を煽るが、この男はいまいち自分が悪いことをしたという自覚が無いように思える。とりあえず謝っておけ、という雰囲気が感じられて余計に腹立たしい。
「そ、それについては本当に悪いと思っている……! だが、義母上さえいなければ婚約は破談にならなかったのも事実だ!」
「ハンッ! それはどうでしょうね? 嫁ぎ先の舅に若い後妻がいるなど貴族にとってはありがちなこと。その程度で婚約を取りやめるようなか弱い心の持ち主では、たとえお義母様の存在がなくともいずれは破談になっていたことでしょうよ!」
セシリアの正論にエリオットは二の句が継げなかった。
強い意志の宿った目、隙の無い凛とした態度に圧倒されて言葉が出ない。
「ははっ、セシリア嬢の言う通りだ! 貴様の元婚約者は貴族家に嫁ぐ心得というものを分かっておらぬ。若い後妻がいる家に嫁ぎたくないとほざくのであれば最初から婚約をしなければよかっただけのこと。貴様の元婚約者はイザベラ殿がいると分かって婚約をしておきながら、土壇場で無理だと喚く不心得者だったというだけの話だ」
嫁に圧倒される甥を見て愉快そうに笑う公爵。
彼はセシリアのこういった強い気性を好んでいた。
「で、でも……義母上がこの邸から出て行ってくれていたなら、キャサリンとの婚約は破談にならなかったはずなのは確かだし……」
「お前はそれをまだ言うのか? 既に終わったことをいつまでもグチグチと……女々しい奴だ」
そして甥の優柔不断で煮え切らない気性にひどく失望していた。
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