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わらびもち

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婚約の経緯

 ブリジット・マーリン公爵令嬢は15の年で王太子レイモンドの婚約者に選ばれた。

 本人も、当主である父親でさえも望まぬ婚約であったが、他に成り手がいなかったため仕方なく受け入れた。
 これも貴族の義務として。

 この国では王太子の婚約者になれる令嬢は侯爵家以上と法で定められている。
 遥か昔に身分の低い女性を王妃に据えようとして国が傾きかけたことからこのような法律が定められたのだ。
 これを破れば厳罰に処され、二度と表舞台には立てない。

 王太子レイモンドと年齢の近い令嬢はブリジット以外にもいた。
 ケンリッジ公爵令嬢のビクトリアがそうである。

 当初、王太子の婚約者はビクトリアだった。
 彼女は王太子と同じ年齢で、幼少の頃より仲睦まじく、というよりも王太子の方が美しく華やかな彼女に夢中だった。

 二人共18歳になり、そろそろ婚姻……というところでいきなり婚約が解消される。

 帝国より『皇太子の婚約者に貴国の公女を』と要請が入ったためである。

 あちらは公女、つまりは未婚の公爵令嬢を婚約者に望んだだけで、別にビクトリアを指名したわけではない。
 だが野心の強いケンリッジ公爵が『小国の王妃よりも帝国の皇后に』と欲を出し、王太子と婚約関係にあった娘を差し出した。もちろん帝国入り前に婚約を解消させて。

 普通であれば王族との婚約を簡単に解消なんて出来るわけない。
 だが王家はケンリッジ公爵家から多額の資金援助を受けており、交渉の際にそれをちらつかされては受けるしかなかった。貧乏な王家は婚約者の家から資金援助を受けねば生活を保てないからだ。

 そんなビクトリアの後釜に選ばれたのが同格の公爵家の令嬢であるブリジット。
 他の公爵家や侯爵家には妙齢の女性がいないため、嫌でもこの婚約を受けるしかなかった。

 そういう経緯で結ばれた婚約。
 ブリジットは好きでもない王太子の妻になり、やりたくもない王妃教育を受け、払いたくない多額の持参金を王家に納めるという罰ゲームのような婚約に絶望した。

 それでもやるしかない、と前を向いて努力したにも関わらず王太子は顔を会わせるたびにブリジットを前の婚約者ビクトリアと比べ罵倒し続けた。

『ビクトリアならそんなことは言わない』
 
『ビクトリアならそんなことしない』

 ブリジットの言葉一つ行動一つに対し、元婚約者のビクトリアと比較し貶す。

 優しい言葉などかけられたことはなく、言動を認められたこともない。


 ―――どうして望まない婚約でここまで虐げられなきゃいけないの?

 
 我慢を重ね続け、心労を溜めこみ、ある日とうとうブリジットは爆発した。

 もうやってられない、と。

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