初夜に訪れたのは夫ではなくお義母様でした

わらびもち

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悪女のフリ

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「エリオット様とは会話が出来ないと判断しました」

 場所を移し、お茶が運ばれてくるとセシリアはすぐにそう告げた。

「ええ……何があったの?」

 セシリアは驚くイザベラに公爵とエリオットとの話し合いの内容を静かに語った。

「それじゃあ……公爵様はエリオットが王女様に目をつけられないために貴女との婚姻を取り決めたということ?」

「ええ。よほど王女を甥の嫁にしたくないのでしょうね」

「王女の為人を聞く限りだとそう思うのも無理はないけど……それじゃまるで魔除け扱いじゃないの。貴女には婚約するはずだった人がいたのに……それはあんまりよ」

 心に寄り添うようなイザベラの返答に、セシリアは思わず微笑んだ。

「ふふ、やはりお義母様は思いやりがあってお優しいです」

「急になによ!?」

「そう思ったから素直に口にしているだけです。初対面で何だか悪女ぶっていらしてましたけど、私には貴女が善人だと分かっておりましたよ」

「なっ……、ちが、それは……」

 真っ赤になって慌てる可愛らしいイザベラの姿に夫のせいで荒んだ心が癒されていく。
 自然と頬が緩んでしまった。

「なによ、その目!? そんな目で見ないでちょうだい!」

「ふふ、照れずともよろしいのですよ。ところで、どうして悪女のフリなんてしていたのですか?」

「なによ“フリ”って! そんなことしていないわよ!」

「違うのですか? なら、どうしてあんな口調と態度を? まるで何かの演技を見ているかのようにわざとらしかったですよ?」

 セシリアがイザベラと初めて顔を合わせたのは結婚式の直前、そして言葉を交わしたのはあの夜が初めてだった。あの口調はイザベラの妖艶な見た目とよく合ってはいたのだが、言葉を交わしているうちに「あ、これ無理してる」と気づいたのだ。

「……………………」

 それを指摘されたイザベラは顔を真っ赤にして目を逸らす。
 何も言わずとも反応だけで肯定しているも同然だった。

「……あのような態度をとってしまったことについては、本当に申し訳なく思っているわ。自棄になっていたとはいえ、何も知らない貴女にすることじゃなかったわね……」

「いえ、お可愛らしかったので別にそれは気にしていませんよ? それより“自棄”とは……何かあったのですか?」

可愛らしい、と言われて一瞬戸惑い眉根をわずかに寄せたイザベラだったが、すぐに気を取り直して話を続けた。

「わたくしはね、この邸の厄介者なのよ。夫亡き後も居座る厚かましい女、それが彼らの目に映るわたくしの姿。……ずっとそんな扱いだったから、心が荒んでしまったのよ」

 悲しそうに目を伏せるイザベラを見てセシリアは邸の奴等に殺意が湧いた。
 どんな理由があるのかなど関係ない。イザベラを悲しませるなど許してはおけぬと。

「……分かりました、お義母様。邸の人間はエリオット様も含めて残らず痛めつけておきます。お義母様が痛めた心の分まで……」

「まって? どうしてそんな乱暴な考え方になるの……!?」

 暴力的な発想をさらりと言ってのけるセシリアにイザベラは声を荒げて驚くのだった。
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