やりなおしジュリアーナ姫の復讐劇

わらびもち

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魔法と対価

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「あれは冗談などではなく、真実でございます。このマーサの祖先は異国で魔女狩りから逃げ延びた本物の魔女。それが証拠に私も魔法なるものが一つだけ使えるのです」

「マーサの祖先が魔女で、マーサも魔法が使える……? あ、じゃあ……もしかしてここから逃げる為の魔法があるってこと!?」

 信じられないような話だがマーサが言ったことならばどんな不思議なことでもジュリアーナにとってそれは信用に値する。本当に魔法が存在するのであればこの危機的状況から脱出することも可能だと希望に目を輝かせた。

 しかし、それと同時にどうして今までそれを使おうとしなかったのだろうかと疑問が湧く。そしてどうしてこのタイミングで使おうと思ったのか……と嫌な予感がした。

「ええ、そうです。とはいってもここから脱出するようなものではなく、私が使える魔法はというもののみ。これを使い姫様過去へとお戻しいたします。あの男と会う以前の時間軸まで……」

「わたくし……? 待って、マーサも一緒よね? 一緒に過去へ戻れるのよね?」

「……………………」

 まるでマーサは戻れないような言い方にジュリアーナは不安を覚えた。
 黙り込むマーサにますます不安が募る。

「まさか……その魔法って、何か対価や制限があるの? ほら、お伽噺に出てくる魔女の魔法ってそうじゃない? それをマーサ自身が支払うつもりじゃないわよね……?」
 
 人魚が足を望んだ対価に己の声を差し出したように、舞踏会に行くためのドレスが12時の鐘の音と共に消えてしまうように。マーサの魔法も対価か制限が必要になるのだろうか。

 否定してほしくて尋ねるも、マーサは頷いて肯定の意を示した。

「お察しがよいですね……。その通りにございます。この魔法は、しかも自分以外の人間を対象として過去へ飛ばすことしか出来ません」

「自分以外って……じゃあ、マーサは過去に戻れないの? そうなるとマーサはどうなるの?」

「……この魔法はを対価に発動されるもの。ですので、私は戻れません」

 嫌な予感が的中し、ジュリアーナは顔をバッとあげてマーサへと詰め寄った。

「そんなの嫌よ! マーサがいないなんてわたくし耐えられないわ!! だったらそんな魔法使わないで! きっと他に助かる方法はあるはずよ、だから駄目! 駄目よ……」

 生まれた時からずっと傍にいてくれた母親のような存在のマーサの命を対価に自分だけ助かるなど耐えられない。ジュリアーナはマーサに魔法を使わないよう訴えるも、きっぱりと拒否されてしまった。

「いいえ、ここに来てからずっと逃げ出す隙を狙っておりましたが見つかりませんでした。もうこれ以外方法が見つからないのです。このままこうしていても二人共あの男に殺されてしまう、ならば姫様だけでも生き延びてほしいのです」

「嫌! 嫌よ! 止めてマーサ! 貴女がいない人生なんてわたくし耐えられないわ!」

「どうか聞き分けてくださいませ。無礼かと存じますがマーサは姫様を我が子のように大切に想っておりました。 貴女様は優しく美しいマーサ自慢の立派な姫君です。貴女様が幸せになるためならこの命など惜しくありません。 ご安心ください、貴女様の記憶のみ保持したまま時戻りを行います。今度は決してあの男の求婚をお受けしてはいけませんよ? 貴女を大切にしてくれる立派な殿方と結婚し、幸せになってください。それがマーサの願いでございます……」

「マーサ、待って! 嫌だ! お願い、止めて!」

 ジュリアーナの制止を振り切りマーサは聞いた事の無い言語で何かを呟き始めた。
 するとジュリアーナの首にかけられたネックレスが禍々しい光を放ち、辺り一面を照らし出す。
 
「待って……お願い! 嫌! 嫌よ! マーサ……!」

 慌ててネックレスを外そうとするが呪いにでもかかったかのようにそれはジュリアーナの首から離れない。ならば、と無理やり引きちぎろうとしてもジュリアーナの手と首に擦り傷が出来るだけ。ネックレスはびくともしなかった。

「姫様、どうかお元気で……」 

 その刹那、光が空間を完全に包み込みジュリアーナの視界を奪う。
 マーサの変わらぬ優しい笑みを瞼の後ろに焼きつけて……。
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